「ちょっと気が向いたら、丸亀いこう!」

キリル・ラグツコ撮影

キリル・ラグツコ撮影

モスクワは今年、秋の訪れがやたらと早い。肌寒い秋風が芯まで貫くような日曜日の夕方、ふと通りすがりのうどん屋に立ち寄ってみた。「いらっしゃいませ~」と、暖かな湯気がフツフツと立つオープンキッチンの奥から、店員の元気一杯な声が響き、店内はお客さんで賑わっている。ここは、モスクワ中心部のピャトニーツカヤ通りにある、「丸亀」。

早くも3号店オープン 

 休日はもちろん、平日もおなかを空かせたお客さんの長い行列が目立つ「丸亀」は、オープンから1年もたたないうちに、すでに2号店・3号店を開店し、10月にはさらに5号店まで店舗を増やす予定だ。サンクトペテルブルクでもすでに、開店の準備が始まっている。

 メニューは日本のものとわずかながら異なっている。「二つのメインディッシュを置いているところが、大きな違い」と、チェーン副社長の東山よしとさんが説明してくれた。ロシアはスープ文化が発達している上、肉食文化でもあるため、ノウハウであるうどんはスープとして出し、それに追加する形で本格的などんぶりメニューを提供しているそうだ。

 

ロシア人の嗜好に合わせ新メニューも 

 最近の若い人の間のヘルシー思考の発達に合わせ、日本のメニューにはないサラダを数種類置き、日本のお結びの変わりには人気のロール寿司を作っている。ロシアではあまりみないドリンクバーや、無料の日本茶も大人気。

 「食材は、つゆのベースとなる醤油や、豚骨スープの隠し味など以外はすべて現地のものを使い、日本よりも手作りしている部分が多い」と東山さんは教えてくれた。また、お客さんの要望に答えるようにメニューは常に進化され、10月からスタートする新メニューには、大人気の豚骨うどんを赤味噌でアップグレードした「赤豚骨うどん」や、鉄板で焼き上げる「焼きうどん」など、計12品が新登場する。

モスクワに「丸亀製麺」が3店オープンした。場所は、ピャトニツカヤ通り、スシェフスカヤ通り、及びレニングラツキー通り。地図:Google Maps

オープンキッチンシステムも好評 

 オープンキッチンシステムも、ロシアではまだまだ新しい。目の前で焼きあがるお肉や、湯気が立つうどんが煮あがるのを見ていると、食欲が刺激される上、食べるまでの待ち時間も楽しくなる。調理師とお客さんの間の、何気ない会話も生まれたりする。パフォーマンス要素が加わったことで、その分従業員のトレーニングに時間がかかるが、「お客さんにおいしそうだなと思ってもらい、安心して食べてもらえるのが一番大事」と、東山さんは言う。

 店内の空間作り・雰囲気作りも工夫されている。商品価格が比較的安いファーストフード店だからこそ、「オシャレ」と思えるような、ポップでカジュアルなデザインにしている。東山さんによると、店舗ごとにデザインを変えることで、「ここは悪かったが、ここは逆に良かった。こういう方向に上昇できる」などと、新店舗の空間作りの参考にしているそうだ。

 

「従業員が満足しなければ、お客様に満足してもらうことはできない」 

 「丸亀」ではお客さんのみならず、従業員も楽しめるような職場の環境づくりをしている。「従業員が満足していないのに、お客様に満足してもらうことはできない」と、東山さんは言う。実際、5月から「丸亀」で働いているマリアさん(21)も「「本物」の日本を探していたから、ここに来た。作業のスピードが高くて大変だけど、同時にそれがとても楽しい」と、笑顔で話してくれた。従業員を雇う時に重視しているのは、人間性だそうだ。「偉くなればなるほど、お客様に一番近いところで仕事をしなければいけないと教えている」と言う東山さん自信も、店内にいるときはテーブル拭きも、席案内もしている。

 

「本場の味が楽しめる貴重なレストラン」 

 さて、肝心のお客さんの声はどうなのか。常連客のパーベルさん(21)は、同級生に丸亀を紹介するために来たそうだ。「モスクワで有数の、日本人が経営し、本場の味が楽しめる貴重なレストラン」と語った。家族連れできたエカテリーナさん(29)は、「2歳になる息子にも安心して食べさせられる」と言い、今度はおばあちゃんも連れて来るそうだ。今回が初めてのポーランド人のアリシアさんは、「早くておいしい。今度は、新号店に行ってみたい」と笑顔を見せた。

 「ちょっと気が向いたら、「丸亀いこう!」と思えるレストランにしたい」と東山さんは言う。丸亀の人気の裏には、スタッフの行き届いた温かい心遣いがあるのだった。

 よし!今度、また来よう!

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