サラトフのカラチはこの地方の人にとっては自慢の特別な白パンである。19世紀にはサラトフはロシア帝国のパンの中心地として知られていた。巨大な水力による製粉所がヴォルガ川沿いに数多く建設され、何百万トンもの小麦が生産されていた。
ここで紹介するカラチのレシピは19世紀の中旬にモスクワのパン職人ドミートリー・フィリッポフが所有していたサラトフの工場で最初に作られたものだと信じられている。1856年以降は、サラトフでつくられた数個のカラチが列車で毎日特別にサンクトペテルブルクの宮廷に届けられるようになった。
しかし、サラトフのカラチの製造法が公式に定められたのは1959年になってからである。かつて、平均的なカラチは形が大きく、2.5キロもあった。しかし、今のカラチの重さは700グラムほどとなっている。
サラトフのカラチをつくる上でとても重要な条件のひとつはデュラム小麦を使うことだ。昔のこの種類の小麦は、「ベロトゥルカ」と呼ばれ、サラトフ州でのみ生育していた。
時と共にこのカラチのつくり方はわずかながら変化した。生地にはマーガリンが加えられていたが、その後植物油が使われるようになった。そして、このパンの気孔を多くし、酸味を強めるために生地に液体イーストかサワードウを加えるのが一般的となった。
サラトフのカラチは、イースターのカラチに似ているものの、これはヴィーガンの生地で作られる。
パンはふわふわで多孔質で、表面はソーダを混ぜた水を塗ったきれいな焼き色の皮(クラスト)がついている。しかし、焼いているときに、クラストが割れてしまうこともあるが、見た目や味にはまったく影響はない。表面をコーティングする別の方法もある。それは、つぶつぶのついた水分の多いトロッとした生地である。
サラトフのカラチに欠かせないのが、柔らかさと弾力性である。かつては、このカラチの質を確かめるために、女の子たちを文字通り、上に座らせたという。カラチが正しく作られていれば、すぐに元通りの形に戻ったのである。
サラトフのカラチの鮮度は長く続き、古くならない。とはいえ、冷蔵庫で保存したほうがよい。
おいしいパンを焼くのは、時間がかかるものである。このパンを焼くのにも、忍耐力が必要であることは間違いない。
材料(直径18センチ型1台=930g分)
生地:
- 小麦粉(タンパク質14%) – 285 g
- セモリナ粉 – 285 g
- 水 – 340 ml
- イースト - 7 g
- ひまわり油 - 12 ml
- 砂糖 - 14 g (小さじ1.5)
- 塩 - 8 g (小さじ1 )
コーティング:
- 水 - 50 ml
- 塩 - 2.5 g (ひとつまみ)
- ソーダ - 1.5 g (ひとつまみ)
作り方:
1. 2種類の粉を混ぜる。
2. サワードウを作るため、合わせた粉250gと水220mlを用意する。イーストはぬるま湯に入れて溶かす。粉と水、イーストを入れて混ぜ、均等になるまで混ぜる。室温で7時間置いておく。ここでは19℃の部屋に12時間置いておいた。サワードウからはブクブク泡が出る。
3. 塩と砂糖をぬるま湯120mlに入れて溶かす。
4. 油と水を塩と砂糖に加え、サワードウと合わせる。
5. 残りの粉(320g)と合わせ、均等になるまで混ぜ、15分ほど置いておく。
6. それからフードプロセッサーで15分こね、なめらかにする。生地がボウルにつかなくなるまでこねる。
7. 生地を丸め、ラップで覆い、温かい場所に30分置いておく。
8. 生地をガス抜きし、折り畳み、もう一度、丸めたら、ラップで覆い、さらに30分温かい場所に置いておく。
9. もう一度、ガス抜きをし、封筒のように折り畳み、丸めたら、天板に置く。ここでは底だけに油を塗る。ここでは、膨らみやすいよう、縁の部分は油を塗らずにおく。
10. ラップで覆い、さらに60分温かい場所に置いておく。破れないよう、上の部分がしっかり膨らんでいるのを確認すること。
11. ソーダ、塩、水を混ぜたものを表面に塗る。
12. 210℃に予熱したオーブンに入れ、水の3分の1をオーブンの底のトレイに入れる。蒸気は表面を薄くてカリカリにする。15分経ったら、温度を200℃に下げて、30分ほど焼く。
13. 焼き上がったら冷ます。
14. 1時間ほどしてからカットする。
15. パンは弾力性があり、指で押すと戻る。
16. その日のうちに食べた方が良いが、翌日も柔らかく食べられる。