「IT専門家を世代のシンボルに」

=PhotoXPress撮影

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ロシア連邦情報技術・通信省のマルク・シュムレヴィッチ次官に、ITをロシアの非原材料輸出分野でトップに押し上げる方法、IT専門家を若者の人気職種にする方法、外国人に学ぶべきことなどを聞いた。

-通信省はIT分野の輸出量を、軍需産業と同じ水準にまで上げようとしています。これをいかに実現するのでしょうか。

 ロシアの2000年代初めのソフトウェア輸出額は、年間2~3億ドル(約190~290億円)で推移していましたが、昨年は40億ドル(約3900億円)に達したと方々で言われています。ここ数年の平均成長率は年間約20%です。ロシアの昨年の武器輸出額は、150億ドル(約1兆4000億円)ほどです。好条件が重なれば、数年後には軍需産業と比較可能な額になると考えられます。武器輸出の成長の可能性は抜きにしてですが。ソフトウェアの輸出増加自体が目的というよりも、ロシアのIT分野がバランス良く発展し、世界経済にうまく融合していることを示す指標なので重視しているということです。

-ここ10年のロシアの急速な輸出拡大は、「カスペルスキー研究所(Kaspersky Lab)」や「アッビ(Abbyy)」などの大手企業が支えてきましたが、国内の中小企業や新興企業の製品に需要はあるのでしょうか。

 輸出成長率にはロシアへのアウトソーシングの発展も反映されています。これを行っているのは中規模の企業です。製品分野ではここ数年、さまざまなプロジェクトが成功しています。例えば「エクウィド(Ecwid)」(電子商取引のプラットフォームでフェイスブックとの提携が成功)、「プログノス(Prognoz)」(法人用分析システム)、「ディアソフト(Diasoft)」(銀行・保険システムの自動化)など、世界市場で競争能力のある製品を提案しています。これらの企業は新興企業としてスタートし、有望な道を拓きました。問題は、これらの企業がロシアに残ることに興味があるのか、ビジネスの条件がより整っているCIS諸国やアメリカに転籍してしまわないか、ということです。

 

-いかにして引きとめるのでしょうか。

 IT分野の発展により重要な、税優遇措置と人材確保という2つの制度上の措置があります。ロシアでは2017年まで、企業への税優遇措置が行われ、うち90%はIT系です。税率は30%ではなく14%です。ただこれまでの成長率を維持するためには、これでは足りません。現在はこの優遇期間を2020年まで延長することを検討しています。国がしっかりと政策で対応していくことが重要です。「予期せぬ」納税条件の悪化に支払猶予を設けている国もあります。業界が安定するためには、ルールが急激に変わらないことを企業が理解している必要があるからです。

-世界市場では、ロシアのプログラマーが、中国、インド、さらにはアメリカの専門家でも解決できない課題を解決することができると考えられていますが・・・

 ロシアに来れば嫌でも機転がきくようになりますよ(笑)。この競争優位性には、ロシアのアウトソーシング部門が貢献しています。優れたエンジニアを育てていますが、極度に不足しています。ロシアでは労働人口の1%以下しかIT分野で働いていません。アメリカでは4%、ヨーロッパ諸国では3%です。通信省の喫緊の課題は、この職業の人気を高めることです。最近シベリアで開催されたクラスノヤルスク経済フォーラムでは、IT分野の人材問題に関する会議を持ちました。ここには、新興企業からヤンデックス(Yandex)やマイクロソフト(Microsoft)まで、さまざまなIT企業、ITユーザー、ズベルバンク、世界銀行などが参加しました。そしてそこで採決された条件を、我々はすでに導入し始めています。例えば五輪のIT化の強化などです。

 

-アメリカは最近、マイクロソフト、フェイスブック(Facebook)、ツイッター(Twitter)、ドロップボックス(Dropbox)などの創設者がプログラミングの学習の大切さを説明している動画を、ユーチューブ(YouTube)に投稿しました。ロシアはそういったことはしないのでしょうか。

 アメリカの真似はしませんが、こういったことはロシアに必要です。動画は有効な方法のひとつにすぎません。我々の世界的課題は、IT専門家を世代のシンボルにすることです。そのためにはIT関連の番組をテレビで放送し、学校でこの職業の展望について説明し、成功しているIT関係者と対面させ、場合によっては連続テレビ・ドラマの主人公をプログラマーにするといったことが必要になってきます。

 

IT分野の発展計画を作成する際、他の国の成功実績を採用したのでしょうか。

 他国の実績をそのまま導入するということはロシアには必要ありません。ロシアには独自性があり、特有の問題があるからです。それでも、他の国の実績は非常に注意深く観察しています。インドでは外貨建て取引や通貨オプション取引の関連法を自由化する動きがありましたが、これはロシアにとって分析価値のある実績です。ロシアでは今のところ、モチベーションを高めるような効果的な手段がそれほどありません。ロシア企業の開発品の法的保護に関する提案を作成する際には、外国の経験を参考にしていますので、特許戦争への準備などの問題では、「追う者の強み」を発揮できます。インフラ分野では、シンガポールやイスラエルと、テクノパークの設立実績について情報交換しています。ロシアはこの分野で改善点がたくさんあるのです。