1970年代、「ロシアの黄金の環」観光プロジェクトの一環として、ウラジーミル州スーズダリ(モスクワの東180キロ)のレストランが、ロシアの伝統料理と近代ソ連料理を融合させた新作料理を発表した。「アルヒイェレイスキー」と名付けられたサラダ(府主教のサラダ)もそんなサラダのひとつである。名前だけを聞けば、聖職者が好んだ料理だろうと思うかもしれないが、それは間違いである。この料理の名前の由来はおそらくスーズダリのクレムリンにあるアルヒイェレイスキー宮殿からきたのだろう。
主な材料は、健康に良いクロハツカダイコン。伝統的ロシアのクロハツカダイコンが手に入らないなら、緑大根か白大根でもよい。ちなみにわたしは自宅の庭でこの大根を育てている。
このソ連のサラダはどうして、府主教には受け入れられなかったのだろうか?答えは明確で、その当時の最高の食材は肉とマヨネーズであり、料理人はこのサラダをぜいたくなお祝い料理にしたかったからである。しかしこの2つのぜいたくな食材は聖職者にはふさわしくなかった。
わたしの家庭がこのサラダと出会ったのは、1990年代に叔母がウラジミール州に引っ越してからだ。この地方を流れる川から名をとった「クリャジマ」とよばれる、クロハツカダイコンと肉のサラダのことを知っている人もいるかもしれない。しかし、わたしはいつも「アルヒイェレイスキー」として作る。
わたしが「アルヒイェレイスキー」サラダをつくるときには肉にちょっとしたひねりを加える。通常肉を入れるときは、茹でた細切り牛肉を使う。家庭の主婦の中には、鶏肉やスモークソーセージを使う人もいる。しかしわたしは牛ひき肉を使って作るのである。肉を茹でたり、肉の塊を切るよりも早いからだ。その上、ひき肉を使うと食感もより均質になる。
わたしの家庭では、味にひと工夫利かすためにある食材を使っている。それは、グルジアのミックススパイス「フメリスネリ」だ。クロハツカダイコンには強烈な味と風味があるが、このサラダにはキャラメルオニオンが入っているので、味がマイルドになる。しかしフメリスネリを加えると、より味覚がバランスよくなるのである。
1. タマネギはくし切りにして、植物油、バター、塩、フメリスネリ少々を加えて、30分ほど炒める。タマネギは混ぜ続けること。炒めたら、粗熱をとる。
2. 同じフライパンで肉を炒める。油はたさないこと。塩とフメリスネリを少し加える。炒めたら、粗熱をとる。
3. ダイコンの皮をむき、おろす。汁気がなくなるので、薄いおろし器は使わない。
4. まずおろしたダイコンを並べ、フメリスネリをふりかける。
5. 上にマヨネーズを薄く塗る。ビニール袋に入れ、端を切って小さな穴を開けて使うと、出しすぎず使いやすい。
6. ニンジンをおろし、ダイコンの上に乗せる。フメリスネリを少々ふりかけ、また薄くマヨネーズを塗る。
7. 肉をニンジンの上に置き、マヨネーズを塗る。
8. タマネギを最後に乗せる。
9. ソ連のレストラン風に盛り付ける。
10. すべての材料をボウルに混ぜ、セルクルを使って丸く整える。付け合わせで最適なのはパセリとキャラメルオニオン。ではどうぞ召し上がれ!
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