ロシアには10種類もの道路とその名称がある!

Russia beyond; Konstantin Kokoshkin/Global Look Press
 ロシア人は、いろんな道路、通りが好きなせいか、多種多様な名称がある。それらが何を意味するのか、そしてどう区別すればいいのか調べてみよう。

 ロシアの検索エンジン「ヤンデックス」(Yandex)の調査によると、ロシアの道路の全長は合計で39万5千キロメートルにもなる。歩行者が時速5キロメートルの速度で、止まらずに歩いていった場合、すべての道路を歩くのに9年以上かかる。

 ロシアの道路の長さを直線状に空に向けると、月(地球から38万4400キロメートルの距離にある)に到達できる。

 ロシアで道路、通りを表す単語は「ウーリツァ」だけではない。エスキモー系民族のイヌイットの言語には、さまざまなタイプの雪を示すいろんな名前があるが、これと同様に、ロシア語には、道路、通りの種類を表す12もの名称がある。その大部分は、英語その他の言語で見つかる可能性があるが、独特のロシア語と思われるものもいくつかある。



「ウーリツァ」(文字通り「通り」を表す)

ウーリツァ・ペトロフカ

 「ウーリツァ」は「通り」を表す最も一般的な言葉だ。これは、ロシアのどの地域においても、舗装された道路を指し、道路の片側の家は偶数で、反対側は奇数で番号が付けられている。通りに面して立ち並んだ各家屋にふつう番号が表示されているので、郵便配達員は、目当ての家を簡単に見つけることができる。

 ルビャンカ、ワルワルカ、ペトロフカなど、名前が付いた最初のモスクワの通りは、14~15世紀に現れたようだ。この頃、モスクワは徐々に北東ロシアのいわば首都になりつつあった。これらの通りの名前は、固有名詞(聖ペテロ〈ピョートル〉、聖ヴァルヴァラなど)にちなんで、それに接尾辞「-ka」が追加されてつくられた。「ウーリツァ」が前に付けられて、ウーリツァ・ペトロフカ、ウーリツァ・マロセイカなどのように使われる。

 その後、18世紀から、通りの名前に形容詞が含まれるようになった。たとえば、トヴェルスカヤ・ウーリツァ。トヴェルスカヤは、「トヴェリの」という意味の形容詞なので、「トヴェリに至る通り」を意味する。

 トルゴーヴァヤ・ウーリツァなら、トルゴーヴァヤは、取引を意味する「トルグ」の形容詞なので、この通りには市場があることになる。


ペレウーロク(横町)

クリヴォコレンヌイ・ペレウーロク

 「ペレウーロク」は「通りを横切るもの」を意味する。だから、ロシアのペレウーロクはほとんど、複数の大きな通りを結ぶ小さな通りだ。

 モスクワでは、20世紀半ばまで、〇〇ペレウーロク〇〇番地が、最も一般的な住所だった。19世紀初めには、この都市には142の通りと518のペレウーロクがあったが、20世紀初頭には404の通りと936のペレウーロクにまで増えた。

 しかし今では、地名学ではペレウーロクの使用は禁じられており、新しいこの種の小さな通りは「プロエズド」と名付けられている。



プロエズド(横丁)

計画中のプロエズド590号

 文字通りの意味は、英語なら “driveway” (あるいは単に “way”)。現代のロシアでは、複数の大きな通りを結ぶ小さな通りはこう呼ばれる。

 新たに建設された郊外では、一部のプロエズドは、現れてしばらくしてから当局によって正式に命名される。それまでは、暫定的に「計画中のプロエズド」と呼ばれ、番号(番地)が付けられる。

 ロシアで最も急速に成長している都市であるモスクワには、そうしたプロジェクトがいつでも数十はある。後でそれらのプロエズドは、既存の通りの一部になるか、固有の名称を与えられる。


トゥピク(行き止まり)

ニコロヤムスキー・トゥピク

 トゥピクは「行き止まり」という意味だ。もっとも、それは、通りの名前としては、単に名目上「行き止まり」であるにすぎないこともある。

 それというのも、いくつかのトゥピクは、都市の再開発にともない「行き止まり」でなくなったからだ。たとえば、モスクワのシヴェツキー・トゥピクは、1973年に古い家屋が取り壊されて、他の2つの通りを結ぶ通りとなったが、旧来の名前は残された。

 こうしたトゥピクは、英語にも同様の意味で出てくる。

リニヤ(線、ラインの意味)

ワシリエフスキー島のリニヤ

 リニヤ(線)はまっすぐな通りであり、通常、そのようなものとして計画される。サンクトペテルブルクのワシリエフスキー島には、たくさんのリニヤがある。それらは島を縦横に走る運河となるはずだったが、水位が近くなりすぎて、絶えず洪水を引き起こしかねないため、プロジェクトは実施されなかった。


プロスペクト 

ネフスキー・プロスペクト

 プロスペクトは、サンクトペテルブルクの建設にともない、ロシアの地名に登場した言葉だ。この都市のメインストリートは、最初は「ネフスキー修道院への道」と呼ばれていたが、1781年までに「ネフスキー・プロスペクト」に短縮された。現在、プロスペクトは、都市のさまざまな部分を結ぶ市中心部の大きな通りを指す。それは、大きな川に架かる橋を通るか、郊外から市中心部に達する。


ショセー(ハイウェイ)

ショッセ・エントゥジアストフ

 フランス語の ‘chaussée’ (岩の表面をもつ道)から派生した。ロシアの地方では、ショセーは単なるフリーウェイまたはハイウェイを指す。その地方の内部から始まり、そこから出て、地方の境界を越えて続く大きな通りだ。



アレーヤ(並木道)

リストヴェンニチナヤ・アレーヤ

 アレーヤ( “alley” のロシア語)は、植物、樹木などが多い通りだ。ロシアにはこのように名付けられた通りがたくさんある。モスクワのリストヴェンニチナヤ(カラマツ)・アレーヤ、ソチ市のプラタノヴァヤ(プラタナス)・アレーヤ。その他、各地にカシタノヴァヤ(栗)・アレーヤ、ソスノヴァヤ(松)・アレーヤなどいろいろある。


ブリヴァール(ブールバール、街路樹や側道などを備えた大通り)

ツヴェトノイ・ブリヴァール

 ロシアのブリヴァールにはたぶん、特別なことは何もない――それが非常に遅く、ようやく18世紀に現れたという事実を除けば。この時期に、モスクワのいわゆる「ベールイ・ゴロド」(白い都市)の木造および土壌ベースの要塞が取り壊され、ブリヴァール環状線として知られる、一連の大通りに置き換えられた。


スエズド

ゼレンスキイ・スエズド

 ロシア各地のこの種の通りは、これ以外にも、さまざまな多くの名称を持っているかもしれない。たとえば、「スプスク」、「ヴズヴォズ」、「ポドヨーム」、「ラスカト」などだ。しかし、それらはすべて同じものを意味する。つまり、都市の低い場所と高い場所を結ぶ、下向きまたは上向きの道路だ。だから、これらの通りのほとんどすべてが傾斜している。

 このタイプの道路でいちばん有名なのがワシリエフスキー・スプスクだろう。「赤の広場」の聖ワシリイ大聖堂の後ろにある傾斜した旧道だ。現在は「ワシリエフスキー・スプスク広場」と呼ばれている。そこに家屋がなくなったためだ。

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