ロシアのエロチックな映画

Konstantin Bogomolov / START, 2019
ソ連崩壊後のロシアにおけるエロチックな映画の歴史を紐解こう。

『アンジェリカへの情熱』、1993年
(Страсти по Анжелике)

 アンジェリカは珍しい症候群を抱えている。雷鳴を聞くと性欲が爆発するのだ。雷が鳴ると、彼女の脳の制御中枢の機能が停止し、誰彼構わず出会ったばかりの男性とセックスをする。その後は記憶喪失に陥る。

 アレクサンドル・ポルィンニコフ監督の、神秘的・推理小説的な要素を含んだこのエロコメディーは、当時がまだソ連崩壊から間もない時期だったからこそ制作できたものだろう。この頃は何もかも許された。『アンジェリカへの情熱』にはところどころ、ポルノ映画になるかならないかの一線でバランスを取っている場面がある。作中で登場人物の一人がこう言う。「これはどこか別のところだったらポルノかもしれないが、ここでは図解便覧だ。」

『黄昏の肖像』、2011年
(Портрет в сумерках)

 ソーシャルワーカーのマリーナは、初めは家族ぐるみの友人で愛人でもある男のアパートを訪ねるために田舎町の郊外に通っている。ある時、愛人と一夜を過ごした後、彼女は現地の警官に乱暴される。彼女は今度は警官を訪ねるためにこの町外れに通うようになる。

 アンゲリーナ・ニコノワ監督の映画は、性暴力被害者に見られるストックホルム症候群について、セックスと病理学の観点から見事に描きだしており、部分的に映画『ラストタンゴ・イン・パリ』との類似点が見出される(特に雰囲気の点で。同作はかなりの圧迫感がある)。

『イナゴ』、2014年
(Саранча)

 モスクワのボヘミアン出身の女が、田舎出身の建設作業員と秘密の関係を持つようになるが、そこから生まれるものは、5年に及ぶ放蕩生活と道徳的頽廃、そして一組の死体だ。

 プロデューサーらは、エゴール・バラーノフ監督の『イナゴ』をエロチックなスリラーと呼んだが、『氷の微笑』のような緊張感をこの映画に期待することはできない。大都市における精神と道徳の頽廃のメタファーとしてのセックスは存在するが、頻出はしない。言ってみれば、『イナゴ』はエロチックでスリラーなドラマを、れっきとした真剣なジャンルとして確立しようとした試みの一つである。この試みは悪くなかったと考える人もいる。

『妾』、2019年
(Содержанки)

 スキャンダラスな舞台演出家のコンスタンチン・ボゴモロフの初監督映画は、内縁関係をモスクワの俗世間において確立した現象として描いた部分とセックスの描写をめぐり、一大センセーションを巻き起こした。

 ボゴモロフの作品において印象的に撮影された男女の裸体の数は、『ゲーム・オブ・スローンズ』の殺人の数に匹敵する。キャストは、容姿端麗で才能溢れるロシア映画界のスターが勢揃いしている(アレクサンドラ・クズネツォワ、ダーシャ・エルンスト、アレクサンドル・レビョーノクなど)。官能的で大胆なエロシーンの愛好家にとっては、この映画は掘り出し物だろう。

『忠誠』、2019年
(Верность)

 シリアスな試みとして成功した現代ロシアの意欲作は、エロチックなドラマというジャンルに道を切り拓いた。ニギナ・サイフラエワ監督の『忠誠』は、ロシアの主要な独立系映画祭「キノタヴル」で最近初公開され、多くの称賛を得た。評論家のアレクセイ・フィリポフは、ロシア映画としては独特な、「人々がセックスをし、実世界にいるかのように話し、かつ道徳的評価の外に存在することのできる」ニッチな場所が登場したと記している。

 ヨーロッパに囲まれた街、カリーニングラードに暮らす夫婦の物語だが、テーマは性欲の解放ではなく、危機に陥った家庭の中での心からの繊細な会話だ。本作においてセックスは、肉体生活ではなく精神生活の切り離せない一部としての役割を担っており、非常に印象的に描き出されている。

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