ただのパンケーキじゃない。かまどで焼くロシアの伝統的なブリヌィのレシピ

ロシア料理
ヴィクトリア・ドレイ
 「”プリピョク”入りブリヌィ」の名で知られる、不当に忘れ去られてしまったフィリングを混ぜ込んだおいしいパンケーキのレシピ

 ざんげ節あるいはパンケーキ週間と呼ばれるこの時期、ロシア人は文字通り、パンケーキに夢中になる。ロシアではブリヌィと呼ばれるものである。ブリヌィはそのままで食べることもあれば、何か具を挟んで食べることもある。生地も無発酵で作ることもあれば、イーストを入れることもある。甘いものをつけて食べることもあれば、塩気のあるものを挟むこともある。まさに何を挟んでもよいのである。今年、わたしはついにもっとも伝統的なロシアのブリヌィのレシピを試してみることにした。“プリピョク”入りのパンケーキである。 

 “プリピョク”というのは“焼いた具”を意味する言葉で、基本的にパンケーキの中に入れて焼いた具のことを指す。つまり焼き上がったパンケーキに何か挟んで食べるのではなく、生地の中に混ぜ込んでパンケーキを焼くのである。その昔、“プリピョク”入りのブリヌィはロシアでもっとも一般的なパンケーキの一種で、専ら伝統的なロシアのかまどで、ラードを塗った鋳鉄のフライパンを使って焼かれた。しかし、今やこのレシピはそれほど一般的ではない。おそらく、一般的なパンケーキよりも作るのに時間がかかり、技術を要するからである。しかし一度この作り方をマスターすれば、きっと何度でも作りたくなるのは間違いない。 

 中でも伝統的な“プリピョク”といえば、タマネギ、キノコ、ゆで卵、ソバの実のカーシャ、甘いカッテージチーズなどであるが、今回は2種類の“プリピョク”を作ることにする。一つはカッテージチーズにハチミツを加えたもの、そしてもう一つはキノコと緑の野菜の“プリピョク”で、異なる“プリピョク”入りのパンケーキの焼き方を紹介したい。実際、このパンケーキにはいくつかのやり方がある。一つ目は前もって作った具をフライパンの上に乗せて上に生地を流すと言うやり方。もう一つはそれよりもやや手が混んでいて、まず少量の生地を流し、その上に具を置いて、その上からもう一度生地を流して両面から焼くというもの。つまりこの場合はいわば“プリピョク”が中に挟まれた“2重のパンケーキ”のようなものになるというわけだ。カッテージチーズのような甘くてクリーミーな“プリピョク”入りのパンケーキを作る場合に最適な方法である。

 

生地の材料: 

フィリングの材料: 

甘いフィリングの材料:

作り方:

1. 最初にフィリング、つまり“プリピョク”から作る。塩気のあるフィリングの方から始める。まずキノコを炒める。キノコの種類としてはマッシュルームを使うことが多いが、なければお好きなキノコで代用してよい。キノコは小さく刻んで、油をひいて、熱したフライパンに入れ、塩少々、粗挽きコショウを加えて、柔らかくなるまで炒める。

2. 緑色の野菜を加える。一般的にマッシュルームの“プリピョク”には刻んだネギを加えることが多いが、わたしはホウレン草を加えるのが好きだ。リーキやパセリもよく合う。キノコと一緒にさらに5分炒めて、置いておく。

3. 甘い“プリピョク”には、柔らかいカッテージチーズをサワークリームと一緒に泡立てる。サワークリームを加えるのは、よりなめらかにするためである。もっとクリーミーにしたければ、生クリームを代用してもよい。そこにハチミツを加える。大さじ1もあれば十分。

4. 次に生地を作る。まず卵に砂糖と塩を加えて泡立てる。ここでは砂糖大さじ1だけ加える。塩気のある“プリピョク”には無発酵の生地を使うためで、甘い“プリピョク”用の生地を作るときにはさらに砂糖を加えてもよい。

5. 次に牛乳に水を足したものを加え、混ぜる。それから小麦粉を一気に加え、混ぜる。ダマのないよう、なめらかにする。最後に生地に直接ひまわり油またはオリーヴ油を加え、もう一度、混ぜる。

6. フライパンを熱し、ブリヌィを焼き始める。フライパンの表面にたっぷりバターを塗り、大さじ山盛り1のキノコの“プリピョク”を広げ、その上から生地を流す。

7. 片面が焼けたら、さっと裏返し、表面が黄金色になるまで焼く。フィリングがなくなるまで続ける。 

8. 甘いフィリングのブリヌィに移る。残りの生地をもっと甘くしたい場合は、大さじ1の砂糖を加える。カッテージチーズのブリヌィは別のやり方で焼く。まず熱したフライパンにバターをひき、少量の生地を流し入れ、少し焼く。

9. その上にカッテージチーズのフィリングを乗せ、その上からさらに生地を乗せる。両面が黄金色になるまで焼く。

10. “プリピョク”入りのブリヌィは焼きあがってすぐ食べた方がおいしいので、焼けたらすぐにサーブする。塩気のあるブリヌィには刻んだ葉物野菜かハーブを添えるとよりおいしい。

11. 甘い方のブリヌィには粉砂糖をふりかける。

プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)