満足なのは大手小売業者だけ

パスカル・ラミーWTO事務局長とロシアの経済開発貿易省貿易交渉局のマクシム・メドヴェドコフ局長(右) =AP通信撮影

パスカル・ラミーWTO事務局長とロシアの経済開発貿易省貿易交渉局のマクシム・メドヴェドコフ局長(右) =AP通信撮影

ロシアが世界貿易機関(WTO)に正式に加盟して1年が経過したが、その恩恵を強く感じているのは大手小売業者に限られているようだ。アメリカの格付け会社「ムーディーズ」の専門家が、このような調査報告を行った。

 輸出業者の期待は、今のところかなえられていない。ロシアの企業に対しては、これまでと変わらず100項目ほどの制限がある。中でも苦しんでいるのが農業と軽工業だ。だが国内市場の保護と同様、ロシアの輸出が成長する可能性もあるという。

 

ムーディーズ:「効果出るまであと 35年」 

 ムーディーズの専門家の意見では、ロシアの会社が外国の市場に楽に参入し、法の統一がロシア経済の信用取引のイメージに良い影響をもたらすまでに、あと 3~5年はかかるという。

 ムーディーズのアンケートの回答者のうち、68%がいかなる変化も実感していないと答えた。またWTO加盟について否定的な評価 をしたのは17%、肯定的な評価をしたのは15%。どこよりも恩恵を受けたのは小売業者・輸入者、また消費市場の国際的なチェーンの販売業者だった。これ らの企業の格付けは1年で大きく上がったという。だが、新たな市場へのロシア製品の参入は、国外の厳しい経済状況が障壁となっている。

軽工業と農業の苦戦 

 ロシアは18年の多国間協議の末、157ヶ国目のWTO加盟国になった。主な約束事の中には、ロシアが輸入関税の平均額を、10%から7.8%に段階的 に下げるというものがある。ロシアの専門家は、国内市場向けの分野が直面しうる大きな問題を予測していたが、一部が実際に起きた。

 軽工業が苦戦しているの もさることながら、「価格競争の不足と国家支援への依存」を特に感じているのは農業だ。そのため食品(主に乳製品)の輸入は5~8%増になり、衣服 と靴のそれは12.8%増になった。

 

農業支援には可能性あり 

 とはいえ、農業支援には大きな可能性がある。WTOの協議ですでに合意されている農業分野の補償金は、最大で年間90億 ドル(約9000億円)で、2017年までに45億ドル(約4500億円)に徐々に減らされることで合意している。

 ただ今のところ、支払いは行われていない。国 には別の市場保護策もあるからだ。例えばアメリカ、ブラジル、EU産の生きた豚肉は、抗生物質を使用していることが今年問題になったことから、ロシアへの輸入が 禁止された。

 

自動車は廃車税が焦点 

 国内の自動車産業は予想していたほどの影響は受けておらず、輸入車は昨年9月から減少している。ただし状況は変化しつつある。

 EUは7月、ロシアが輸入 車に不当な廃車税をかけているとして、WTOに提訴。EUとロシアが協議で合意にいたらなければ、WTOは廃車税を差別的だと認める可能性が高い。そうな ると国内の自動車メーカーにも適用されるようになり、カマ自動車工場1社だけでも年間3億~5億4000万ドル(約300~540億円)の負担になると、 ムーディーズが試算。また9月からは、国内市場がより開放されるようになり、5100品目の輸入関税が1~3%引き下げられる。

 

「加盟後への準備不足」 

 専門家はロシアのビジネスの利益がさほど守られていないと指摘し、カザフスタンとベラルーシのWTO加盟を促すとともに、紛争解決の手続きを理解できる有資格人材の不足を補うよう呼びかけている。

 「ロシアの企業や役人は、WTO加盟の影響すべてに対する準備を、完全に行っていないようだ」 と、イギリスの調査会社「グローバル・カウンセル」の報告書に記されている。特にロシアには、WTO本部の常任代表がいない。

 「ロシアの製品に対して 100以上の規制策がある。主に金属産業と化学産業の製品に対する反ダンピング措置だ」と、ロシアの法律事務所「ゴルツブラトBLP」のウラジーミル・ チキン氏は話す。EUは小麦、また中国、メキシコ、インドはパイプとスチール、そしてアメリカとオーストラリアは肥料に対して輸入規制をかけている。規制 が重くのしかかっているのは、ロシアの鉄鋼会社「セヴェルスタリ」とNLMK、化学会社「フォスアグロ」だ。

 

記事全文(露語)

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