原油価格下落は予算に悪影響

AFP/East News撮影

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原油価格が下落し、ロシアの連邦予算に影響をおよぼしている。ブレント原油は1バレルあたり92ドルを割り込んだ。均衡予算には、1バレルあたり96ドルの水準まで戻ることが必要。専門家は要因として、香港の混乱、米ドル高、石油輸出国機構(OPEC)諸国とアメリカの採掘量急増をあげる。

 ブレント原油は2日、1バレルあたり92.2ドルまで下落。半年間で1バレルあたり144.5ドルから38.4ドルまで下落した2008年の金融危機以降、もっとも大きな落ち込みである。今年6月中旬から、ブレント原油の価格は19.9%下がっている。

 ロシア経済・国家行政アカデミー国家規制講座のイワン・カピトノフ助教授はこう話す。「アメリカの産油量の増加によって市場の原油が増えているのに、需要の伸びが弱いことが、価格を下げている。ロシアは懸念せずにいられない」。これ以上の価格下落は、主な消費国であるアメリカにとっても嬉しい話ではないという。それはシェール・オイルの採掘プロジェクトの利益がでなくなってしまうため。

 また、原油価格下落は、アメリカの競合である中国とEUの立場を強める。アメリカのエネルギー情報局(EIA)の予測によると、2015年のアメリカの産油量は14%増。今年の1日853万バレルから、来年の953万バレルまで。また、今年9月のOPEC諸国の産油量は1日3096万バレルと、2年ぶりの水準に達した。

 

ロシアにおける負の影響

 ロシアの連邦予算の歳入部分は原油価格に結びついているため、均衡に負の影響をおよぼす。連邦財務省によると、1バレルあたり96ドルの水準まで戻れば均衡予算になるという。

 ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、アレクセイ・コズロフ氏はこう話す。「2014年の平均原油価格は連邦予算を赤字に陥れないと、自信を持って言える。また、2日の価格より低い原油価格をロシアは提案していない」

 しかしながら、アメリカ系金融会社「シティグループ」の調査によると、均衡予算のためにロシアでは1バレルあたり105ドル、イランでは130ドル、サウジアラビアでは89ドル、カタールでは71ドルの価格が必要だという。

 国連安保理常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)にドイツを加えた6ヶ国とイランの核問題をめぐる合意が、市場に影響をおよぼしている可能性が高い。「ロシアに対する圧力を強めるために、原油価格が操作され、人工的に供給量引き上げが行われているという要因を排除できない」ともコズロフ氏は話す。一方でカピトノフ助教授は、そのような場合、ロシアに対抗する国がOPEC加盟国すべてと話し合いを行わなければいけなくなる点を指摘する。加盟国は今後の価格下落を警戒して、すでに産油量を減らし始めている。

 

解決策の模索

 カピトノフ助教授によると、OPEC加盟国の産油構造では、今の価格水準警戒を証明する、重要な変化が起こっている。特にサウジアラビアは、産油量を減らし、1バレルあたり100ドル付近の価格に戻そうと計画している。「今後1バレルあたり90ドルを割った場合、OPEC加盟国は全体的なクォータ(生産割り当て)を減らそうとするかもしれない」。OPEC総会はウィーン本部で11月27日に行われるが、市場で良くない状況が続けば、臨時会議招集の可能性もある。

 ロシアの大手証券会社「フィナム」のアナリスト、アントン・ソロコ氏は、米ドル高も影響をおよぼしていると話す。特にアメリカ連邦準備制度(FRB)は、量的緩和を終了し、2015年に利上げを開始することを計画している。ヨーロッパ中央銀行(ECB)は緩和開始の用意について発表しているのみ。「金、銀、その他の非鉄金属でも、米ドル指数の世界的な上昇によって価格下落が起きている。米ドル指数は2010年以来最高になっている」

 ユーラシア最大の石油消費国である中国の経済成長に悪影響をおよぼしかねない香港のデモが、原油価格を圧迫していると、コズロフ氏は考える。投資家は中国の石油消費の減少を評価しながら、すでに価格に予測分を組み込んでいるという。

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