ちょっと想像してみてほしい。あなたは、モスクワの地下鉄で当惑して立ちすくんでいる。このロシア式の複雑な名称と人込みの中でどこへ行ったらいいのか、どうしたらいいのか皆目見当がつかない。誰かに助けてもらわねばならない。あなたの隣には、ブスッとしたごつい男性が立っている。さて、あなたは、その男性に、あるいは他のロシア人にどう話しかけたらいいのか?…
モスクワとサンクトペテルブルクでは、英語でただ「Excuse me」と言ってもだいじょうぶだが、地方でサバイバルしたければ、そして地元の言語、つまりロシア語での話しかけ方をマスターしたいなら、この後を続けて読んでいただきたい。
最もよく使われる話しかけ方、会話の始め方をいくつか下に挙げた。ロシア人はこれでお互いに話しかける。もし、あなたがこれらを自分で使わないとしても、少なくともあなたは、ロシア人から何を期待できるか、この後何が起こるのかが分かるわけだ。
1.「Izvinite」 & 「Proshu prosheniya」(いずれも、「すみません」、「ごめんなさい」)
「Izvinite」と「Proshu prosheniya」は、英語の “Excuse me” のロシア語版だと言える。誰かにちょっと何かしてほしいときに、よく使われる。
例えば、自分の通り道を誰かがふさいでいるとき、
“Izvinite, propustite, pozhaluysta” (すみません、通らせてください)
現金をおろしたくてATMを探しているときは、
“Proshu prosheniya, pomogite, pozhaluysta, naiti bankomat” (すみません、ATM を見つけるのを助けてください)。
これらの表現は「互換性」があり、基本的にあらゆる種類のお願い、要求を表すのに役立つ。相手にどう呼びかけたらいいか分からない場合は、おそらく最も無難で、しかもフォーマルな選択肢だ。
2.「Molodoy chelovek」(若い男の方) & 「Devushka」(お嬢さん、娘さん)
「Molodoy chelovek」は、直訳すると「若い男性」となる。公共交通機関で男性は次のようなことを言われるかもしれない。
“Molodoy chelovek, dayte prisest” (お若い方、席を譲ってください)
あるいは、ポケットから財布を落としたとき、
“Molodoy chelovek, u vas upalo” (お若い方、何か落としましたよ)
面白いのは、これは若い人だけが対象ではなく、年齢がよく分からない場合は、壮年の男性にも使われることだ。つい昨日のこと、ウェイターが、若く見えるスポーティーな私の父(50歳を超えている)を「molodoy chelovek」と呼んだ。だから、なるべく礼儀正しく、しかもちょっとリップサービスしたいときには、これも一つの選択肢になるだろう。
同じことが、これの女性版 “Devushka” (お嬢さん、娘さん)についても言える。
“Devushka, mojno s vami poznakomitsa?” (お嬢さん、あなたと知り合いになりたいのですが)
これは、男性が女性と会話を始めるときによく使われる表現だ。
これは、若い女性に対する丁寧な言い方であるだけでなく、女性一般に対して用いられる。
ただ、年配の女性に対して「devushka」と呼びかけるのはリスキーだ。それをお世辞ととる人もいるが、ジョークだと思い、嘲笑う人もいるかもしれないから。だから、年配の女性には、ロシア人は普通「Zhenshina」(女の人)と呼びかける。
3.「Muzhchina」(男の人) & 「Zhenshina」(女の人)
「Muzhchina」(男の人)と「Zhenshina」(女の人)は、男性と女性に対する、あまり丁寧な呼びかけではないが、その代わり、誰からも受け入れられやすいので、一般的に使用されている。例を挙げると、
“Muzhchina, ne zaderjivayte ochered!” (男の人、ぐずぐずしないで。後がつかえているよ!)
あるいは、“Zhenshina, vi zabyli sumku!” (女の人、バッグを忘れたよ!)
4.「Devochka」(女の子) & 「Malchik」(男の子)
「Devochka」(女の子)と「Malchik」(男の子)は、普通は子供相手に用いられる。
“Devochka, ne trogay sobaku!” (お嬢ちゃん、犬に触らないでね!)
