三菱自が露EV市場を構築

三菱MiEV =ロイター通信撮影

三菱MiEV =ロイター通信撮影

「三菱自動車工業株式会社」が、ロシアで電気自動車用のインフラを整備する。一方で、ロシアには天然ガス自動車の市場を再開拓する動きもある。

 ロシアの電力会社「ロスセチ」と三菱自動車が、ロシア国内で電気自動車用充電スタンドの設置を目指し、業務提携した。第17回サンクトペテルブルク国際 経済フォーラムで、ロスセチのオレグ・ブダルギン最高経営責任者と、ロシアの三菱自動車総販売代理店「MMC Rus」の高井直哉社長が、提携契約に署名を行った。

 

露電力会社と三菱自動車が電気自動車用充電スタンドの設置を目指す 

 両社は今後、充電スタンドの設置条件や技術基準を作成していくことになると、三菱は説明している。また、研究・技術開発の企画および実現について、共同で概念づくりもしていく考えだ。 

 「我々の戦略的提携は、ロシアで電気自動車市場を素早く成長させるためのもの。このプロジェクトが実現されれば、予測指標に到達し、2020年までに約20万台の電気自動車とハイブリッド車がロシアの通りを走るようになると信じている」と高井社長。

 既存の販売量を見る限り、インフラの課題は重要なようだ。ロシアでの三菱の電気自動車販売は、成功しているとは言い難い。MMC Rusのディーラー網が昨年ロシア全体で販売した「アイ・ミーブ」の台数は、わずか49台にとどまり、しかもそのほとんどを電力会社が購入していた。ロシ アの投資分析会社「インヴェストカフェ」のアナリスト、キーラ・ザヴィヤロワ氏がこれを明らかにした。

 

ロシアで電気自動車販売が伸びなかった理由 

 ロシアで販売が伸びない理由はたくさんある。

 一つ目は、充電スタンドがほとんどないこと。モスクワにはかろうじて二桁存在しているが、地方に行けば一桁になる。

 二つ目は、価格が高すぎること。三菱の電気自動車の新車はロシア市場で180万ルーブル(約540万円)ほどするが、この価格帯は競争が激しい。またこれより安く、フル装備のクロスオーバーSUV、JセグメントのクロスオーバーSUV、Dセグメントのセダンが買えてしまう。「最寄りのスタンドに到達できない可能性のある自動車を、このような価格で買おうという人はいない」とザヴィヤロワ氏は説明する。

 三つ目は、ロシア人の多くが環境問題にさほど関心を持っていないこと。「ロシア人にとって環境は優先順位が一番低い問題であるため、このような自動車を皆で買おうとする動きはない。いかなる環境基準にも適合しないような古い車が、国内にはまだたくさんある」と、ロシアの大手調査会社「自動車統計」のアザ ト・チメルハノフ氏は話す。

 四つ目は、寒冷地であること。電気自動車のほとんどが低温条件下の長距離走行に向いていないため、ロシアでは致命的になってしまう。ガソリン車でも、冬 の寒いモスクワでは、発進前に車を暖めるのに10~15分かかる。また、モスクワ中心部で働いている人の多くが郊外から通勤しているため、1日 50~100キロメートルという長距離を走らなければならない。

 

天然ガス自動車用のガス・スタンド設置を義務化 

 「両社がインフラ整備について合意したのはすでに前進だ。だが電気自動車に対する関心を高めるためには、これだけでは足りない。税優遇措置や補助金などで刺激することが必要」とチメルハノフ氏。日本ではこのような政策がすでに実施されているため、三菱の経験はロシアで類似の法律を整備する際に役立つ可能 性もある。

 ロシア政府はかなり前から、電気自動車販売刺激策やメーカーへの税優遇措置について協議を行っているが、具体的な動きは今のところ特にない。それどころ かドミトリー・メドベージェフ首相は6月初め、ガソリン・スタンドの最小義務サービスに天然ガス自動車用のガス・スタンドを含め、異なる方向に進めてし まった。この政策は、ヨーロッパにおけるロシア産天然ガスの需要の落ち込みと関係している。

 

当面はヨ・モビリもガスと電気両方に対応 

 ロシアで新しいタイプの自動車を製造しようと考えていたミハイル・プロホロフ氏の「ヨ・モビリ」プロジェクトも、充電スタンドがないことから、異なる方 向に進んだ。サンクトペテルブルク国際経済フォーラムでは、そのハイブリッド試作車を一般に公開し、正式な発表会も7月4日に行う予定だ。この自動車には 液化天然ガス用のガス・ボンベが装備されることになっている。だが充電スタンド網が構築されたら、ガス仕様をやめるかもしれない。というのも、各軸に2つの牽引モーターが装備される設計となっているからだ。

 ロシアの自動車市場に天然ガス部門を設ける作業は、ソ連時代から引き継がれている。1980年代半ば、これは優先課題の一つとなっていた。ただし設備は 当時、今やドイツ連邦共和国の一部となっている東ドイツから納入していたのだが。この設備は概念的にも物理的にも古くなっていると、国営天然ガス企業「ガ スプロム」取締役会のヴィクトル・ズプコフ議長は話す。これも2020年までには改修される見込みだ。ガスプロムは試験的なインフラ再建地域をすでに11 地域選定した。

 したがって電気自動車メーカーは2020年までに、ガソリンや軽油だけでなく、天然ガスを燃料とする新しい自動車のメーカーともロシアで競争していかなければならない。