1.第一次世界大戦の間には数多くのプロパガンダが登場したが、ただ一つ、憎しみや怒り、戦いの恐怖をまったく感じさせないものがあった。
2.芸術家の中には、戦争を描くとき、子どもを描いたものがいた。その結果、恐ろしくて残酷な戦いは、無害な子供のゲームに姿を変えた。
3.絵はがきの子どもたちは、兵隊として描かれている。敵と戦い、塹壕に潜み、基地を守り、愛する人に手紙を書き、戦闘機に乗り、軍艦を操る。
4.このような子供が描かれた戦争絵はがきには、どこにも悪は見当たらない。ここでは、戦いはただのゲームのようで、誰も傷ついたり殺されたりしない。
5.絵はがきに登場する赤い頬の無垢な子供たちは、同時期のプロパガンダ用のポスターに描かれている残酷でおそろしいイメージの敵とはまったく相入れない。
6.絵はがきが作られた目的は、モラルを高め、わずかに血を流すだけで勝利を容易く手に入れることができると国民に信じさせるためであった。
7.絵はがきには、しばしばロシアのことわざや愛国的な文章が添えられていた。それは「ロシアと戦うと泣くのはお前だ」、「兄弟よ、敵を打て!時間を無駄にするな!」といったものであった。
8.しかしながら、このようなやり方は批判を集めた。誤った戦争の印象を与えてしまうからである。多くの人は、戦争とはどんなものか、ありのままを知る必要があり、現実の死と混乱に向き合わなければならないと考えていた。
9.大人の代わりに子どもを描くというやり方は、ロシアで考え出されたものではない。似たような絵はがきはドイツやオーストリアハンガリー帝国のみならず連合国側でも作られていた。
10.主たる軍人である男性たちはこのような絵はがきにかなり懐疑的であった。しかし女性は、血なまぐさく、荒涼とした戦場に横たわる累々たる屍が描かれているよりも、このようなイラストを好んだのである。