① 川の名に基づく/党内のジョークの可能性も
革命家たちの間では、ごくありふれたロシア人の名前に基づく偽名が、最もよく使われた。だから、「レーニン」は女性名「レナ」に由来するという説が有力だと思われるかもしれない。ただし、それは、女性名ではなく、シベリアの大河の名称「レナ」にちなんだものである。
また、レーニンがメンシェヴィキ(ロシア社会民主労働党が分裂してできた社会主義右派)のゲオルギー・プレハーノフを「あてこする」ためにこの偽名を選んだという説もある。プレハーノフは、しばしばヴォルギン(ヴォルガ川に由来)という姓を用いていた。
② 死んだ官吏レーニンのパスポートを偽造したことから
この革命家は、1901年に初めて、印刷された著作にレーニン(より正確にはN.レーニン)という筆名で署名した。ちょうどこの頃、レーニンの女友達が、自分の父親、ニコライ・エゴーロヴィチ・レーニンのパスポートを彼に渡している――その生年月日を変えて。1900年、ウリヤノフは外国に行かねばならず、偽造書類が必要だった。
③ レーニンは作家レフ・トルストイの愛読者だった
トルストイの中編小説『コサック』では、オレーニンという姓の主人公が、何となくコーカサスに行き、文明から遠く隔たった生活に惚れ込む。レーニンはトルストイ作品を愛読しており、レーニンの妻ナデジダ・クルプスカヤの回想によると、レーニンは、シベリア流刑に向かう途中でまさにこの物語を読んでいたという。1898年のことだ。
レーニンによれば、トルストイは「ロシア革命の鏡」であり、作家・歴史家のアレクセイ・ゴレンコフによると、トルストイ作品の主人公の姓が、名高い筆名のもとになった可能性が高いという。