ロシアではペリメニは国民的な食べ物だと思われている。ふつうは、小麦粉と水で生地を作るが、卵を入れることもある。具は肉が多い。広く知られているマントゥイ(蒸して作る)やヒンカーリ(カフカースで一般的)やヴァレーニキをのぞいても、ペリメニやビョーリキ、ポーズィなど、これほど多様なスタイルを持つ国はまずないだろう。
シベリア風ペリメニ
シベリア風ペリメニの伝統的なレシピは、小麦粉と塩で生地を作り、その中に具を包み込む(普通は牛肉か豚肉のミンチ)もの。昔は、具に砕いた氷を入れて冷やしていた。そうすると、中の肉がよりジューシーになる。今は、塩と胡椒は好みで入れることが多い。
シベリア風ペリメニは常に小さな丸い形に作られていた。袋に入れて男性たちに道中の食事としてもたせていたのである。
ウラル風ペリメニ
シベリア風ペリメニとは違い、ウラルのペリメニは丸くせずに、耳の形にする。これもペリメニと呼ばれている。民俗学者ドミトリー・ゼレーニンは、1914年に地方を旅した際に、コミ・ペルミャク語で「ペリ」は「耳」を、「ニャニ」は「パン」の意味であると記している。これが「ペリメニ」の名の由来だ。
ある資料によれば、ウラルではペリメニは儀式的な意味を持っており、神々へ捧げる供物の家畜と関係していたという。別の資料によれば、婚礼の際に用意される祝祭のメニューであったという。伝統的なレシピのウラル風ペリメニは、大量の玉ねぎに、牛(45%)・羊(35%)・豚(20%)の三種のミンチを混ぜ合わせた具を詰める。生地にはウズラの卵を加えてもいい。
ウドムルト風ペリニャニ(ペリメニ)
ウドムルトでは、特別なペリニャニについて語られており、さらに、北部と南部ではペリニャニも異なっている。北部のウルムルド人たちのペリニャニのサイズは小さめのものが多く、3-4センチである。ジューシーになるように、包む時に両端を合わせない。
南部のウルムルド人たちの普通のペリメニは、もっとサイズが大きく、脂の多いブイヨンで煮る。伝統的なものは、グビエン・ペリニャニと呼ばれるキノコ入りのペリメニだ。具には、炒めたキノコと玉ねぎに卵を加える。以前は、グビエン・ペリニャニには亜麻仁油を添えて出していた。
さらにウルムルドでは、チョルイゲン・ペリニャニと呼ばれる魚のペリメニも作られている。具は、魚のすり身に卵と植物油、溶かしバターを混ぜ、塩を振る、あとは普通に調理するだけ。出すときはブイヨンと一緒に。
カルムイキアのビョーリキ(ビョーレキ)
ビョーリキとは、羊肉入りのペリメニだ。生地は、小麦粉と水、卵を混ぜ合わせ、好みで塩を入れる。肉は、肉挽機にかけずに、包丁で叩いてミンチにする。そこに、こまかく刻んだサーロ(脂身)とたまねぎ、ハーブ、スパイスを加える。薄くのばし丸くした生地の真ん中にミンチを置く。ビョーリキは、塩を入れた熱湯で茹で、バターを添えて出す。
ダゲスタンのクルゼ
クルゼは、普通のペリメニと同じように、肉と野菜を入れて作る。カフカースの女性たちは、いろいろな種類の肉を入れることもよくある。羊や牛や鶏のミンチを使い、そこに、塩、コショウ、と牛乳を少し加える。
マリ・エルのポドコーグリオ
ポドコーグリオは、小麦粉生地のペリメニである。生地は薄くのばしてから半月状に切る。中には、ウサギと豚の合挽肉か、アナグマのミンチの具を入れる。具には玉ねぎを多めに加える。具としてキビや丸麦の粥、凝乳やじゃがいもを使うこともある。出来上がったペリメニを熱湯に入れ、浮き上がってきたらすぐに取りだす。
ブリヤートのポーズィ(ブーザ)
ポーズィ、あるいは、ブーザは、ブリヤートの伝統料理だ。マーントィに似ているが、ミンチには牛乳を加え、非常にジューシーな料理である。細かく叩いた肉に玉ねぎを入れたものを生地に包み、上部に孔をあけておく。肉汁がこぼれないように孔を上にして蒸す。孔のあいたかなり大きなペリメニなので、ふつうは手づかみで食べる。
モルドヴァのチュマラ
チュマラは、モルドヴァとタタールの料理で、肉団子スープに似ている。チュマラの生地は、小麦粉、エンドウ豆の粉、蕎麦粉、あるいは、レンズ豆の粉から作る。具は、細かく刻んだ塩漬けのサーロを、丸く広げた生地に包み込む。チュマラが互いにくっつかないように、小麦粉を振っておく。チュマラを入れるブイヨンには、じゃがいもと人参を加えることもある。その場合、最初に、じゃがいもは茹でておく。できたチュマラは、ブイヨンと一緒にスメタナを添えて出す。
ユファフ・アシュ
ユファフ・アシュは、クリミアタタールのペリメニだ。ユファフ・アシュというのは「小さな食べ物」を意味する。大きさが1センチほどなので、ひとつずつ包んでいくのは、かなり手間のかかる作業だ。具は、肉挽機にかけた脂身の多い牛肉と、みじん切りにした玉ねぎで作る。ユファフ・アシュはブイヨンと一緒に出す。