ロシアの人たちは値段交渉をするのに慣れている。悪いことに、これについてはロシア人たちは非常にやり手で、どこにはったりがあるのか、どこが「最終的な言い分」なのか、おそらく分からないだろう。「ロシア人は常にぎりぎりまで値段を下げさせようとします。さんざん駆け引きをしておいて買わずに行ってしまうこともよくあります!彼らの言い分を受け入れざるをえなくなるんです」とイタリア出身のビジネス・コンサルタント、イロナ・ミゾワがロシア・ビヨンドに話した。
それでも、値引交渉は常に必要だ。「私は市場で買い物したり、機器類やデバイスなどを買うときに、何人かのロシア人たちに“値切ってくれる”よう交渉したことがあり、半分はうまくいきました。ロシアの販売員たちは笑うでしょうが、私は価格をもっと下げてくれるか、もっとサービスしてくれる人を見つけることを続けるでしょう。よく言われるように“気を抜くと失敗する”んです」と言うのは、ロシアにもう10年住んでいるヒュー・マッキーナニーだ。
ロシア人というのはいつでもどこかへ急いでいる。だから取引が成立するやいなや――いなくなってしまう。少なくとも、外国人にはそう見える。
一部のロシア人は、「世間話」の術を学んでいるものの、大部分のロシア人は、そもそもなんのためにそんなことが必要なのか理解すらしていない。「ロシア人は、そんな“なんでもないおしゃべり”は時間の無駄と考えることが多いんです。私たちはすぐに次の仕事に移るのが好きですから」と言うのは、実業家のアレクサンドル・アントノフだ。
我々からのアドバイスは――関係のない会話で迷惑をかけないようにしよう。おそらく値段は決まらないだろう。ストレートなアプローチのほうがうまくいく。何が欲しいのか、いつそれが必要なのか、いくら払う用意があるのかをさっさと訊こう。
ロシア人は――恐ろしく疑い深い。まず第一に、彼らは、個人名がサインされた紙に記録されていないものはなにも信じない。「こんなことわざがあるほどです――“おしゃべりは袋を運ぶほど難しくない”。これは、紙に記録されない口約束では、現実の義務は生じないという意味です」と説明してくれるのは、韓国人のビジネスマンでブロガーのラッキー・リーだ。
第二に、ロシア人は基本的にいつも騙されるのを恐れていて、とても用心深い。「だから、どんな小さなことでもすべて何度も確認したがります。正直言うと、これにはとてもイラつきます」とイロナは言う。
そのような場合は冷静な気持ちで対応しよう。相手は全てを確認して、安心するだろう。
平均的なロシア人というのは一本気で、考えていることをなんでも口にする癖があるにもかかわらず、断ることができない。だから、古典的な方法は――「姿を消す」ことだ。もし以前に(口約束で)何かの話をつけたとして、その後、ロシア人の気が変わったとしても、それをはっきりと言ってくることは稀だ。きっとロシア人は電話やメールに応答しなくなることだろう。失礼?かもしれない。でもロシア人は、面と向かって「ニェート(いやだ)」というよりはましだと思っているんだ。
ロシア人にとってはステータスがすべてだ。それを手にしようといつも努力している。もっとも、成功のイメージの向こうには何もないかもしれないのだが。
「私たちは“モスクワシティ”(もっともステータスの高いビジネスクラスターとされている)にある会社に招かれました。私たちが最初に気づいたことは、ドアフォンの番号表がないということです。それで私たちは中に入ることができませんでした――マネージャーはランチに出ていて、誰もドアを開けてくれる人がいなかったんです。Aクラスのオフィスで、彼らは5千万ドルの投資をしようとしていたんですよ」と語るのは、投資家のエヴゲニー・グーセフだ。「その人は、彼の会社で、これまでにどんなリーダーらがその部門に携わってきたかを話してくれましたが、彼の後ろにあったホワイトボードには、会社が着手しようとするビジネスプランが書かれたままだったんです――消し忘れたのんですよ」。
結論はひとつ――約束をする前にまずチェックしよう。
すでに何度か電話で話した。メールでのやりとりも長い。そして、顔を合わせる時がやってきた。もう手にしたも同然と思っている。が、実際は違う!ロシア人は非常に長いこと「揺れる」。なにもかもがもう10回も決定されたとしても、それでもさらに10回変わりうるのだ。会うことは、討議し決定を模索するための場にすぎない。だから、不同意を丁寧に伝える準備をしておこう。
その代わり、会った後は、すべてがかなり迅速に進みだす。
「私は我が社のスタッフたちがミスをしないように、教育トレーニングに行かせました。でもこれは、成長どころか、退職やモチベーションの低下につながることがよくありました」とリーは言う。
失敗や批判は、ロシア人を気落ちさせたり、抗議したり、腹を立てたりさせる。最悪なのは、これが人前で行われてしまうことだ。「きみのアイデア/提案/申し出は――ダメだな」。正しいやり方は、「私はきみのアイデアを気に入っているよ、すばらしい。でも、じっくりと考えてみようじゃないか…」だ。
文字通りの意味だが、このアドバイスはそれでもやはり何よりも効く。「ロシア人たちを空腹で苦しめてはいけない。一緒に美味しいランチ、あるいはお酒を飲みながらの夕食をとった後は、商談もかなりうまく進む」とイロナは言う。
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