中国政府は人民元を金本位にする可能性がある。 =AP通信撮影
中国人民銀行はドルを基軸通貨とした人民元相場をやめ、金本位制にすることを真剣に考えているとの報道が、7月初めに流れた。この情報が正式に認められているわけではないが、実行されれば人民元が弱くなり、中国経済を不安定にし、さらには新たな世界経済危機につながる可能性があるため、専門家はすでに警告を発している。
中国政府の金本位制回帰案は、人民元を強くし、その投資媒体としての魅力を高めるための戦略的措置というだけでなく、世界、特にアメリカに対して、中国がリスクを犯してドル本位制から離脱できるということを証明するためのパフォーマンスでもある。このような動きは誰の利益にもならないどころか、無残な結果を招きかねない。
ロシアの証券金融会社「システマ」の上級エコノミスト、エヴゲニー・ナドルシン氏は、人民元のドル本位制からの離脱が長期的なドルの衰退を加速し、さらに中国の金融政策を著しく制限することになりかねないと説明する。
ロシアの資産管理会社「ウラルシブ」調査部のアレクサンドル・ゴロフツォフ部長もこう話す。「ドルや他の主要な通過に対する人民元の為替レートが、大きく変動するようになる。今の中国経済はそれでなくても大きな問題を抱えている。輸出収入は落ち込み、貨物運送や電力消費のデータが経済活動における著しい減速を示している」。景気が後退している今の中国では、金本位制が状況をさらに悪化させる可能性がある。これは新たな世界経済危機の波を引き起こすリスクである。
ロシアへの影響
人民元の金本位制回帰がロシアに与える影響について、専門家の意見は異なる。ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」の上級エコノミスト、アレクサンドル・オシン氏は、ロシアと中国の経済関係を促進することになるため、良い影響をもたらすと考える。
だが専門家の多くはある危険性を示唆する。中国の内需縮小によって、中国製品が輸出市場にさらに出回ることになるため、ロシアの手強い競争相手になるというのだ。「石油、金属、肥料など、ロシアの原料に対する中国の需要の伸びはより鈍くなる」とゴロフツォフ部長。
「そもそもなぜ中国に金本位制が必要なのかわからない。金の価格と国の保有量に依存することなく、ドルから離脱することは可能なはず」と、ロシアの「アルファ銀行」の上級エコノミスト、ナタリヤ・オルロワ氏は話す。ロシアの金融専門家は、人民元が人気の投資媒体になることには懐疑的で、人民元預金を推奨しようとはしていない。「人民元を投資媒体にするためには、通貨制限を減らし、人民元を使った外国での取引をもっと自由にしなければならない」とナドルシン氏は説明する。
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