トマト温室=
ドナト・ソロキン/タス通信サハ共和国の行政中心地ヤクーツク市(東京の北北西3000キロ)郊外にある温室栽培施設「サユリ」で今月、永久凍土の地で温室栽培されたトマトの初収穫が行われる。有限責任会社「サユリ」のマクシム・スレプツォフ最高経営責任者(CEO)が、ロシアNOWにこれを伝えた。日本の「北海道総合商事」株式会社が共同出資しているサユリ社は、世界で初めて極北条件の下でハイテク通年温室を運営開始した企業となったと、サユリ社広報部は伝えている。
スレプツォフCEOによると、トマトの最初の苗が植えられたのは今年10月。全面稼働になれば、年間トマト470トン、キュウリ1692トン、葉物野菜28トンを生産できるという。総事業費は13億ルーブル(約22億7500万円)ほど。
サユリ社が所在しているのは、企業や入居者への税優遇制度のある、サハ共和国の先行発展領域(TOR)「カンガラッスィ」。北海道総合商事は今年3月、ヤクーツク市行政府およびサハ共和国の銀行「アルマゼルギエンバンク」と、3.3ヘクタールの温室建設に関する投資契約を結んだ。現時点で、第一工期の1ヘクタールの建設が完了しており、残りが2020年までに建設されると、スレプツォフCEO。北海道総合商事はまた、契約にもとづき、日本から温室建設用の機械設備を納入した。日本側の技術には、微気候の自動調整、手作業を最小限に抑えた定期肥料供給の機能もあると、サユリ社広報部は伝えている。
すべての野菜がサハ共和国内の市場で販売される。「今のところ、サハ市場の野菜の主な海外の供給国は中国。市場には、トマト、キュウリ、葉物野菜の生産者の競争がない」とスレプツォフCEO。中国からの輸入品を含めても、サハ共和国の野菜の消費量は、質の高い野菜の不足もあって、推奨量以下だという。スレプツォフCEOのデータによれば、サユリ社が補える地元の需要は、トマトで14.3%、キュウリで51.3%、葉物野菜で7.4%。
ロシア極東の温室事業への日本の別の進出例としては、日本のプラント建設「日揮」が中心となって設立した日露合弁企業「JGCエバーグリーン」がある。ハバロフスク市郊外のTORでトマトとキュウリを栽培して、すでに2年目。総事業費は20億ルーブル(約30億円)強。
「来年はハバロフスク地方の当方の温室を2倍に広げる予定。ロシアでは質の高い国産野菜の需要がとても高いことを実感している」と、JGCエバーグリーンの五十嵐知之社長はロシアNOWに話した。JGCエバーグリーンは今日、年にトマトとキュウリを1000トン生産しており、五十嵐社長の試算によれば、ハバロフスクの野菜市場の10%を占有している。ロシアで温室を運営するには、冬の加熱に大量のエネルギーを要する。だが、ここではガスが安く、収益性をあげることができるため、温室事業は経済的に魅力的なのだという。「ロシアのガスのコストは日本の5分の1以下」と五十嵐社長。
JGCエバーグリーンの事業拡張は、TOR内の物流センターの建設計画と密接に関連している。物流センターが完工すれば、JGCエバーグリーンはさまざまな種類の野菜の長期保存用冷蔵設備として利用する見込み。「日本には冷蔵設備の高度な技術があるため、ロシアに紹介したい」と五十嵐社長。
カムチャツカ地方では、ロシアの投資家が温室栽培施設「ゼリョナヤ・フェルマ」を創設した。ロシア産野菜の不足と中国産野菜の大量輸入、極東のTORの魅力的な税優遇措置が、創設の決定的な要因となった。近々、行政中心地ペトロパブロフスク・カムチャツキー市郊外に、4.8ヘクタールのトマト、キュウリ、葉物野菜の温室栽培施設を建設する予定だと、ゼリョナヤ・フェルマ社のアンドレイ・アビフ社長はロシアNOWに話した。
同社の経営幹部は当初、カムチャツカ地方の特徴とも言える温泉を活用した温室にする案も検討していた。だが、経済的、環境的コストが高くなるため、断念したという。天然ガスの方が、採算性が高く、エネルギー集約的で、安定したソリューションであることが判明した。アビフ社長の試算によれば、カムチャツカ地方で生産されている野菜は総消費量の15%以下であり、残りの85%は中国産だという。「当社のプロジェクトを実現していくことで、輸入品のシェアに替わりながら、地元の温室栽培野菜の最大35%までシェアを高められる」とアビフ社長。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。