“Malchik, ti pateryalsya?” (坊や、迷子になったの?)
5.「Uvazhayemy/-aya/-iye」(尊敬する…)
「Uvazhayemy」(尊敬する…)は、相手が男性の場合だ。相手が女性なら「uvazhayemaya」と、女性形になる。グループなど複数の相手に言うときは、「uvazhayemiye」となる。
これは手紙、メールなど書面で一般的に使われ、普通はこの後に名前が続く。例えば、“Uvazhayemy Ivan Ivanych”のようになるわけだ。
しかし会話では、これを軽い気持ちでサラッと言うと、時に皮肉を帯びることがある。例えば、
“Uvazhayemy, propustite!” (通らせてくださいませんか!)
誰かにイラついているが、といって相手を怒らせたくはない、という場合だ。
ロシア語には、他にも皮肉な呼びかけがいくつかある。
「lyubezny」(ご親切な)、「dorogoi」(親愛なる)、「sudar’」(英語のsirに当たる)などだ。
“Sudar’, ne zvonyte mne bolshe” (もう私へのお電話はご遠慮願いたいのですが)
“Ne podskajete, dge tualet, lyubezny?” (お手洗いはどちらですか、ご親切な方?)
6.「Tovarish/i」(同志)
ソ連時代に最も一般的に使われたのが「tovarish」(同志)だ。ソ連崩壊後も生き残り、現代の会話でも用いられる。「uvazhayemy」よりは、ややフォーマルさの度合いが低い。一人に対する場合は「tovarish」で、相手がグループなら、複数形の「tovarishi」となる。
例えば、こんな風にアイロニカルに使われる。
“Tovarish, nu khvatit zdes stoyat!” (同志、いつまでここに突っ立ってるんですか!)
あるいは順番待ちなどで、
“Tovarishi, proydite vpered!” (同志、前に進みなさい!)
あるいは、ユーモラスに謝るときに、
“Tovarishi, ya sozhaleyu” 「同志、申し訳ない」
7.「Kollegi」(同僚の皆さん)
「Kollegi」(同僚の皆さん)は、会話でもメール、手紙でも、職場の仲間に呼びかける安全、正式かつニュートラルな表現だ。
“Kollegi, mojno potishe!” (皆さん、お静かに!)
“Kollegi, pitsa na kukhne! Ugoshaytes!” (皆さん、キッチンにピザがありますよ!召し上がれ!)
“Kollegi, spasibo za pozdravleniya” (皆さん、祝辞に感謝いたします)
これは基本的にあらゆる状況で使える。
8.「drug」(友、相棒)あるいは「brat」(兄弟)
ある男性が、かなりその相手との関係に自信があるときには、「drug」(友)あるいは「brat」(兄弟)と呼びかけることができる。
こういう非公式の呼びかけ方をすると、両者の間の距離は消え、即座に交流が始まる。ロシア人は通常、タバコを求めたり、道を聞いたり、パーティーで誰かと話したいときに、これを使う。
しかし、もし夜中に誰かがこのように呼びかけてくるの耳にしたら、要注意だ!そのごついロシア人たちは、あなたから、口で言う以上のものを求めているかもしれない。その連中は普通、こんなことを言うだろう。ゆっくりと、そして大抵はグループで忍び寄りながら、
“Brat, dai telefon pozvonit?” (兄弟、電話を貸してくれないか?)
“Ei, drug, kotory chas?” (よう相棒、今何時だ?)
そういう場合は、三十六計逃げるに如かず!
9.「Ei, ti」(おい、お前)
さらにくだけた、いや攻撃的でさえある呼びかけは「Ei, ti」(おい、お前)だ。例えば、誰かが車を盗もうとしているのを見たとき、
“Ei, ti, chto ty tam delaesh?” (こら、お前、そこで何してるんだ?)
あるいは、誰かに近づかないように警告したい場合は、
“Ei, ty, stoy gde stoish” (おい、お前、そこから動くな)
この表現は、性別に関係なく使えるが、普通はこんな風に言うのは男性だろう。
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