驚くべきことに、ロシアの家庭でとても愛されているこのデザートに、ロシアの有名な詩人のひとりであるマリーナ・ツヴェターエワの名がどうしてついているかはずっと謎のままである。ただ、ツヴェターエワの妹、アナスタシヤの回想の中で似たようなパイのことが語られていた事実はある。それによれば、子供のころ、姉妹は夏にダーチャシーズンにリンゴ風味のサワークリーム・パイを食べるのが大好きだった。しかし、彼女の回想の中には、特別なレシピが書かれているわけではない。そこで私は、ツヴェターエワ・パイは彼女らの家族の記憶をヒントにしただけの一般的なものではないかと思っている。
このデザートの好きなところは、作るときのあらゆる過程で、生地かフィリングにいたるまで、大量のサワークリームが使われていることである。サワークリームは、ロシアのお菓子作りにおいて、もっとも重要な材料のひとつである。焼き菓子に加えると、とてもしっとりとして味わいも深くなる。これはフィリングについても言える。私が思うに、サワークリームはスラヴ人にとってクリームチーズに取って代わるもので、これを加えると、クリームチーズを使うのと同じように、クリーミーな食感と独特な酸味を与えてくれる。
またフィリングは、伝統的なツヴェターエワ・パイではリンゴを使うのが一般的だが、サワークリームがベースになっているので、ベリー類はもちろんどんなフルーツを入れても合う。今回のレシピにはもっとも夏らしいベリーを使ってみたい。
イチゴは、他のベリー類同様、解凍すると本来のおいしさが損なわれる。そこで、イチゴのお菓子をつくるのは、夏だけにしている。夏にはもっとも新鮮で美味しいイチゴが手に入るからである。
材料:
生地
- 小麦粉 200g
- サワークリーム(脂肪分20〜30%) 100g
- バター 100g
- ベーキングパウダー 小さじ1
- 砂糖 大さじ1
- 塩 小さじ 1/3
フィリング
- サワークリーム(脂肪分25〜35%) 350g
- イチゴ 300〜400 g
- 卵 2個
- 小麦粉 大さじ2
- 砂糖 100g
- バニラシュガーまたはバニラエッセンス 大さじ1
- 塩 小さじ1/3
作り方:
1. パイ生地を作る。ボウルに室温に戻して柔らかくしたバターと砂糖を入れる。
2. サワークリームを加え、なめらかになるまで混ぜる。次に、小麦粉とベーキングパウダー、塩をふるって入れて加え、スパチュラで混ぜ合わせたら、作業台に乗せてこねる。
3. 最初に180gほど投入し、それからまだ必要であれば、大さじ1杯ずつ加えていく。柔らかくて伸びのある生地にし、手にくっつかなければ、5分ほど休ませる。
4. その間にイチゴを準備する。イチゴは3つか4つにスライスする。焼いているときに水分が出ないようにするためイチゴは固めのものを選ぶこと。
5. 生地をパイ皿の底とフチに広げる。
6. それからイチゴのスライスを底に並べる。イチゴが水っぽいと感じた場合は少量のコーンスターチをその部分に振りかけるとよい。
7. フィリングの卵液を作る。ボウルに卵と砂糖、バニラシュガー(またはバニラエッセンス)、塩ひとつまみを入れて泡立てる。
8. 小麦粉、サワークリームを加えて、なめらかになるまで泡立てる。
9. 卵液をイチゴの層の上に注ぎ入れる。イチゴのスライスが見えなくなっているか確認すること。170℃のオーブンで50分ほど焼く。パイは真ん中がふるふるしているかもしれないがそれでよい。
10. ツヴェターエワのストロベリー・パイを完全に冷ますか、冷蔵庫で3時間から5時間冷やす。冷やした方が柔らかく、クリーミーな食感になる。紅茶と一緒に、プリヤートナヴァ・アペチータ(どうぞ召し上がれ)!