どの国でもそうだが、ロシアの結婚式は、実に多種多様だ。新郎新婦のなかには、遠い地方から、遠い親戚縁者を含め、ありとあらゆる知人を招待し、豪華な宴会を行う者もある。こういうケースでは、誰もが楽しく飲み、とことん歌い踊るのが普通だ。
これとは対照的に、最も近しい大切な人たちと、こじんまりと人生の重大事を過ごすカップルもある。また、教会で結婚式を挙げる人もいれば、世俗的なセレモニーを好む者もある。
しかし、ロシアのどの結婚式にも典型的なものが一つある。新郎と花嫁が結婚指輪を交換し、お互いの薬指にはめることだ。この伝統は、どの国でも共通しているが、どちらの手にはめるかは国によって異なる。なぜロシア人は右手を好むのだろうか?
結婚のしるしに指輪をはめる伝統は、古代世界に遡る。西暦46~120年に生きた、ギリシャの歴史家プルタルコスは、エジプト人は左手の4番目の指に結婚指輪をはめていたと書いている。古代の人々は、特別な静脈がこの指を心臓に直接結びつけていると信じていた。心臓はもちろん、愛と忠実を象徴する。
だとすると、古代のギリシア人とローマ人は、エジプトの隣人からその習慣を 「借用」したのかもしれない。しかし、どちらの手に?という問題は残る。
宝石デザイナーのケイト・ミラー・ウィルソンは、雑誌「LovetoKnow」に書いた記事のなかで、こう指摘している。「ローマ人は、右手に結婚指輪をはめた。左手は不吉で信頼できないと考えられたからだ」
とすると、正教会は、ローマ人の習慣を継承し、現代ロシアの祖先に与えたことになる。ロシアの源流、キエフ公国は、11~13世紀にキリスト教を導入し、布教している。だから、ある意味では、ロシア人は、ジュリアス・シーザーやキケロから、右手に結婚指輪をはめる習慣を受け継いだと言えようか。
とはいえ、「結婚指輪をはめるにはどちらの手が適しているか」という問題は、宗教の差異とは直接関係がない。より正確に言えば、手の選択は、宗教だけでなく、各国の習慣にも左右される。
例えば、カトリック教徒が国民の大部分を占めるポーランドでは、結婚した人は右手にリングをはめる。やはりギリシャ正教徒の多いギリシャでも同様だ。
西欧に関していえば、アメリカもそうだが、ほとんどの人は、より心臓に近いと考えられる左手を好む。2組の指輪(婚約用と結婚用)を持ち、別々の手にはめることもある。
しかし、一般的に言って、指輪をどの手にはめるより、それが象徴しているもの――すなわち結婚した男女の愛の永続性と明確さ――のほうが重要であることは言うまでもない。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。