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現地生産は“国産”
ロシアが世界貿易機関(WTO)に加盟して半年が経過したが、国産品の競争力の問題を政府は危惧しており、支援対策を始めている。
ロシア連邦経済開発貿易省は2月初め、国家発注でロシアの自動車メーカーを支援していくことを表明した。公用車として国産車のみを購入することを計画している。とはいえ、自動車分野の外国企業はこれを警戒する必要はない。国産車には、国内にある「トヨタ」、「BMW」、「フォルクスワーゲン」、「フォード」の工場で生産された自動車も含まれるからだ。
国家発注で、工作機械中心に国産支援
経済開発貿易省のグレブ・ニキチン副大臣は、重工業の発展が優先課題だと考えている。ただ、これは工作機械製造が中心だ。「ロシアには工作機械製造がないというのが、ここ数年の一般的な見解になっており、企業は西側諸国に行き、最高とは言えない工作機械を購入している。そのため、しっかりした品質の工作機械はロシアにもあるということを、消費者に示すようにしている。深く干渉するつもりはなく、あくまでも課題は工作機械製造を促すことにある。製造会社にチャンスを与えようとしているし、実際に与えた」。
政府はこのために、軍需産業の発展を中心とした複数のロシア連邦特別プログラムを作成し、今後数年の工作機械の大きな需要成長を確保した。
経済開発貿易省貿易交渉局のマクシム・メドヴェドコフ局長は、国家発注でメーカーを支援することは一般的なやり方だと説明する。「多くの国がこれを実施している。政府の決定がWTOの規定に違反しないよう、監視することだけが我々の課題だ」。
小売業者にしわ寄せ
政府は縫製・製靴会社の支援にも積極的に動いているが、専門家らはこれに疑問を感じている。というのも、政府が小売業者に、国産品30%以上を店頭に並べさせようとしているからだ。現在はどこの店でもこの比率は限りなくゼロに近い。
「支援策の政府案は不十分だ。例えば、製品が完全に外国で生産されている、ザラ(Zara)やエイチ・アンド・エム(H&M)のブランドはどうなるのかということがわからない。店が国産品を増やしてそれが売れなかったら、収入はどうやって確保するのか」とアパレル・ショップ・チェーンのオーナーは話す。
「税優遇装置などでメーカーを支援すべき」
他にも問題はある。ロシアの靴ブランドで、国内に3工場を保有する、ラルフ・リンガー(Ralf Ringer)のアンドレイ・ベレジノイ社長はこう考える。「国産品販売プロセスを誰がどうやって管理するのか。多数ブランドを扱う標準的な店舗では、約2000点が販売されており、説明書を読んで初めてどこの国でつくられたものかがわかる。誰がひとつひとつそれを調べるのかわからない。特別な機関ができたとしても、チェーン店はその気になれば規制をくぐり抜けることだってできる」。
ベレジノイ社長は、支援は役に立つかもしれないが、スタートが適当ではないと考える。国産品の人気を高めるなら、小売業者のビジネスに悪影響を及ぼすような対策から始めるのではなく、自然な流れに沿って行うべきだ、と。
「かつて政府は、商品棚に輸入品が並び、あらゆる物がそろっているのに、なぜ国産品が必要なのだと言っていた。法的に何ら規制をかけることもなく、自然に流行をつくりだした。今度はそれでロシア製品を流行させ、税優遇装置などの標準的方法でメーカーを支援すればいい」とベレジノイ社長は話す。
専門家は、メーカーの問題に着目したのは良い傾向だが、国家発注が増えたからといって、現状の劇的変化を期待している人は多くないと考えている。
*コメルサント・ジェニギ誌とエクスペルト誌の記事を参照
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