逃げるチェリャビンスク隕石

アレクサンドル・コンドラチュック撮影/ロシア通信

アレクサンドル・コンドラチュック撮影/ロシア通信

チェリャビンスク州のチェバルクーリ湖では、9月初めから、潜水夫たちが、チェリャビンスク隕石の親玉を「捕獲」しようとしているが、調査隊員らの話では、湖では摩訶不思議な現象が起きており、湖底からの隕石の運び上げが「理性のある腐泥」によって阻まれている、という。

 怪しい現象が見られるのは、チェバルクーリ湖の隕石が落下した辺りで、そこでは、ダイバーたちが、今も、火球の最も大きな断片を湖底から取り出そうとしているが、今のところ、なんとか探査用器具でそれを探りあて、隕石の小さな破片を見つけることができているにすぎない。

 

取材班が湖に到着 

 取材班が湖に到着した日は、冷たい雨がそぼ降り、体に沁みとおる風に追われて鉛色の密雲が空を流れていた。私たちは、潜水夫の身の安全を保障して昼夜分かたず湖畔で待機しているチェリャビンスクの救助隊員らとともに、モーター付きのゴムボートで湖岸から探査作業の現場へ向かった。

 10分足らずで到着すると、ボートは、真中に鮮やかな黄色のテントが張られた6×8メートルほどの広さのプラットフォームに繋留された。そこは、云わば「固定された」水上基地で、近くに、潜水用の装置をすべて備えたやや小さい移動式のプラットフォームがさらに二つ浮かんでおり、まさに、それらが、ダイバーたちのスタート台となっている。

 プラットフォームからは、チェバルクーリ湖とその周辺の絵のように美しいパノラマが一望できる。付近には、隕石が落下した際に設置された有名な320キログラムの赤と白のブイ(浮標)が見えるが、探査作業の妨げとならぬよう、それは、落下地点から70メートルほど脇へずらされている。

 

湖底の「井戸」

 私たちの目の前で、二人の潜水夫が、交互に潜っているが、作業班は全部で四人で、さらに指導員とその助手がいる。とはいえ、息づまるドラマの舞台は、文字通り水面下である。

 隕石の引き上げを請け負うエカテリンブルグの会社の技術責任者であるマクシム・シプーリンさんは、こう語る。

 「湖底では、特別の機材を用いて、云わば『井戸』が掘られています。最初は、直径6メートルほどかと思っていましたが、20メートルほどあるようなので、探査の範囲が広がりました。ダイバーたちは、14メートルの深さに達しましたが、視界がゼロに近いので、作業は手さぐりで行われています。ですから、潜水夫には、高度な専門技能とともに、すぐれた前庭器が求められます。すぐに方向を見失いかねませんので。先日、あるダイバーが、厚い泥の層に埋もれそうになりましたが、幸い、パニックに陥らずに事なきを得ました。つまり、リスクの要素が見え隠れしているわけで、深く潜れば潜るほど作業は難航するのです」。

 探査作業は、休日なしに朝から夕暮れまで行われており、食事の時間を除いてつねに誰かしら水中に潜っている。

 

「ウグイ」vs.「グリーンマン」 

 ダイバーたちの話では、水中探知器が湖底に沈んだ隕石に似た物体を探知したものの何の成果も得られなかった作業の当初は、心理的に辛かったが、潜水夫のアレクセイ・リャーホフさんが、1,5メートルの探査用器具で「大きな」隕石を探りあてたときには、俄然、ムードが明るくなり、9月24日、リャーホフさんは、ついに握り拳大の隕石の最初の破片を発見した。

 

神秘のヴェールに包まれて 

 マクシム・シプーリンさんは、こんなことも語ってくれた。「まるで『グリーンマン』たちが天体を地球人たちに渡したくないと思っているような印象を覚えます。14メートルの深さから『大きな』隕石を運び上げられると思っていましたが、どんどん深く沈んでいくようなので、おそらく16~20メートルの深さでの作業になるものとみています。『理性のある腐泥(水底の堆積物 ― 編集部註)』というフレーズまでお目見えしました。それから、五回もゴムボートに穴が開いたり、モーターが故障したり、メーターが振り切れたりしてしまうという不思議な現象も起きています。まさに奇奇怪怪なゾーンなのです」。

 チェバルクーリ湖畔に広がる調査隊のテント村を訪れると、「ウグイと野郎どもvs.隕石とグリーンマンたち」と書かれたプラカードが真っ先に目に飛び込んできた。

 ニコライ・ムルジーンさんは、こう説明する。「ある男が大物の魚を釣り上げて、にっこり笑って『ウグイだよ!』と歓声をあげる、そんなミームがあり、私たちは、それが気に入って、調査隊のシンボルにすることに…。あとはすべてお分かりですよね、野郎も、隕石も、グリーンマンも」。

 

秘密のゾーン 

 連日、ダイバーたちは、湖底から石の山を運び上げており、そこには、市井の隕石狩りの人たちが天体の小さな破片をそれを用いて探りだそうとしていた磁石や錨なども混じっている。

 一方、石を類別する作業員たちは、本職の地質学者よりも目が利くようになった。隕石の断片は、溶けた跡や特徴的な結晶によって識別できるという。9月26日に一度に三つの破片を運び上げたので、ダイバーたちは、いよいよ「大きな」隕石の跡に達したものと胸を高鳴らせている(今のところ、そのサイズは50×90センチメートルとみられている)。

 ユニークな発見物をフィルムに収めることは許可されなかったので、取材班は、潜水夫のマクシム・ゴルブノーフさんが湖底から運び上げた現時点で最も大きい4,8キログラムの隕石の破片を黙って目送した。隕石に関連した作業は、秘密裡に進められており、契約の条件に基づき、隕石に関する一切の情報は、作業の発注者しか公表できないという。