ロシア極東が発展実験地域に変化

ユーリイ・スミチュック撮影/タス通信
 国内外の企業や国民に大胆な優遇措置が用意され、ロシア極東が実験的な地域へと変わっている。ロシア政府は土地を無料で提供し、関税を撤廃し、さらに独自の経済フォーラムを開催している。

 極東の主要都市ウラジオストクでは、すでに2年連続で「東方経済フォーラム(EEF)」が開かれている。ロシア西部の主要なフォーラム「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)」と同様、ウラジーミル・プーチン大統領が出席し、基調講演を行っている。9月2~3日に開催された第2回EEFでは、ロシア政府が極東の技術開発とベンチャー企業支援のプラットフォームを極東に創設する予定であることが、プーチン大統領によって伝えられた。

 今回のEEFでは総額1兆8500億ルーブル(約2兆9600億円)の契約200件以上が結ばれ、前回のEEFでは総額1兆8000億ルーブル(約2兆8800億円)の契約が結ばれていることを、ロシア連邦極東発展省広報課が明らかにしている。連邦極東発展省はロシア東部を開発するために特別に創設された機関である。

「EEFはまだ2回しか行われていないため、成果を計れる唯一の指標は来場者数と契約件数」と、FX会社「eトロ」のパーヴェル・サラス・ロシア・CIS統括は話す。来年のフォーラムでは、事実上実現されたプロジェクトのデータにもとづいた最初の成果を、主催者が提示する可能性があるという。

 

注目の契約

 ロシア政府が挙げた契約の中には、納税や通関が簡易化された特別な領域である「ウラジオストク自由港」および「先行発展領域(TOR)」に日本企業を誘致する、日露共同プラットフォームの創設に関する契約がある。日本側から創設に参加するのは、「日本国際協力銀行(JBIC)」。

 最近創設されたロシアと中国の「露中農業基金」は、総額180億ルーブル(約288億円)のプロジェクト2件に融資している。

 ロシア版ナスダックである証券取引所「ヴォスホト」は、EEFの一環として、開所した。ロシア極東の大都市ハバロフスクの空港が最初の発行体となり、1億4300万ルーブル(約2億2880万円)の投資を受けた。

 「重要な契約を選ぶことになったら、ロシア企業が国際舞台で権威を強化できたプロジェクトを優先させるべき」と、ロシアのFX会社「ドミニオンFX」のアナリスト、マリヤ・サリニコワ氏は話す。具体的には、ロシアの大手国営石油会社「ロスネフチ」と、イギリスの大手石油会社「BP」およびアメリカの大手石油会社「シュルンベルジェ」の、地質調査(地震調査)用技術の共同開発計画だという。ロスネフチはこれ以外にも、東シベリアにガス精製施設を建設する契約を、「中国石油化工股分有限公司(SINOPEC)」と結んだ。

もう一つの重要なプロジェクトとして、ロシアの大手証券会社「フィナム」の金融アナリストであるティムール・ニグマトゥッリン氏は、シベリアのガス化学施設の建設をあげる。「シベリア・ウラル石油ガス化学会社(SIBUR)」は、このプロジェクトに5000億ルーブル(約8000億円)を投資している。

 

新しいフロンティア

 ロシア政府は一般市民も極東へ誘致している。極東はロシアで最も広い地域だが、暮らしているのはわずか800万人ほどだ。そのため、「無料ヘクタール」を与える、新たなプログラムを始めることにした。

 新しい法律によれば、極東の住民は来年2月を期限として、土地の無料提供に申請できる。その後、ロシア全土の住民も申請できるようになる。希望するすべての国民が極東の土地を無料で取得できる。条件は、5年で開拓すること。工場、家、ホテルなど、何かを建設するだけで十分だ。その後、土地所有権が移譲される。開拓していない場合は、国に返さなければならない。

 すでに6000人以上が極東の土地の無料提供に申請していることを、キリル・ステパノフ連邦極東発展次官は明かした。「この法律は国民に新たな段階の自由を与えるもの。国民が役人との相互関係を持たなくて済むよう、すべての官僚回廊をまっすぐにしているところがポイント。役人と接触せずに、土地を取得できる」と、ステパノフ連邦極東発展次官。土地提供期間は16~25日以内だという。申請手続きの正しさをチェックし、土地の提供を決定し、同じ場所を希望する人が他にいないことを確認するには十分な期間である。ただ、土地配分手順全般をゼロからつくっているため、今は少し時間がかかっている。この法律は2016年6月1日に施行されたばかりである。

 ステパノフ連邦極東発展次官によると、土地を最初に取得した人々は主に、ミツバチの飼育を含めた農業への従事を計画しているが、エコ観光を発展させるエコ村を創設するプロジェクトも数件あるという。土地提供の対象となるのは、自然保護区を除く、ほぼすべての領域で、森林まで含まれている。中国との国境に近い小さな領域ユダヤ自治州のアレクサンドル・レヴィンタリ知事は、ロシアNOWの取材に対し、ユダヤ自治州だけでも64万ヘクタールの土地が無料配分の対象になっていると話した。

 連邦極東発展省は土地の開拓例として、5種の計画を提案している。例えば、イチゴ栽培の工場を創設する場合、100万ルーブル(約160万円)ほどの投資が必要になり、回収期間は1年以内になる。

 ロシア極東には今日、アジア太平洋地域で最も有利な納税条件の一つがあると、ロシアの弁護士事務所「エゴロフ・プギンスキー・アファナシエフ&パートナーズ」パートナー委員会のドミトリー・アファナシエフ委員長は話す。極東の法人利潤税はゼロに近いという。例えば、韓国は10%、中国は15%、日本は26.4%である。

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