ルーシのスイーツは体に良いことで知られている。18世紀にさとうきびの糖が伝わるまで、蜂蜜が甘味料として使われていた。冷蔵庫がなかったため、長く保存できるようにスイーツがつくられていた。
5年も保存できるなんて信じられるだろうか。味も特徴も損なわれることなく。
つぶしたベリーなどのフルーツをオーブンで乾燥させて丸めるのがレヴァシ。一般的に使われる材料はローワンベリーとラズベリー。どちらも風邪を予防するビタミン源として有名である。
ロシアの厳しい冬の時期、レヴァシの夏の香りがさまざまな飲み物とともに喜びをもたらす。四旬斎でも許される食べ物であるため、喜びは2倍になる。つまり、このスイーツが禁止される時期は一年を通してないということだ。
17世紀ドイツの外交官も「いいね」
レヴァシには誇り高き歴史があり、外国人旅行客の記述もある。ドイツの有名な旅行者、歴史家、地理学者、外交官のアダム・オレアリウスは、自身の著書「モスコヴィヤ旅行記」(1634年)の中で、「スグリや他のベリーのヴァレニエ(果実煮)を乾燥させたものは(中略)、少し酸っぱくてとても良い風味」と書いている。大公や貴族から自分や他の外国の大使がもらったのだという。
ルーシの有名な「ドモストロイ(家庭訓)」には、目を楽しませるようにレヴァシをつくると書かれている。調理用の特別なレヴァシ板があり、現在は博物館に展示されている。
エカテリーナ2世の「甘い告白」
ルーシで人気の高かったこのデザートは、皇室でも食べられていた。女帝エカテリーナ2世はスイーツが大好きで、「アムールヌィエ・レヴァシ」(フランス語のアムール=愛からきている名前)をつくることを伝統にした。小さくて上品な箱に、愛の告白とともにレヴァシを詰め込んだ。このような甘い告白をされると、もらった人は拒むことなどできなかった。
その後、皇帝ニコライ1世はクリスマスツリーをおもちゃやお菓子で飾る伝統を確立した。一番人気だったのはレヴァシだ。最も保存しやすかった。
レヴァシを誰が、いつ、どこで考案したのかはまったくわからない。名前の語源さえ知られていない(レヴイ=左という形容詞と関係ありそうだが)。レヴァシをつくりながら、考えてみてもいい。
材料(100㌘用)
・ ベリーまたはリンゴ 1キロ
・ 水 1/3カップ
・ 砂糖(好みで) 1/3カップ
つくりかた
1. リンゴまたはベリーを丸ごと180℃に熱したオーブンに入れて30分焼く。
2. オーブンから取り出して、リンゴまたはベリーを裏ごしする。水(と好みで砂糖)を加える。
3. 焼き型または耐熱性容器に入れて60℃のオーブンで24時間焼く。
伝統的にはペチカで焼くが、なくても普通のオーブンでできる。
4. レヴァシを帯状に切って巻く。
レヴァシを使ったレヴァシニキという菓子パンもある。菓子パンはオーブンで焼いたり、フライパンにバターを入れて揚げ焼きにしたりする。16~17世紀の斎期の一般的な食べ物であった。当時は、砂糖ではなく、蜂蜜などを使っていた。