PhotoXPress撮影
「ガスプロム」は19日、ウクライナ東部のドネツィク人民共和国およびルハンシク人民共和国に向けて、ソ連時代に建設されたガス計測ステーション経由の直接的なガスの供給を開始した。「ナフトガス」がウェブサイト上で、東部の戦闘によってガスパイプラインに多数の損傷が発生し、18日から同地域へのガスの供給が停止している、と伝えたことを受けての「商業的な人道支援」だった。ところがガスプロムが直接供給を開始したと発表した直後、ナフトガスはすべての損傷が修復できたとして、ガスの供給再開を発表。ロシアとウクライナのガス問題の再燃を招きかねない事態となった。アメリカがガスプロムに対し、経済制裁を発動する可能性もある。有限責任会社「国家法律局」法務部のユリヤ・ガルエワ部長は、「コメルサント」紙の取材に対し、制裁の可能性を指摘した。
今後のウクライナ東部へのガス供給、ロシアとウクライナのガス問題、アメリカによるガスプロムの制裁について、ロシアNOWが専門家に聞いた。
セルゲイ・ピンキン氏、エネルギー発展基金理事
ウクライナ東部向けのガスはすでに対立の原因になっている。これを人道支援と呼ぶことには無理がある。「ガスプロム」は契約にこの供給を記入できる根拠を見つけたわけだから、人道支援ではない。問題は契約にガスの受け入れ拠点が記されていること。拠点は東部人民共和国ではない場所にあり、キエフ(ウクライナ中枢)は、ガスが供給されているのはウクライナ国内だが、しかるべきところへではないと言っている。
この状況が難しいことは間違いない。停止したばかりの西方向の供給再開が対立の解決になり得る。キエフとナフトガスはガス料金の前払いを行ったが、ガスプロムがこの前払い金をウクライナ東部への供給料金と見なすのではないか。
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何がアメリカを対ガスプロムの制裁に向かわせるだろうか。ガスプロムはウクライナ住民を助けている。これが「ブラックリスト」に加える理由にはなり得ないと思う。ガスプロムがガスを供給しようがしまいが、アメリカはその気になればいつでも制裁を発動することができる。
ドミトリー・アブザロフ氏、戦略通信センター所長
ガスプロムはミンスクの合意を破ったわけではないため、キエフの苦情を適切とは言えない。ガスプロムは、これまでなかった2ヶ所のガス計測ステーション「プロホロフカ」と「プラトヴォ」を追加したにすぎない。一方で、ウクライナが非公式な理由によってガスを止めたことは、事実上の深刻な違反である。先の停戦合意によると、ウクライナは東部の社会・経済的統合に協力しなければならない。「ウクルトランスガス」(ナフトガスの子会社)はパイプラインの破損を訴えたものの、すぐに供給を再開した。ということは、実際には破損はなかったということになる。
ナフトガスは今回の件を事故としており、それはガスプロムの立場を強める。この状況でガスプロムは救世主になるため。ウクルトランスガスはデバリツェヴェへの圧力としてガス供給を停止したことを公式に認めることができないため、ガスプロムの決定も抑え込むことができない。ガスプロムは供給を人道支援として行っているし、そのような前例はすでに世界にある。今回の場合、人道支援はガス供給のルート変更ではあるが、ナフトガスとの契約の履行の一環であることに変わりない。
これはウクライナ当局にとって深刻な行き詰まり。ガスプロムの措置の後、キエフは対立を最大限に鎮めようとするだろう。最新情報によると、ウクライナは意思に反して、ドネツィク人民共和国およびルハンシク人民共和国へのガス供給を再開した。総合的に判断すると、ガスの停止はもうくり返されない。ロシアからウクライナ東部にガスが直接供給されたり、ナフトガスの前払い金が充てられたりすることをウクライナは望んでいない。これは長期的な交渉を招く。
ガスプロムはアメリカ市場に参入していないため、ガスプロムへの制裁はアメリカ側からすると無効。アメリカはヨーロッパに圧力をかけることしかできないが、EUは制裁を発動しないのではないか。EUはその案を1週間前に拒否したばかり。
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