ロシアの卒業生の不思議な伝統

アレクセイ・マルガヴコ/Sputnik
 皆さんは高校生活の終わりをどのように祝福しただろうか。きっと白樺の植樹やワルツとは無縁だっただろう。ロシアの生徒らにとっては、これらは当たり前のものだ。

 今年もこの時期がやって来た。最後の試験を控えていることがロシアの高校生らの心に重くのしかかっているが、彼らの「最後の鐘」と卒業式が、ソビエト以来の霊感に満ちたスペクタクルという形で彼らを癒してくれるだろう。

 

鐘に救われる

 「最後の鐘」と呼ばれるロシアの高校生にとって学校生活最後の日は、1950年代に遡る通過儀礼だ。辛い試験が待ち受ける中、この特殊な日の午後だけは、モスクワの第2035高校から今日卒業するこの20人の生徒たちも、しばらく自分たちだけの時間を過ごすことができる。

 この日がリラックスできるひと時かというとそれも違う。女の子たちが、卒業式というよりさながら春の大掃除の準備ができと言わんばかりの身なりで19世紀風のエプロンを身に付けているのを見ると、この準備に彼女らがどれほどの努力を費やしているのか驚かずにはいられない。

 一見やり過ぎの衣装は何のためなのか生徒に尋ねても、彼らは困った表情を浮かべるだけだ。「私たちがこうするのは、私たちと同じふうに卒業式を祝った両親や祖父母への敬意の証なのです」と生徒のクセニアさんは流暢な英語で答えてくれた。「私たちにとってはさほど重要ではありませんが、それでも1ヶ月間は放課後に居残りでダンスの練習をします。」

 どうやらこのダンスというのは、10代の若者のある種の恥さらしな集い(筆者の高校最後の出し物は保護者らの前で演じたモッシュピットで、彼らは「ボヘミアン・ラプソディ」に震え上がっていた)ではないようだ。生徒らが披露するのは、回転や舞いをよく練習した洗練されたワルツだ。皆を驚嘆させ、幸せにしてくれる踊りである。

 卒業式について驚くべきは、これがいかに伝統的で、そして子供たちがいかにこの式典に没入しているかということだ。当の本人たちはこれを10代の若者の曰く言い難い無関心として説明しようとするが、この式典が彼らにとって何か意味を持っていることは明らかだ。

 「私たちは新たな一歩を踏み出し、自分の一部とお別れするのです」と、1年生との共同の白樺植樹という儀礼的なバトンタッチの瞬間についてクセニアさんは解説する。もちろん、ロシアは白樺の木に奇妙な執着心を持ち、白樺からジュースや入浴時の角質除去用品などを作ってしまうような国だ。卒業式でもその執着を見せない理由はない。

 植樹の後には風船を上げるが、ニコライさんはそれを「僕らの夢を空へ放つ」と詩的に表現した。

 

嵐の前の静けさ

 もちろん、「最後の鐘」の煌びやかな少し古めかしい美学は、多分に教師らに主導されているという雰囲気がある。本当のお祭りはこれからだ、という生徒らの気持ちが伝わってくる。「最後の鐘」の後のお祝いは比較的控えめなもの(「散歩したり、街の中心部に出たり、そんな感じ」)だと言うが、生徒らは1ヶ月後の卒業パーティーのことは話したがらない。

 典型的な盛大な催しは、いくつもの華やかなパーティーを特徴とする。街の中心で開かれることもあれば、ナイトクラブで行われることもある。

 「私たちは試験の終わりをお祝いするために一緒にレストランへ行きます」とクセニアさんは言う。果たして親がパーティーに600ドル以上のお金を出してくれるのか尋ねられると、生徒たちの口は重くなる。「分かりません。まあ確かにちょっと高いですよね。」

 

その先に待つのは

 10代の若者に対する偏見とは裏腹に、我々が出会った生徒のほとんどは自身の成果や野心に照準を合わせ、大学生活に向けて大きな計画を持っているようだ。

 「物理を勉強するためにバウマン大学に入る予定です」とニコライさん。「僕は無線工学のエンジニアになりたいんです。人工衛星の部品とかを作りたい。」

 ニコライさんの友人のアザトさんは、自分の夢はモスクワ国立大学へ行って社会学を勉強することだと話してくれた。

 クセニアさんの志望校はモスクワ国立言語大学だ。「英語と中国語を勉強して通訳になりたいです。そこ[中国]には長い間住んでいて気に入りました。父が現地のロシア軍で働いていたのです。」

 生徒たちが自分の追求したい分野や大学だけでなく、それが将来どういう職につながるかをかなり正確に理解していることに、筆者は驚かされた。

 もちろん、これが全員に当てはまるわけではない。より漠然とした計画を持つ生徒もいる。

 「ITと英語の試験を受けたい」とアレックスさん。「でもこの2つの教科をどう結び付ければ良いか分かりません。どこかの大学には受かるでしょう。浪人はしたくないです。軍隊に入れられちゃいますから」と彼は冗談めかして言う。

 だがその前に、生徒らは驚くほど控えめな夏休みの計画の実行に移る。どれほどの時間とエネルギーが国家試験に奪われるかをよく理解している彼らは、マガルフやカンクンに相当するロシアのリゾート地に誘惑されたりはしていないようだ。

 「くつろぎたいです。どこにも行きたくない」とアレックスさん。

 一方クセニアさんも、今年の夏は「散歩程度に外出するくらい」で十分満足だという。

 試験を乗り切れば、きっと小さなことにでも喜びを感じられるのだろう。

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