「ツヴェターエワのピローグ」には晩秋に収穫される種がもっともよく合う。アントーノフカまたはボガティリといった種であるが、これらは酸っぱい味が特徴で、薄くてサクサクしたショートクラスト生地とまろやかなサワークリームで作るクリームと相性抜群だ。
このピローグは、マリーナ・ツヴェターエワの家を訪れた客人たちによく振舞われたと言う。しかし誰がレシピを考案したのかについて正確な記録はない。マリーナとアナスタシアの姉妹が子どもの頃、タルーサ(カルーガ州)のダーチャ(サマーハウス)で休暇を過ごしていたことはよく知られている。姉妹が自分たちでこのピローグを焼いたという説があるが、マリーナは詩を書く才能しかなく、家事に関してはまったく絶望的だったと告白していることから、この説は信じがたい。もうひとつの説では、ダーチャの隣人たちがツヴェターエワ一家にこのピローグをご馳走したと言うもので、こちらの説はより信憑性が高い。
しかし少なくとも、回想録の中でアナスタシアは、素晴らしいりんごの木とベランダのある大きくて快適な庭について書いている。テーブルの上ではいつもサモワールが用意され、スメタナ入りの甘いピローグが置かれていたと。と言うのも、スメタナはりんごと並んでこのピローグの一番重要な部分だからだ。
ツヴェターエワはりんごが実る10月に生まれた。空が静かで、落ち葉が最初の酷寒の霧の中に消えていくそんな季節だ。そんなわけで、ロシアのファンたちは彼女の誕生日を「ツヴェターエワの」りんごのピローグで祝うのである。
1.まず生地を作る。乳脂肪分の高い良質のサワークリームを使うこと。ツヴェターエワ姉妹の時代には、脂肪分の高い村のサワークリームを使ったと思われるが、商店で手に入るものでよい。ただししっとりしていて、軽くて、ぎゅっと詰まったショートクラスト生地を作るためサワークリームは濃厚なものを選ぶこと。
サワークリームを深めのボウルに入れ、室温に戻したバターを加えたら、手あるいはミキサーですべてが均等に混ざるまで、混ぜる。
2.小麦粉(このピローグには全粒粉またはデュラム小麦が合う)をふるい、ベーキングパウダー(またはベーキングソーダにレモン汁を加えたもの)を加える。サワークリームの密度と量に合った量の小麦粉を入れたら(1カップから1.5カップ)、すべてが均等に合わさり、手にくっつかなくなるまで、手早く混ぜる。
3.生地を焼き型に広げる。へり(高さ5~6センチ)の部分を忘れずに。生地は薄い方がよい。
4.りんごは芯を取り除き、丸く切るか、薄いくし切りにする。皮は残しておいてよい。生地の上に重なるように並べていく。何層かにしてもよいが、あまり詰めすぎないように。
5.クリームを作る。ボウルにサワークリーム、砂糖、卵を入れ、ミキサーにかけたら、小麦粉を加える。ピローグの上に均等に行きわたるようクリームを流し入れ、焼き型ごと揺らし、クリームが生地になじむよう数分置いておく。
6. 80℃のオーブンで45分~1時間焼く。つまようじを突き刺してピローグが出来上がったかどうか確かめる。クリームがついてこなければOK。ツヴェターエワのピローグは、クリームをふわっとさせるため、焼きあがったあと数時間置いておくとよいと言われる。しかし数時間も食べないでいるなんてできないでしょう。
プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)
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