クリミアの中小企業活動

画像提供:Lori/Legion Media

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クリミアがロシアに編入された後、地元の中小企業は書類の再手続きを含む、さまざまな困難に直面したものの、すぐに新しい条件に順応した。これらの企業を助けたものには、クリミア向けの中小企業支援プログラムもある。

 ロシア政府はクリミアの中小企業支援に、2年間で約5億ルーブル(約11億円)を配分した。また、税優遇措置が適用される自由貿易圏も創設した。 

 現在クリミアで収益性の高い分野は、貿易や、B&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)型ホテル、レストラン、ツアー・オペレーター、ボート・トリップなどの旅行。ワイン醸造などの小規模農園や、機械工場も発展している。再登録手続きを行ってから、事業発展計画を立て、クリミア製品づくりに転換し、ロシア市場に進出するようになった。 

 

クリミア・シャトー

 セヴァストポリから20キロほどのクリミア山脈に、ワイン醸造所「ウッパ・ワイナリー」がある。2007年に、モスクワのソムリエ兼レストラン経営者のパーヴェル・シュヴェツ氏が設立した。ここの石灰質土壌とさんさんと降り注ぐ太陽の光は、高品質かつ上等の辛口ワインの製造に適しているという。

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ロマノフ家のクリミア休暇

 10ヘクタールのブドウ園ではバイオダイナミック農法で栽培し、化学薬品を使用していない。ここには加工醸造室や木製の樽でワインを保持するセラーがある。年間生産量はボトルで約4万本分。ボトルにはChernaya River Valley, Sevastopol(チョルナヤ水峡、セヴァストポリ)とのブドウ栽培場所の表示がある。納入先はモスクワ、サンクトペテルブルク、クリミアのレストランやワインブティック。クリミアがロシアに編入されてから、ロシア市場でシュヴェツ氏のワインへの関心は急速に高まった。

 「以前はライセンスを取得するのが大変だった。中小企業に対する要求は途方もないものだったから。だけど昨年末に法律が改正されて、自分のブドウ園でワインを醸造する農家の生活がかなり楽になった」とシュヴェツ氏。

 クリミアでもフランスのシャンパーニュやボルドーのようなワイン生産地域をつくることができると、シュヴェツ氏は考える。そのような場所の候補の一つがセヴァストポリ近郊だ。そのためにはワイン醸造を行いたい投資家数十人を募り、ワイン栽培に適した土地を提供することが必要である。小さなワイナリーの立ち上げにかかる費用は、5年で100万ドル(約12000万円)ほど。

 借地条件に、ブドウ畑の栽培、ボトル充填までの加工ラインの設置、ツアーを受け入れられるようなワイナリーの観光施設の創設の義務を盛り込むこともシュヴェツ氏は提案する。クリミア産ではないブドウからワインがつくられた際に、「クリミア・ワイン」と表示されることを許容しないことが重要なのだという。

 

クリミアの食材を使ったスイーツ

 クリミアで新しい事業を起こすのは他の地域と同様に面倒だと起業家は話す。ただ、プラス面もある。最近創業したFRP補強筋メーカーの社長であるナタリヤ・ヴァシリエワ氏は、ここではモスクワや他の都市部よりも、すべての要求に合う物件を見つけるのが簡単で、借料もはるかに安いと話す。船便での製品出荷のコストは、自由貿易圏の特恵がおまけつきでカバーしてくれる。

 クリミアの主要なリゾートであるヤルタの新しい製菓店「トレ・ギオジェ」も、自由貿易圏に登録している。製菓店のカフェでは、クリミアの食材をつかった自家製スイーツとアイスクリームが販売されている。また、バラの花びらやラベンダーのジャムも販売されている。

 「ロシアの法律にシフトするのは大変だった。開店、書類、納税の手順が違うから。すべて一から学びなおし。一方で、自由貿易圏の初期の参加者だから、その利点を実感できた。特に、ヨーロッパから輸入した機器の通関の時」と店長のヤナ・クルプコ氏は話す。

 最初の期間は船便で牛乳を調達するのに時間とコストがかかり、大変だったという。現在、1400キロ製造しているアイスクリームは、クリミア産牛乳のみを原料としている。販売もクリミア半島内に限られている。

 「クリミアの農家と契約を結んでいるが、質には完全に満足している。あとクリミアでマスカルポーネ、モッツァレラなどのソフトチーズの工場が開業すればいいけど」とクルプコ店長。

 クリミアでは経済制裁でこれらのチーズが入手できなくなったため、カフェやレストランはロシア産に切り替えた。需要の増加とともに、供給量も増してきた。例えば、セヴァストポリでは、今秋にもリコッタとモッツァレラチーズの工場が開業する。