ワレニキにパイにジャム・・・。ロシアにはチェリーを使ったレシピが文字通り何十種類もあるが、わたしはチェリーを使った伝統的な料理はすべて知っているし、すべて食べたことがあると思っていた。この「修道院の小屋」に出会うまでは。そしてこのケーキを食べたとき、これがチェリーを使ったケーキの中で、もっともオリジナリティあふれる一品であることを知ったのである。
このケーキがどのようにして生まれたのかははっきりしないが、1つだけ確実なのは、修道院で生まれたのではないということである。というのも、このケーキには、バター、サワークリーム、砂糖、チョコレートなど、修道院の禁欲的な生活とは相入れない多くの「贅沢」な材料が使われているからだ。とはいえ、このケーキが「修道院の小屋」と名付けられたのにはいくつかの理由がある。まず、変わったピラミッドの形が伝統的な丸木小屋にそっくりであること。そしてもともとはチェリーの代わりに、修道士や修道院の象徴であるプルーンが使われていたからだとも言われている。
とにかく、このケーキはとても人気となり、ロシアの家庭の食卓でもなじみのものとなった。おいしいのはもちろん、その見た目や形も人気の理由であった。「修道院の小屋」は非常に印象深い形をしている。それはよくある層が積み重なった形ではなく、チェリーが詰まったお菓子の「筒」がたくさん並んでいるのである。
またこのショートクラスト・ペストリーが独特なのは、サワークリームが主要な材料として使われているからである。これによって、基本的にはカリッとしたパイ生地をしっとりさせることができる。そしてもう1つの主役は、サワークリームから作られた伝統的なロシアの甘酸っぱいクリームである。メドヴィク(ハニーケーキ)やスメタンニク(サワークリームケーキ)などソ連やロシアの伝説のケーキにも使われているものだ。ただ「修道院の小屋」を作る上で唯一の欠点がある。それは時間がかかることである。実際、作るのには何時間もかかるが、しかし出来上がってみればそれだけの時間を費やした価値があると思うだろう。
1.ショートクラストペストリーを作る。室温でやわらかくしたバターとサワークリームを大きめのボウルに入れ、なめらかになるまで混ぜる。砂糖を加えたら、泡立て器で混ぜる。
2.ふるった小麦粉とペーキングパウダー、塩少々を加え、まずスパチュラで軽く混ぜ合わせたら、両手でこねる。
3.濃厚でなめらかな生地になり、手にくっつかなくなるまで混ぜる。丸くまとめて、冷蔵庫に入れ、1時間ほど寝かせる。
4.その間にフィリングを作る。フレッシュなチェリーは、種を取り除き、置いておく。冷凍のチェリーを使う場合には、余分な水分を取り除くため、前もってザルに入れてしばらく置いておくこと。
5.生地を取り出したら、15等分し、丸める。
6.丸めた生地を1つずつ取り出し、20x 8センチくらいの長方形になるよう延ばす。長方形の生地を横長になるように置き、中央に8–10個のチェリーを横一列に並べる。
7.筒型になるよう丁寧に両端を閉じる。残りの生地も同じようにする。すべての筒の長さや太さが同じになるよう注意する。
8.閉じた部分を上にして、パーチメント紙を敷いた天板に並べる。
9. 180℃のオーブンに入れ、表面が黄金色に色づくまで20–25分焼く。チェリーのフィリングが多少染み出てきても、まったく問題はない。焼きあがった生地は完全に冷ます。
10.クリームを作る。サワークリームと生クリームを泡だて、お好みの甘さになるよう粉砂糖を加える。
11.ケーキをピラミッド型にする。大きめのプレートに筒型の生地を5本並べ、たっぷりのクリームを乗せる。次にその上に4本並べ、またクリームで覆う。その上に3本置いてクリームを乗せ、2本並べてまたクリームを乗せる。最後の1本を置いたら、全体にたっぷりクリームを塗る。
12.甘い「小屋」の全体をラップでくるんで冷蔵庫に入れ、5時間以上、できれば一晩、寝かせる。
13.次の日の朝、ラップを丁寧に剥がし、刻むかすりおろしたダークチョコレートで表面を飾る。この素晴らしいチェリーのデザートには、濃いめのコーヒーがよく合う。プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。