ロイター通信
ロシアは、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への資本参加の申請を行った。これについてはロシアのイーゴリ・シュワロフ第一副首相が声明した、とインタファクス通信は伝えている。こうして、ロシアは、新しいアジア開発機関の共同出資国となりうる。同行の最大出資国は中国であり、同機関におけるロシアの出資比率は今のところ明らかにされていない。
投資会社UFSICのセルゲイ・フォミン法律部長は、「出資国としてのロシアの参加は、プロジェクトへの優遇的な資金供与といったあれこれの特恵をロシアに与え、また、完全な権利を有して銀行運営に参加する可能性を拓く」とみている。しかし、同氏は、イメージの要素も少なからず重要であるとし、「ロシアは、改めて、強力な軍事大国としてばかりでなく経済的に強い国家として自国をアピールできる」と述べる。
アジア開発銀行(ADB)の評価では、アジアには、2020年までの期間にインフラ建設への投資が年間およそ8000億ドル必要である。ADB自体は、それらのプロジェクトに年間100億ドルしか融資を提供していない。
同行へは、アジアおよび世界全体における経済発展を目指すあらゆる国および経済主体が参加できる。当初は、2014年10月24日に、中国、インド、シンガポールを含む21ヶ国の代表が、同行の設立準備に関する覚書(MOU)に調印した。しかし、この二週間に、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、ルクセンブルク、オーストラリア、オランダも、この新しい機構へ参加する意向を表明した。
とはいえ、ロシアの経済学者セルゲイ・ヘスタノフ氏は、西側の金融機関に対抗しうるグローバルな機関を創設するまでの道程はひじょうに遠い、とみている。同氏は、AIIBの最大出資国である中国が米国と極めて緊密な経済関係にある点を指摘し、「こうした状況において、中国は対抗的な金融機構の創設を目指してはいるものの、事態が鋭い対立にまで至ることはない」と述べる。
新しい銀行の定款資本は、1000億ドルに達しうる。セルゲイ・フォミン氏は、将来はその額がアジアの投資家らの民間資本などによって増大する可能性があるとし、「その場合には、同行は、アジアの新たな金融システムの枠内における主要な機関となりうる」と述べる。
銀行間の競争と協調
しかし、専門家らは、ロシアがすでに新開発銀行(NDB BRICS)への参加を決めており、この金融機関が多くの点でAIIBに類似しており、両行ともインフラへの投資に携わる意向であり、定款資本の額も同程度である、といった点を指摘しており、セルゲイ・ヘスタノフ氏は、「どちらのプロジェクトも、現在、スタートの段階にある。ロシアは、より上首尾な発展機関に注意を集中する」と述べる。
ドイツ銀行のヤロスラフ・リソボリク分析部長は、AIIBといった制度構築のプロジェクトへ参加することは、たとえロシアが同様の機構へすでに参加しているとしてもロシアにとって意味がある、とし、「これは、アジアという極めて重要な地域におけるロシア経済の統合強化のツール。つまり、このプロジェクトは、短期的なリソースの誘致という観点からばかりでなく、投資の分野におけるアジアとの将来的な接近のツールとして、ロシアにとって重要だ」と述べる。
AIIBとNDB BRICSは、事実上、パラレルに設立されつつある。専門家らは、その背景として、世界経済には国際通貨基金(IMF)や世界銀行(WB)といった既存の金融機構に替わるものが必要であるという点を挙げており、リソボリク氏は、「おそらく、NDB BRICSとAIIBは、競争ではなく協調の道を歩みだす。これは、たとえば世界銀行にとって、一定の挑戦となりうる」と述べる。
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