ロシアのアジア市場転向の障害は?

極東の社会・経済発展をテーマにした会議, エカテリーナ・シュトエゥキナ/ロシア通信撮影

極東の社会・経済発展をテーマにした会議, エカテリーナ・シュトエゥキナ/ロシア通信撮影

アジアの新しく力強い市場にロシア経済が転換を図るとの発表がなされたものの、実質的な成功は今のところ限られている。アジアの投資家の活動を阻んでいるものは、ルーブルの変動といったマクロ経済の要因や、天然資源開発よりも強い、ウラル以東の産業・革新開発への政府の思いだ。  

 力強いアジア太平洋(AP)地域への自国経済の転換を図り始めた、とロシア政府がくり返し述べるようになってから久しい。とはいえ、アジア方面の実際的な作業が始まったのは昨年3月のこと。つまり、クリミアがロシアに編入され、西側諸国が最初の対ロシア経済制裁を発動した後だ。昨年だけでも、一見すれば、中国方面などで著しい進展があったように見える。しかし、実質的な「東方転換」は今のところ、生じていない。

戦略的優先順位と合致せず

 アジアの専門家によれば、主な問題は、ウラル以東の加工産業、革新、ハイテクを何としてでも発展させたいというロシア政府の強い思いだ。しかし、アジアの投資家はロシアのこれらの分野にさほど興味を持っていない。アジアの投資家にとって重要なのは天然資源だ。

 「ロシア極東が日本企業にとって興味深い生産拠点になっていないというのが正直なところ」と話すのはロシアNIS貿易会(ROTOBO)の岡田邦生会長。「極東の主な問題は、少ない人口、大きな域内市場の欠如、高い人件費。これらの問題を解決せずに生産分野に投資を募るのは困難。ロシア政府がビジネス環境を改善できたとしても。一方で、極東とシベリアには巨大な自然の財産、すなわち天然資源がある。天然資源開発への投資は非常に有望。自国の強みを活かすことが必要」

 似た見解を示すのは中国の専門家。「むろん、中国の投資家は、極東に興味を持っている。だがロシア国内でも今のところ、この地域をいかに戦略的に発展させるかという点でコンセンサスがとれておらず、極東の高官とモスクワの高官の見方が一致していない。さらに、いわゆる中国からの移民の危険性というデリケートな問題への懸念もある。したがって実際にできることはさほど多くない」。華東師範大学ロシア研究中心の楊成副主任はこう話す。

 

TORのメリットは不明

 ユーリ・トルトネフ極東連邦管区大統領全権代表兼副首相とアレクサンドル・ガルシュカ極東発展相が現在行っている、極東の国家政策は、肯定的に評価されている。 「税制上の優遇措置、規制の簡素化、ロシア極東の行政負担の軽減を含む率先発展領域(TOR)の創設は、アジアの投資家を誘致するための正しき第一歩と評価できる」と話すのは東京財団ロシア・プログラムの責任者である畔蒜泰助氏。「しかしながら、外国の投資家や技術を誘致するための国家政策では、特区創設は別段“新しい言葉”ではない。したがって、極東の新しいTORが他の経済特区とどう異なるのかを、外国企業がこれから実際に見て行かねばならない」

 

成功への2つの鍵

 アジアの専門家によると、ウラル以東へのアジアの投資家の誘致を成功させるには、ロシアは2つのことを行う必要がある。第一に、行政手続きの向上と、投資家にとってわかりやすい当局の”インタフェース”の創設。「質の高いコンサルティング・サービスに加えて、当局が投資家向けサービスのレベルと効率を高めることが重要であると、中国側は身をもって学んだ。一ヶ所に集まり、すべての問題について議論し、その後障壁を取り除くことができるような、統合窓口的メカニズムがあったら人気が出るのではないか」と楊副主任。

 第二に、アジア市場の現実的な需要の分析にもとづいた優先分野の正しい選定。「最大のポテンシャルは大豆生産を中心とした農畜産分野」と話すのは新華社世界問題研究中心の盛世良研究員だ。「ロシアには生産力があり、中国には大きな市場がある。それを統合してシナジー効果を得ることが可能。例えば、3年前、中国は日本から環境的に安全な小麦を1キログラム当たり約160人民元で輸入したが、すぐに売り切れた。昨年は小さなボトル入りのバイカル湖の水を1本10人民元ほどで輸入し始めたが、こちらも大好評。このような商品をより多く必要としている」 

*元記事(露語)