この小さなショートクラストのタルトは、ロシアで「コルジノーチキ」(小さなバスケット)と呼ばれ、ソ連時代にもっとも好まれたお菓子のひとつである。20世紀半ば以降にはどこのお菓子屋、食料品店や会社や学校の食堂でも見ることができたものである。他の食料品が不足している時代でも、このお菓子はいつも棚に並んでいた。
伝統的に、「コルジノーチキ」は中にバタークリームかメレンゲを入れ、クリームでつくった花、葉っぱやキノコで飾られる。タルトは何十種類もの作り方があり、中に入れるものも数限りなくある。ゼリー、缶詰のフルーツやベリー、ジャムやヴァレーニエ、ナッツクリームのほか、ゼフィール(卵白のお菓子)もフィリングになる。これらの作り方で唯一共通しているのは、タルトはショートクラストをベースにしており、縁が波型になった金属製の小さな型で焼くことくらいだ。
わたしはこのお菓子が大好きなのだが、バタークリームなど、伝統的に使われるフィリングがちょっと濃厚すぎて甘すぎると感じていた。そこで、濃厚なバターや卵を使う代わりに、ロシアのお菓子作りに一般的なサワークリームにごく少量の砂糖を加えてクリームに使うことにした。こうすれば、美味しくなることは請け合いだ。そして新鮮な季節のベリーを上に乗せれば、ソ連風の理想的な夏のお菓子の出来上がる。
1. ミキサーを使って、大きめのボウルにバターと砂糖を入れ、ふわっと柔らかくなり、砂糖がほとんど溶けるまで数分混ぜる。
2. バニラシュガーまたはバニラエッセンス、卵を混ぜ、なめらかになるまで3分から5分泡だてる。
3. 小麦粉とベーキングパウダー、塩を混ぜ、こねる。最初はスパチュラを使って混ぜ、まとまってきたら手でこねる。バターが溶けてしまわないよう素早くこねる。手にくっつかなくなり、どっしりしていて、柔らかい生地になったら、丸め、上から少し押さえてラップで包んで、1時間半ほど冷蔵庫で休ませる。
4. 生地を8個から10個のボールを作る。大きさはタルト型の大きさに合わせて調整する。端が波型になったタルト型があればそれを使い、なければ小さめのタルト型かマフィン型を使う。
5. 一つずつ作る。生地を型の上に乗せ、同じ薄さになるように指で広げていく。残りも同様にする。フォークを使って底に穴をあけたら、型を冷蔵庫に入れ、15分から20分冷やす。
6. 210℃のオーブンで端に少し焼き色が付くまで15分ほど焼く。オーブンから型を取り出し、完全に冷やす。
7. その間にクリームを用意する。十分に冷やした生クリームを角が立つまで泡立てる。
8. 別のボウルにサワークリームに粉砂糖を入れて数分泡立て、サワークリームの脂肪分が高ければ高いほど、クリームの形が作りやすい。ホイップクリームを加え、なめらかでクリーミーになるまで、スパチュラでやさしく混ぜる。
9. クリームを絞り袋に入れ、冷めたタルトに入れる。絞り袋がなければ、スプーンを使ってもよい。
10. 新鮮な季節のベリーを上に乗せる。今回はイチゴとサクランボを使う。乗せたら冷蔵庫に入れ、クリームがムース状になるまで数時間休ませる。プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)
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