ロイター通信撮影
ロシア中央銀行は、この国の通貨であるルーブルを変動相場制に移行させた。この新たな戦略のもと、ロシア銀行はもはや本格的な通貨介入、すなわちロシア市場におけるドル売り介入を実施しないことになる。この金融監督機関は、1日に同行が行うドル売り介入額の上限を3億5000万ドルに設定したが、アナリストによれば、これは為替レートに影響を与えるには不十分な程度だという。
以前、中央銀行は、ルーブルのレートが安定するまでルーブル買いの介入を行っていた。例えば2014年10月には、同銀行は293億ドルを費やしてルーブルを買い支えした一方で、10月下旬以来の9日間に、1日あたり20億米ドルを超える額の売り介入を行っていた。ロシア中央銀行の報道サービスは、無制限の通貨介入を停止するという決定は、ルーブルに対する投機を防止することになると説明した。しかし結局のところ、その決定はルーブルの為替レートの急激な変動をもたらした。11月8日の取引では、ドルに対してまず10%近く下落した後に上昇し、先の下落分をほとんど取り戻した。
新たな戦略
「中央銀行の決定は、インフレ目標政策への移行に向けた戦略の一環であり、国の通貨の変動制への移行もその一部を形成するものです」と、IK RUSS-INVEST 社主任研究員のドミトリー・ベデンコフ氏は解説する。同氏は同時に、安定性に対する脅威があると中央銀行が見なした場合は、3億5000万ドルの上限額を超えた介入を行う権利を留保しているとも付け加えた。通貨の変動幅の境界における介入に対し1日当たりの限度額を導入したことには、金と外貨準備高に対する圧力を軽減する意図があると、ベデンコフ氏は解説する。
中央銀行は、後のルーブル下落の要因は、原油価格の下落と海外の資本市場への限定的なアクセスという経済の基礎的諸条件(ファンダメンタルズ)にあるとみなした。同銀行によると、新たな為替相場政策のシステムに慣れるにはしばらくの時間がかかるうえ、その間にルーブルはどちらの方向にも変動する可能性があるという。さらに、米国経済の成長により、他の通貨に対しドル高が進行している。特に、ポンドは対ドルで今年の最安値を記録しており、ユーロ安は過去2年間で最安だ。一方、円は、対ドルで過去7年間で最も円安となっている。
想定可能な結果
「[新たな戦略の] 最初の結果は単純です。ここ数週間、中央銀行の介入は売り圧力を大幅に抑制してきたので、ルーブルは最安値を記録します」と投資持株会社 FINAM のアナリストであるアントン・ソトコ氏は述べる。しかし彼は、ルーブルは徐々に自由に兌換可能な通貨になりつつあるとも付け加えた。それは、準備通貨を回避して他のどの通貨にでも両替できるようになることを意味する。「例えば、現在ルーブルをスイスフランやメキシコペソに替えるには、まず最初に中央銀行が定めるレートで米ドルに替える必要があります。そうしてようやくドルをペソに替えることができるのです」とソロコ氏は解説する。これは付加的な取引を生じさせ、経済主体のコストを増大させ、主要な準備通貨の影響力をさらに高めることになると彼は付け加えた。
アントン・ソロコ氏によると、長期的には、自由変動相場への移行は経済にとって朗報であるという。しかし短期的には、期待はそれほど大きくない。「第一に、自由に両替できると、中央銀行がこの国の通貨の価格設定に影響を行使できなくなるので、結果的にはボラティリティを増加させます」と説明する。短期的な通貨リスクの予想がより困難になり、それは外国のパートナーと緊密な関係を持つ企業に対しマイナスの影響を与えることになる。一般人に関係するリスクはルーブル安だ。一部の物品は外国通貨を使って購入されるため、これは購買力に影響するとアントン・ソロコ氏は解説する。
とはいうものの、中央銀行は、大幅かつ持続的にルーブルが下落した場合は、ドル売り介入を再開する可能性があることを明確にしている。
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