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とはいえ、「張り合える」からといって「無敵」だとは限らない。少なくとも、ロシア・チームの一つの種目は、問題があるように思える。それは、おそらくお察しの通り、男子シングルのこと。ロシア勢ではもっとも成績の好かったセルゲイ・ヴォロノフは、東京でショートプログラムとフリースケーティングのいずれも5位となり、マクシム・コフトゥンは、ショートが8位でフリーが6位だった。10年余り「銃眼」を塞いでいたのは、エフゲニー・プルシェンコ。20世紀と21世紀のはざまには、アレクセイ・ウルマノフ、アレクセイ・ヤグディン、イリヤ・クリムキン、アリクサンドル・アブトとともに。のちには、事実上、独りで。この状態は、全体として、ロシアのフィギュアスケート界の当時の指導部を満足させていた。そうした状況のなかで、二世代のロシアのシングルの選手たちが、事実上、姿を消した。留まった選手たちは、精神的なショックを受け、明らかなモチベーションの問題を抱えた。
2000年代初めの世代から、せめて欧州選手権のメダルに手が届いたのは、メニショフとヴォロノフの二人だけで、彼らは、かなり熟年の(フィギュアスケーターとしては)選手だった。しかも、「おかげで」ではなく、「にもかかわらず」。ロシアは、これらの選手にけっして期待をかけていなかった。驚くべきことに、27歳のヴォロノフと32歳のメニショフは、今も現役を続けている。メニショフと同い年で二度のオリンピックチャンピオンであるエフゲニー・プルシェンコも、最近、ロシア・チームのために競技を続ける意向を表明した。さらに驚くべきことに、三人とも、マクシム・コフトゥンやアルトゥール・ガチンスキー(ちなみに、やはり、タイトル獲得者で、かつての欧州および世界選手権入賞者)やアディヤン・ピトケエフといったもっと若いライバルたちよりも、面白い滑りを見せている。
王座への行列
女子シングルでは、個人および団体の世界選手権が示したように、ロシアが桁外れに強い。オリンピックチャンピオンのアデリナ・ソトニコワやユリア・リプニツカヤが以前の水準を回復しなくとも、彼女らに替わる選手がいる。目下、ロシア・チームの新たな絶対的リーダーは、女子シングルで最も難度の高いジャンプの技(両プログラムにおけるトリプルアクセルを含む)をそなえた世界チャンピオンのエリザヴェータ・トゥクタミシェワである。しかも、彼女は、女子にとって避けられない年齢によってスタイルが変わるプロセスを、すでに通過している。エレーナ・ラジオノワとアンナ・ポゴリラヤは、いつでも彼女の穴を埋められる。エフゲニア・メドヴェジェワとセラフィーマ・サハノヴィチ(最近の世界ジュニア選手権のチャンピオンと銀メダリスト)は、「許された」競技年齢に入ろうとしている。2012年の世界準チャンピオンのアリョーナ・レオーノワや2015年の冬季ユニバーシアードの銅メダリストであるマリア・アルテミエワといった年長の選手もいる。
揺るぎないペアと予断できないアイスダンス選手たち
ペアの状況も、悪くない。二度の欧州チャンピオンである川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組は、年齢や怪我を克服しつつ必死に頑張っている。とはいえ、二人は、まれに見る闘士なので、おそらく、もう一~二シーズン競技を続けよう。ソチ五輪で金メダルに輝いたタチアナ・ヴォロソジャル&マクシム・トラニコフ組やクセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ組も現役を続けている。さらに、エフゲニア・タラソワ&ウラジーミル・モロゾフ組やクリスチナ・アスタホワ&アレクセイ・ロゴノフ組といった興味深いジュニアの選手たちも成長してきた。
アイスダンスは、はるかに予断を許さない状況といえる。最大の問題は、オリンピックチャンピオンのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロヴィヨフ組が現役に復帰するかどうかである。二人がいるかいないかで、ロシア・チームはまったく別物となり、優先順位も変わってくる。仮に復帰しないならば、おそらく、エレーナ・イリイヌィフ&ルスラン・ジガンシン組が、「ペア№1」(あらゆるプラスとマイナスをそなえた)となろう。もしも彼らにリーダーの重責が果たせないならば、ジュニアから上がってきたアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組が控えている。とはいえ、現状から見て、ロシアのダンスのペアにとって考えられる最高の成績は、欧州選手権の銀メダルであろう。次の世界選手権で三位以内に入るのは、難しいかもしれない。
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