ロシアの聖夜:降誕祭の宴の食卓は

 あなたが古き正教のロシアのクリスマスを祝っていると想像してみよう。降誕祭の宴の食卓には何があるのだろうか。鶏肉を使った様々な珍味、美味な肉料理、サイドディッシュの数々…。それは必ずあなたの心をつかむだろう。

 ロシアの降誕祭は、他の大きな祭日と同じく、その前に斎戒期があるのが常だ。1月6日(ユリウス暦の12月24日)は、精進期の最後の日で、1月7日の夜空に最初の星が瞬き始めるや、古のロシア人たちは食卓に着いた。各家庭には独自の料理があったが、しかし降誕祭の宴に欠かせないいつかの品もあった。

  1. クチヤー

 祭りのメインの料理は、クチヤー(またはコリヴァ)だ。これは、煮た小麦と蜂蜜で作った祝祭、儀式用の料理。ナッツ、レーズン、けしの実などを加えることもあった。

 このお粥のポイントは、それぞれの素材が正教のシンボリックな意味を含んでいることだ。小麦は死からの復活を、蜂蜜は永遠を象徴した。信心深い人のなかには、未だにクリスマスイブにクチヤーを作る者もあるが、ふつうは米、大麦、そして蜂蜜の代わりに砂糖を使う。

  1. ガチョウのロースト

 ガチョウのローストは、降誕祭の宴における真の「ツァーリ」だった。正教徒は、斎戒期には肉を食べられないので、精進落とし用に、大量の肉を熱心に用意した。降誕祭前夜が近づくにつれて、肉を積んだ荷馬車があちこちの通りに現れた。ガチョウ、アヒル、シチメンチョウはかなり高価で、様々な地域に、降誕祭用に特別に届けられた。
 正統的なお祭り用ガチョウのローストは、こんがりと黄金色に焼き上がり、皮がパリパリする。そして甘酸っぱいリンゴや発酵させた酸っぱいキャベツなど、様々な詰め物が入っているのが普通だった。

  1. 詰め物入りの豚の丸焼き

 クリスマス料理の「真打」としては、ガチョウのローストに比肩しうる唯一のものは、詰め物をした豚、あるいは、ロシア人の表現を借りると「乳白色の豚」だった。この料理は用意するのが難しく、それだけに強い印象を与えた。それというのも、生後2〜6ヵ月という、非常に限られた子豚が必要だったので、富裕層しか食べられなかったからだ。お粥や野菜をふんだんに詰めた、子豚の丸焼きは、精進落としの大盤振る舞いで真のシンボルだった。

  1. クーリビヤック

 この壮大なるロシアのパイは、どんなお祝いの宴でも大受けで、クリスマスも例外ではなかった。 他のパイと違うこのペストリー独特の点は、様々な詰め物がいくつもの層をなしていること。一つのクーリビヤック のなかに、いろんな種類の肉、赤身と白身の魚、米、キノコ、卵、野菜、さらには種類の異なる生地まで含まれている。どの女性も、家族と友人を驚かせるために、思い切り腕を振るって、自分独自のお祝い用クーリビヤックを考案したものだ。

  1. サラダ「ヴィネグレット」

 この伝統的サラダは、ビーツ、ポテト、ニンジン、ピクルスなどを、酢と油で和えたもの。今なおクリスマスの食卓で人気の一品だ。あまりいろいろ買いそろえる余裕がない人は、ニシンを加えるなどして、材料面で非常に簡単でお手軽なバージョンを作った。一方、裕福な家庭では、しばしばチョウザメのような高級魚を加えて、ワンランク上の味に高めた。

  1. 焼き菓子「コズーリャ」

 コズーリャは、古のロシアのいくつかの地域では、最も人気ある儀式用クッキーの一つだった。基本的には、砂糖シロップを使って、型で生地をくり抜いて作る、サクサクした糖蜜焼き菓子(ジンジャーブレッド)の一種であり、時にはアイシングで装飾する。このおいしいお菓子の利点は、おもちゃやお祝いの装飾としても使えることだ。望み通りのどんな形にもすることができる。伝統的な形は、天使、動物、鳥、クリスマスの星、家など。なお、コズーリャは、上機嫌で、良い気分で作るべきだと広く信じられている。そうでないと硬くなりすぎて割れてしまうというのだ。

  1. コンポート「ヴズヴァル」

 これは、お祭りや儀式で飲まれるデザートドリンク。煮込んだ果物や果実で作られるコンポートだ。人々はふつう、蜂蜜、スパイス、ハーブなどをふんだんに入れた。スラヴのソフトで健康的な飲み物で、ホットパンチ(香料入りの温めた赤ワイン)の代わりにもなる。

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