男女格差を感じるロシア国民:公式統計で昨年の所得格差は27.4%

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 ロシア人は男女平等を支持している、という世論調査結果がある。だが現実はかなり違う。

 ボルガ川流域のサラトフ市の学校で10月、男女の家庭での役目を書くという課題が5年生に与えられた。ある女子は、料理、皿洗い、家の掃除、洗濯、学校への子どもの送り迎えという役目を、男女のどちらにも同じように記入した。姉はその課題のノートを撮影し、短文投稿サイト「ツイッター」の自分のアカウントにアップロードして、「妹はこのバカげた性差別的な課題に上手に対処した」と書いた。

 ツイートは「性差別主義」の議論に火をつけ、ロシアのインターネットで瞬く間に広がった。ある男性はこう返信した。「まだ性差別的。壁にドリルで穴を開ける、家具を修繕する、ゴミを捨てる、車を修理する、などが書いてないじゃないか」(つまり、女性の仕事ばかり男性に押し付けていて、男性の仕事を女性側に書いていない、と主張している。)

 他の多くの国と同様、ロシアでも女性は長い間虐げられていた。1917年ロシア革命前は父権的社会であった。上流社会では女性は家庭の宝で、農家では女性は男性と同じ働き手、それでいて夫、父、兄弟に服従していた。そういう生活が当たり前であったため、性差別主義の問題を誰も提起することはなかった。

 ソ連時代になると、女性は同志になり、投票権を与えられ、教育と労働の権利を男性と同等に与えられた。女性は、元貴族であっても、男性と同じように働かなくてはいけなくなった。ソ連の女性は、第二次世界大戦で戦い、宇宙を探索し、エリブルス山に登った。給与も男女差がほぼなかったため、性差別主義の議論も起こらなかった。

 ソ連が崩壊し、時代が変わり、現代ロシアの女性は労働を強いられることはなくなった(社会寄生に関する法律はソ連時代も現代もない)が、働いている女性はまだ多い。男女平等について考える機会があるのだ。

 

政治分野で格差大きく

タチアナ・ゴリコワ会計検査院議長

 「世界経済フォーラム」の「2016年世界男女格差報告」によると、ロシアは144ヶ国中75位である。2015年は53位だったため、結果は悪化している。ロシアは、経済、教育、健康の分野では40~45位だが、政治の分野では129位である(全4分野)。

 ロシアの有名な司会者でジャーナリストのクセニア・ソプチャク氏は最近、ロシア大統領選に出馬する意向を明らかにした。多くのロシア人の反応を見れば、女性が政治参画することがまだ一般的ではないことがわかる。ロシア下院(国家会議)には議員が446人いるが、うち女性はわずか64人である。女性大臣もとても少なく、過去100年で14人しかいない。

 ロシアの世論調査機関「レヴァダ・センター」の今年3月の調査によれば、女性大統領に賛成しているロシア人は33%いる。一方で、女性の政治参画に反対する人も30%ほどいる。この時、ほとんどのロシア人が男女均等機会を支持している。

 

女性は給与が安くても働く

 「ロシア連邦国家統計局(ロススタト)」によれば、2016年の男女の所得格差は27.4%で、男性の方が恵まれている。これはアメリカの結果に近い。アメリカでは、男性1ドルに対し女性79セント(2016年報告)。イギリスでは、男性が女性より18.1%多く稼いでいる(2016年イギリス国家統計局)。

 ロシアの男女格差は、欧米とは逆で、広がっている。3年前には所得格差は25.8%であった。一部の専門家は、職業上の隠れ性的差別があると強調する。多くの会社は女性を特定の役職に採用しない。幹部だけでなく、地下鉄の列車の運転士といった、「重」労働もそうである。ロシア労働法典では、女性が地下鉄(消費者サービスを除く)を含む「重」労働すること、「危険な」場所に勤務すること、鍛冶屋などとして働くことが禁止されている。2009年、ロシアの女子学生は列車運転士として働く権利を求めて提訴したが、最高裁は訴えを却下した。

 「ヴェドモスチ」紙の取材に応じた人材紹介会社「ASAPリクルートメント」の業務執行社員リヤ・セルゲエワ氏によれば、建設、エンジニアリング、IT分野の幹部職は男性に提案されるのが普通だという。一方で、女性には美容、小売、食品サービス業界で男性よりもキャリアの選択肢がある。仕事検索サイト「ラボタ・ル」の2016年の調査によれば、女性が望む給与は同じ職業の男性の望む給与よりも10%少ない。給与は高くなる可能性があるものの、女性は尋ねることもないのだという。

 

男性が差別と感じる時

 ロシア人の54%は、男性が家庭を支えるべきだと考えている。最近の「全ロシア世論調査センター(VTsIOM)」で、このような数字が示された

 だが、子育てと家の掃除については、ロシア人の80%が、夫婦が一緒にやるべきだと考えている。

 性差別というと、多くの人が女性のことを考える。だが離婚については、母親にばかり親権があることを不公平だと感じているロシア人男性もいる。「父親委員会」は今年春、離婚を切り出した側も養育費を支払うべきとする提案を行った(ロシアでは女性が離婚を切り出す場合が80%)。だが「女性の権利のために」運動の代表リュドミラ・アイヴァル氏は、この提案を「大衆迎合主義」だとし、男性がの給料から実際に扶助料を払わなければならなくなると、このような提案が出てくると指摘した。

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