今マッチングサイトのティンダーが、ロシア・ワールドカップの開催都市で盛り上がりを見せている。ジマー・マガジンは「まるでお祭りのよう」というクリスティーナさん(仮名)の言葉を引いている。「今私はイケメンのオーストリア人、2人のイケメンのアルゼンチン人、イケメンのメキシコ人と付き合っている。セックスとかいうことではなくて、ただ楽しくおしゃべりするために複数の男性と付き合っているの。」
だが多くの人が依然として一晩限りの男女関係を求めてデート・アプリを使っている。Gazeta.ruは30歳のコロンビア人フリアンさんの言葉を引いている。「ティンダーが何のためのものかは皆分かっている。もちろん、誰もセックスなしで仲良く時間を過ごすことに反対はしない。だが私が会った女性5人は全員セックスを目的にしていた。」
ネットワーク・プロバイダーのMTSによると、ティンダーのアクセス量は過去半年に比べて11倍に膨らんだ。愛(ないし性愛)のやり取りは今回のワールドカップでも飛び交っている。しかし、愛の盛り上がりを皆が歓迎しているわけではない。
ロシア議員とセックスと
ロシア下院家族女性児童問題委員会のタマーラ・プレトニョワ氏は、ワールドカップに先立ってニュースを騒がせた。彼女はロシアの女性に、外国人客と親密になる誘惑に抗うよう求めたのだ。「[男性と]出会って妊娠する女性がいるでしょうか。いるかもしれないし、いないかもしれない。いないことを望みますけどね」とラジオ番組「ゴヴォリート・モスクワ」で彼女は話した。
「私たちは自分たちの子供を産むべきです。私は国粋主義者ではありませんが、それでも言わせてください」とプレトニョワ氏は続ける。彼女はセックスの相手は同国民であるべきだと主張し、ロシアの女性とセックスをしたファンが相手の女性に父親のいない子供を残して帰国してしまう恐れがあると表明した。
「誰も首を突っ込めない」
とはいえ、性的なものであろうとなかろうと、個人的な人間関係に対して、承認したり異議を唱えたりする権利は政治家にはないと考える人もいる。「誰とのセックスを禁じようと、大した違いはない。隣人だろうと外国人だろうと、女性だろうと男性だろうと、ワールドカップの前だろうと期間中だろうと後だろうと。誰も首を突っ込むことはできない」とGazeta.ruのコラムニスト、エカテリーナ・トロボワ氏は記している。
ウラジーミル・プーチン政権のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は同様の見解を示し、ロシア政府は誰が誰と寝ようと気にしないと強調した。「ロシアの女性は、自分たちで判断できる。彼女らは世界でナンバーワンだからだ。」
たくさんの怒れる男たち
政治家が押しつけがましいのは仕方ないが、ロシアの女性と外国人との関係に関心を持つのは政治家だけではない。フ・コンタクチェ(ロシアで最も一般的なソーシャル・ネットワーク)には、情事で「ロシアの名誉を傷つけている」とレッテルを貼られた女性たちの写真や動画を投稿するグループが存在する。サイトの管理者は最も有名なグループにコメントをやめさせ、「他者を中傷する行いは禁じられている」と警告した。
女性たちに「尻軽女」という汚名を着せて中傷するのは一般のインターネットユーザーだけではない。モスコフスキー・コムソモーレツはロシア人作家プラトン・ベセディン氏のコラムを掲載したが、そこでは次のように述べられている。「ロシアが自身のステレオタイプを糾弾していることを誇りに思うが、ワールドカップ期間中も残存している一つのステレオタイプがある。それは、ロシアの女性は簡単に男の誘いに乗る、というものだ。」
「我々は外国語を聞くや否や進んで股をおっ広げるような娼婦世代を育ててしまった」とベセディン氏は続け、すべての責任は「西洋崇拝の母体」にあると断じている。彼のコラムは世間から激しい怒りを買った。
女性の反撃
開けっ広げに女性を批判する男性に対して女性が書いた批判記事も枚挙に暇がない。コスモポリタン・ロシアはベセディン氏の意見を反映した皮肉たっぷりのコラムを掲載した。「腹を立てたロシアの男性は、女性もまた、自身が望む人なら誰とでもセックスをしたいと思っているかもしれない一人の人間であることを理解できない。(…)男性は女性を人間として見ておらず、国内のメディアで国民の半数を侮辱するのが悪いことだとは少しも思っていないのだ。」
女性を「尻軽女」と罵る男性は、単に嫉妬しているだけなのだ、と考える人もいる。ロシアの多くの女性は現在、ロシア人よりも外国人を好んでいるようだからだ。ジマー・マガジンに引用されたマリーナさんという女性は、こう話している。「外国人とのほうが付き合いやすい。彼らのほうが社交的だから。おしゃべりや散歩、いちゃつくのが好きで、成り行き次第ではそれ以上のことも。ロシア人と[デートして]いると、私は自分が美人コンテストに出ているみたいに感じてしまう。」
「そうよ、外国人のほうがロシア人よりイケメン! しかも健康で清潔!」とアナスタシア・ミロノワさんはGazeta.ruで話し、ロシアの男性をすべて「発育不全」とまで評した。
モスクワ出身の企画部長ナタリア・ソボレフスカヤさんは、ツイッターで現状を的確にまとめている。「まったくもう、ロシアにもまともな男くらいいるって。当り前じゃない。すごいのだっているし! ロシア男はむかつくような連中じゃなくて、ちゃんとやってんだから。誰かを羨んだり貶めたりする必要ないでしょうに。」