ロシア語にはいろいろな「運動の動詞」があるが、いずれも2つのタイプに分かれる。例えば、「(歩いて)行く」を意味する動詞は、「идти」と「ходить」の二通りがあり、文脈と状況に応じて使い分けられる。だから、会話その他で「運動の動詞」を使うためには、両タイプの違いを知っていなければならない。
PART I:「運動の動詞」の2つのタイプ
最もよく使われる「運動の動詞」のペアは次の5つだろう。
- ИДТИ-ХОДИТЬ(〈歩いて〉行く)
- ЕХАТЬ-ЕЗДИТЬ(〈乗り物に乗って〉行く)
- БЕЖАТЬ-БЕГАТЬ(走る)
- ЛЕТЕТЬ-ЛЕТАТЬ (飛ぶ)
- ПЛЫТЬ-ПЛАВАТЬ (泳ぐ)
ИДТИ-ХОДИТЬ(〈歩いて〉行く) を例にとって、2つのタイプの使い方を見てみよう。
現在形
どちらのタイプを選ぶかは、2つの基準によって決まる。
基準1:運動の頻度(運動が1回だけか、それとも定期的、規則的に繰り返されるか)
Я иду в магазин – 私は店に行くところです(現在、1回だけ)。
Я хожу в тренажерный зал два раза в неделю – 私は週に2度、スポーツジムに行きます(規則的に繰り返される)
基準2:方向(一方向か、それとも複数の方向か)
Я иду по парку – 私は公園を通っています(公園を一方向に向かって突っ切っている)
Я хожу по парку – 私は公園を歩き回っています(ぶらぶらいろんな方向に歩いている、散歩している)
過去形(現在形と用法は同じ)
基準1:運動の頻度
Когда шел в магазин, я встретил друга – 店に向かって歩いていたとき、友だちに会いました。
Когда я был студентом, я ходил в тренажерный зал – 学生だったとき私はスポーツジムに通っていました。
基準2:方向
Когда я вчера шел по парку, мне позвонила бывшая – 昨日、私が公園を通っていたとき、元カノから電話がかかってきました。
Потом я ходил по парку два часа и с ней разговаривал – それで、公園を2時間ほど歩き回りながら、彼女と話しました。
注意:ある場所に行ったことがある、あるいは行って帰ってきた(往復した)という場合には(例えば、「昨日、劇場に行きました」)、第2のタイプの 「ходил」を使う。
Вчера я ходил в музей – 昨日、私は博物館に行きました。
未来形
基準1:運動の頻度
Когда я буду идти в магазин, я тебе позвоню – 店に行く途中であなたに電話をかけます。
Я буду ходить в тренажерный зал со следующего месяца –来月、スポーツジムに通い始めます。
基準2:方向
Завтра по дороге к вокзалу я пойду через парк – 明日、私は、駅に行く途中で、公園を通ります。
Я собираюсь завтра просто ходить по городу – 明日、私は街をぶらぶら歩くつもりです。
注意:近未来について言うときは、英語と同じく、現在形を使うことができる。
Сегодня я иду в ресторан – 今日、私はレストランに行きます。
これらの規則は、最初に挙げた5つの種類の動詞すべてに当てはまる。
PART II:ロシア語の2種類の「行く」、「ИДТИ」と「ЕХАТЬ」
ロシア語では「行く」という動詞は、次の2種類に分けられる。идти-ходить(〈歩いて〉行く)とехать-ездить(〈乗り物に乗って〉行く)。さて、両者の違いは?
ЕХАТЬ-ЕЗДИТЬは常に、何らかの交通手段(車、列車、自転車…)を用いて「行く」という意味だ。もし、あなたが博物館に行くとして、行程の途中で交通手段を使うか、あるいは全行程を交通手段を使って行く場合には、次のように言わなければならない。
Я еду в музей – (文字通りに訳すと)私は乗り物に乗って博物館へ行くところです。
ИДТИ-ХОДИТЬは、徒歩で「行く」。例えば、あなたが小さな町にいるとして、隣の通りにある博物館へ徒歩で行く場合には、こう言う。
Я иду в музей – (文字通りに訳すと)私は徒歩で博物館へ行くところです。
博物館、その他何でもよいが「訪れる」、「訪問する」という意味で、ИДТИ-ХОДИТЬを使うことができる。
Завтра у меня много дел: я иду на работу, а потом в музей– 明日、私はいろいろやることがあります。仕事に行き、それから博物館に行きます。
こういう場合、話者の通勤コースにはもちろん何らかの交通手段が含まれている可能性があるが、それはここでは問題にされず、訪問する場所に焦点が当たっている。こうしたケースではИДТИ-ХОДИТЬのほうを使うわけだ。ただし、同じ町/都市/村/場所でそれが起きているという条件付きである。
もしあなたがモスクワにいるのに “Я иду в Петербург” と言ったら、文字通り歩いて行くことを意味し、「私はサンクトペテルブルクへ歩いて行くところです」となる。だから、もし実際に徒歩旅行をするのでなければ、ЕХАТЬ-ЕЗДИТЬのほう使い、 “Я еду в Петербург.” と言わねばならない。
*ロシア・ビヨンドは、この記事を作成するにあたり、ロシア高等経済学院の言語学者マリア・キレエワ氏から様々な助言を得た。ここに記して感謝申し上げる。