ノバテクはヤマル工場の液化天然ガス生産量の5%を販売することを決定した。=Press Photo
ノバテクはヤマル工場の液化天然ガス生産量の5%を販売することを決定した。事情を知る消息筋がこれを伝えている。年間82万トンのLNGを販売するのは、有限責任会社「ヤマルLNG」のシンガポールの完全子会社「ヤマル・トレード」の予定。ノバテクはこの情報についてコメントしていない。
プロジェクトの割り当て
「ヤマルLNG」は、ヤマル半島北東の南タンベイ・ガス田の開発と、年間1650万トンの能力を持つLNG工場のプロジェクト。証明済みのガス備蓄量は約9070億立法メートル。プロジェクトには、サベッタ村の海港および空港などの交通インフラの創設も含まれる。プロジェクトを実施しているのは有限責任会社「ヤマルLNG」。出資比率は「ノバテク」60%、フランスの「トタル」20%、「中国石油天然气集団公司(CNPC)」20%。
ヤマルLNGは以前、LNGの93%の販売について契約を結んでいた。その内訳はスペインの「ガス・ナトゥラル・フェノーサ」(年間250万トン)、CNPC(300万トン)、トタル(400万トン)、スイスの「ノバテク・ガス&パワー」(286万トン)、イギリスの「ガスプロム・マーケティング&トレーディング」(300万トン)。5%を計算に入れると、スポットにおける契約済みのLNGの割合は工場能力の98%強になる。
アナリストは以前、新たな株主募集のために、ノバテクが100万トンのLNGを未契約で残すと考えていた。ノバテクの幹部は、ヤマルLNGの資本9%の売却について協議を行っていることを明かしている。候補になっているのは中国、日本、インドの会社。アメリカによるノバテクへの制裁は、この協議の行方に負の影響をおよぼした。インドの国営石油会社「ONGC」が株式取得計画を断念したことが、インドの新聞「ビジネス・スタンダード」の9月29日の報道で明らかになった。
ONGCは、インドのペトロネットLNG、インディアン・オイルとともに、9%の株式取得について協議していたが、プロジェクトのリスクを考えて取り止めた。ただ、正式な連絡はまだONGCから行われていない。
ノバテクの懸念事項
市場関係者によると、ノバテクは現在、純粋な資金的投資家を呼び込むことについて考えているという。現在の条件下ではロシアと中国の投資基金、プロジェクトへの出資に関心を示していたガスプロムバンクなどをあげることができる。
ヤマルLNGがスポット用にガスの大部分を残す決定をしたことは、世界のトレンドに合っていると、イギリス系エネルギー市場調査会社「ICISヘレン」LNG部のロマン・カジミン部長は話す。例えば、アメリカの「シェニエール」は、年間2700万トンの能力を持つサビーン・パスとコーパス・クリスティのLNG工場で、500万トン、すなわち約20%のスポットでの販売を計画した。一方で、スポットについて計画できるのは、生産開始後、長期契約の義務終了後のみだという。「現在の資金問題を考えると、ヤマルLNGが計画通りに2017年に供給を開始できるという確信を今のところ持てない」とカジミン部長。欧米の制裁による資金調達の高騰は、予定されていたプロジェクトの投資額270億ドル(約2兆7000億円)超過を招く。そうなると、ヤマルLNGには長期契約の罰金が科せられる可能性もある。
*以下の記事を参照
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