2013年2月15日、チェリャビンスク市(モスクワ東方2000キロ弱)。この日はいつも通りふつうに始まったが、間もなく街がひっくり返る騒ぎになった。
天空に閃光が走るや、大爆発を起こし、1000人以上が負傷し、無数のガラスが壊れた。しかし、ビジネスマインドのある住人の中には、思いがけず宇宙から飛来した物質をタネにさっそく儲けた人もいた。
「人々は、郊外に隕石が落下するや金儲けに走った。チェリャビンスク市長は、すべての壊れた窓を無料で新しいものに代えるよう命じた。自分の家の窓枠と窓ガラスがボロかった人は、すぐさま自分でそいつを壊して、すいません、隕石にやられました!と申し出た」。南ウラル国立歴史博物館のガイドは語った。
隕石探しに特別につくられた調査隊は、衝突した場所とその周りで、大小さまざまな大きさの隕石の破片を何百も見つけた。発見された最大の破片は、チェリャビンスク市の南ウラル国立歴史博物館に現在展示されている。
隕石は燃えて四散し、あちこちに穴をつくった。この特別大きな破片は売り物ではない。
でも、もっと小さな破片は、隕石落下から5年経った今でも“需要”がある。さまざまなサイズのこれらのかけらは、博物館で販売されているものだ。すべてのかけらに、その起源を示す証明書が付いている。
地元の空港や市内の雑貨屋でも隕石の破片を売っている。価格は、0.06グラムの小片の675ルーブル(約1300円)から、91グラムのかけらの82500ルーブル(約16万円)までと、かなり幅がある。
しかし、最も印象的な“商品”は闇で売られている。インターネットはチェリャビンスクの隕石のかけらを提供する広告でいっぱいだ。闇市場での価格は、小片の数千ルーブル(現在1ルーブルは約1.9円)から、3.4キログラムの210万ルーブル(約400万円)にまで達する。もちろん、ブラックマーケットの隕石の真贋は非常に怪しい。
チェリャビンスクに住むコンスタンチンさんは、10万ルーブル(約19万円)で、この石を隕石だという触れ込みで売りに出している。しかし彼も、売買契約の前には科学的な認証が必要だと認めている。
警察の調べが入ることを警戒し、石は近くの店に置いてある。記者カードを慎重に調べた後で、彼は石を持ってくる。
だが地元の人たちは、破片の販売をのぞけば、チェリャビンスク隕石の“商業化”にはほぼ失敗した。かつては有名になった「隕石スイーツ」は店頭から姿を消し、復活の見込みはあまりない。あの記念すべき日、宇宙から火の玉が飛来して、ウラルの街の空を照らし出し、地面に激突したのだった…。これに因んで命名されたクラフトビールやいろんなお土産があったものだが、それらも消えてしまった。