なぜあなたは私を「お前」呼ばわりするのか:ロシア語文法における礼儀の落とし穴

Alena Repkina
 ロシア語には、2人称代名詞「あなた」が2種類ある。これらを間違って使うと、いろんな不愉快な状況につながりかねない。

 自分の言語でちゃんとした教育を受けた人はみな、外国語を学ぶ際に、自国の習慣を外国語にも持ち込もうとしがちだ。しかし、どの言語にも、礼儀と規範について独自の観念がある。ロシア語も例外ではないから、しばしば、最初に口にした言葉でもうつまずくことがある。そこで、丁寧なコミュニケーションの基になっている重要なルールを見てみよう。ロシア語のネイティブと話すときにそれが役立つことに気づくだろう。

 ロシア語文法では、会話で丁寧さを示すために代名詞「ВЫ」を用いる。これは文法的には「2人称複数」であり、したがって2人称複数の動詞(-ТЕの語尾をもつ)とともに使われる。ただし、ここでの複数形は、一度に複数の人に話しかけることを必ずしも意味しない。

 つまり、あなたは、相手に丁寧に話しているにすぎず、フォーマルな「Вы」をベースとしたコミュニケーションに必要な、適当な距離を尊重していることを示している。こういう、2人称複数の代名詞「ВЫ」の使い方があるわけなのだ。

 一方、「Ты」ベースのコミュニケーションは、2人称単数の動詞と連携して機能するТЫを使用しており、非公式な、くだけたものとなる。相手にこの形で話しかけるときは、それがフレンドリーで親密なコミュニケーションであることを意味する。だから、相手にとってもそれが快適であることが前提となる。

 次のケースでは丁寧なコミュニケーションを行うために、「Вы」 を用いる。

  • 通りすがりの見知らぬ人に対して
  • 年長者に対して
  • 先生や医者などに対して
  • サービス部門の従業員に対して。たとえば、営業担当者、宅配業者、タクシー運転手などに対して 
  • 職場の同僚などに対して
- あなたは次の停留所でお降りになりますか?
- はい、降ります。

- その店の傍で停めていただけますか?
- はい、もちろん。

- 私たちの休暇はいつになるかご存じですか?           
- 6月だと思います。どちらへいらっしゃりたいですか?

- 外科はどこかご存じですか?
- はい、203号室にいらしてください。

 「Ты」ベースのコミュニケーションと「Вы」ベースのそれは、このようにはっきり区別しなければならない。そこから、ロシア語の会話で用いられる面白い動詞が生まれた。これらの動詞は、相手に対して、間違った「戦略」を選択しているぞ、と知らせるものだ。

 ТЫКАТЬは、「お前、君呼ばわりする」、つまり、相手が間違って、くだけた「あなた」を使っていることを示し、ВЫКАТЬは、相手が間違ってフォーマルな「あなた」を使っていることを教える。

 ただし、これらの動詞は、ある程度きついニュアンスをもっているので、その使用にともなうリスクに気をつけてほしい。

  "тыкать" と “выкать" はスラングであり(前者は、実は「突く」という意味だ)、厳密な意味では、こういう言葉は存在しない。話し相手または他の誰かが時期尚早にまたは不適切に、誤ったコミュニケーション形態に切り替えたことを非難する場合にのみ使われる。

- 君は次の停留所で降りるのか? 
- なんであなたは私に君呼ばわりするんですか?私たちは知り合いじゃないでしょう?

- あなたは講義に行きますか?
- アリーナ、僕たちはもう3年間も一緒に勉強しているのに、なぜ「あなた」を使うのさ?

 とはいえ、結局、人間関係は時間とともに変化、発展するものだ。たとえば、同僚の多くは友人になっていく傾向がある。では、«Вы»から«Ты»に切り替えるにはどうすればいいか?次のフレーズを使えばそれで十分だ。

- Может быть, перейдём на «ты»? Не против?

- そろそろ «ты» (君僕の関係)に移りましょうか?いいですか?

 その人が同意すれば、あなたは安心して非公式なコミュニケーションモードを使える。

- Вы зна́ете, когда́ у нас бу́дет о́тпуск?

- 私たちの休暇がいつかご存じですか?

- Ду́маю, в ию́не. Куда́ Вы хоти́те пое́хать?

- 6月だと思います。どこにいらっしゃりたいですか?

- Наве́рное, в Испа́нию. Мо́жет быть, перейдём на «ты»?

- たぶん、スペインですね。そろそろ «ты» (君僕の関係)に移りましょうか?

- Да, коне́чно! Ка́ждый де́нь обе́даем за одни́м столо́м, мо́жно на «ты».

- ええ、もちろん!毎日、同じテーブルで昼食を食べているんですから、«ты» でいいですね。

 こうしたルールをよく身につけるために、両方のコミュニケーションモードを練習しよう。運が良ければ、あなたは誰からも「ТЫКАТЬするな」、「ВЫКАТЬしないで」などと言われることはないだろう。

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