1. 人々
文化が発展していて好みと趣味に敏感で、概してより洗練されている――ペテルブルク人に彼らとモスクワ人との違いを尋ねると、きっとこんな答えが返ってくるだろう。一方モスクワ人はきっと西の同胞のことを、空想に耽る“生粋のインテリゲンツィア”と呼び、勤勉さに欠け、したがって生産性も低いと非難するだろう。
これは現実に即していないかもしれないが、ロシア人の多くが共有する知識は、サンクトペテルブルクの住人のほうが概して紳士的で親切だということだ。モスクワ人は常にせっかちで他人のことに関心のない乱暴者だと形容される。
これについてモスクワの住人はいつも、忙しくてストレスに満ちているが、概して多事多端な彼らの生活の避け難い副作用にすぎないと一蹴する。
「両都市を訪れる人々の多くが指摘するように、サンクトペテルブルクの住人のほうが善意に満ちて文化的だが、モスクワ人のほうがビジネスでの抜け目なさで優っていて実務的である。」ヴィクトル・グベルニエフ氏は、両都市のライフスタイルを評してそう記している。
概してこれは永遠の論点だ。どちらか一方の肩を持つことは馬鹿げていると言えよう。
2. 街の雰囲気
モスクワとサンクトペテルブルクはデザインや都市計画も異なる。サンクトペテルブルクは直線的な街路と直角の交差点が特徴的だ。一方モスクワの街路は便利ではあるが無秩序とも言える円状の配置を特徴とする。モスクワでは、主要な幹線道路はクレムリンに通じているか、あるいはクレムリンを円状に囲んでいる。
円状の街の形状はモスクワの活力に貢献しており、何百万台という車が群れをなして進んだり、終わりのない渋滞に足止めを食ったりしている。サンクトペテルブルクはより穏やかな街に見えるが、とはいえ北の都にとっても渋滞は無縁の現象ではない。
「モスクワは命が激しく躍動する場所であり、素敵で魅力的だ。私たち[サンクトペテルブルクの住人]はサンクトペテルブルクの優雅さと落ち着きとを楽しむ。」インターネットユーザーのアンドリュー・ベルグさんは電子掲示板にこう書き込んでいる。
モスクワにはサンクトペテルブルクよりも決定的に多くの娯楽施設があり、モスクワ人にはパブから劇場、画廊まで、幅広い選択肢がある。
サンクトペテルブルクもまた創造性に満ちている。ここはロシアのラップ、ロシア・ブログ圏、ユーチューバーのゆりかごであり、この上なくロマンチックな魅力を秘めている。これは実用重視のモスクワと比べると衝撃的だ。
3. 気候
この点では無条件でモスクワに軍配が上がる。我々自身こんなことを言うのは信じられないが。
というのもモスクワの天候も酷い場合があるからだ。2017年の12月は、モスクワでは日照時間がたった6分しかなく、平年でも12月の日照時間は1日に1時間にすぎない。もし雪が降れば、一面真っ白のハルマゲドンを目の当たりにすることを覚悟しなければならない。
しかし、ロシアの首都の住民が日々直面するあらゆる気象的な困難にもかかわらず、サンクトペテルブルクの住人に思いを馳せると、彼らは自分たちが幸運だと感じる。一年を通して毎日24時間降水があり、冬は湿度が高いために寒さが厳しく、比較的穏やかな昼夜でさえ凍てつく寒さに感じられる。しかし、モスクワの工業地帯の煙とは異なり、サンクトペテルブルクの霧は街のロマンチックな雰囲気の演出に貢献している。
4. 言葉
正確に言えば、2つの異なる言葉だ。モスクワ人はペテルブルク人を容易に理解するだろう。結局は皆ロシア語を話しているのだから。しかし彼らは互いに、絶対的な確信を持って、敵意はないにせよはっきりと異なる流儀の言葉の代表者と出くわしたと認識するだろう。
モスクワ人はゆっくり話す(フェイクニュースだ)ことで非難されるが、主な論戦は特定のものに対する異なる単語の使用という点において顕在化する。最も顕著なのは、ペテルブルク人が縁石をポレブリクと呼ぶ一方、モスクワ人はそれをボルデュルと呼ぶ。シャウルマ(モスクワ)/シャヴェルマ(サンクトペテルブルク)(どちらもドネルケバブを指す)、ポドィエズド(モスクワ)/パラドナヤ(サンクトペテルブルク)(どちらも建物のポーチを指す)などが、二大都市の顕著な違いの有名な例だ。
5. 生活費
モスクワはサンクトペテルブルクよりも物価が高い街だ。モスクワには1200万〜1500万人が暮らし、その数は常に増えている。それに対し、サンクトペテルブルクには500万〜600万人しか住んでおらず、ここでは人口の増加率は安定していて、横ばいのこともある。結果的に、転入者が絶えないモスクワでは、賃貸料を含めて不動産がかなり割高だ。
サンクトペテルブルクの地下鉄の運賃は36ルーブルだが、モスクワのメトロは50ルーブルだ。概して、モスクワでは交通費が人々の収入の大部分を蝕む。
夜の娯楽や文化施設の訪問にかかる費用は大体同じだが、経験豊かな人であれば違いを指摘できる。「パブに関しては、サンクトペテルブルクのほうが概して値段は低いが、例外もある。不当に高いサンクトペテルブルクの店と、愉快なまでに安いモスクワの店だ。」ユーリー・クバンコフというインターネットユーザーはそう書いている。
6. ヨーロッパへのアクセス
ピョートル1世はサンクトペテルブルクをヨーロッパへの玄関口として計画した。ロシアをヨーロッパの列強の一員にしたかったからだ。これは功を奏し、今日でも多くのロシア人にとってこの街は“ヨーロッパへの窓”のままである。
サンクトペテルブルクからフィンランドの首都ヘルシンキまでは車で5時間ほどしかかからない。驚くべきことに、モスクワ州に住むモスクワ人の中には、毎日家から職場まで往復するのにこれくらいの時間がかかる人もいる。
サンクトペテルブルク港からは手頃な価格の海上クルージングが利用でき、フェリーは利用客たちをヘルシンキ、タリン、ストックホルムまで運んで行く。
モスクワの唯一の玄関口がシェレメチェヴォ空港だ。モスクワ人は電車や車でヨーロッパへ行くこともあるが、首都の領域から出るためには間違いなくもっと時間がかかる。
モスクワかサンクトペテルブルクかを選ぶことは難しい。長所と短所とを比較するなら、モスクワのメトロとサンクトペテルブルクの地下鉄との5つの相違点もチェックしておこう。