「カザン・アリーナ」スタジアム =タス通信撮影
何事も特大スケールで
世界的なイベントを特大スケールで開催するのは、ロシアの習慣となっている。どうやら大陸的な気質がそうさせるらしい。ソチでは来年、これまた高価な冬季五輪が開催されるが、この準備に配分される予算の総額は現在、約500億ドル(約5兆円)と評価されている。ちなみに2012年ロンドン夏季五輪は当 初、95億ドル(約9500億円)と試算されていたが、結果的に143億ドル(約1兆4300億円)かかっている。
2018年ロシアW杯の予算は、6600億ルーブル(約1兆9800億円)だ。アメリカの格付け会社「スタンダード&プアーズ」の評価による と、2010年南アフリカW杯は”わずか”60億ドル(約6000億円)で済んだが、当初予算はさらに少ない40億ドル(約4000億円)だった。また来 年行われるブラジルW杯は現在のところ、90億~136億ドル(約9000億~1兆3600億円)と試算されている。
ロシア連邦予算はW杯に3360億ルーブル(約1兆80億円)配分しており、残りは地域予算と民間投資家でまかなおうとしている。政府は開催地のインフラ整備(ホテルやその他の施設)に、民間人の協力があればと考えている。
スタジアム1面に150億ルーブル
ロシアW杯の試合は、モスクワ、カリーニングラード、サンクトペテルブルク、ヴォルゴグラード、カザン、ニジニ・ノヴゴロド、サマーラ、サランスク、ロ ストフ・ナ・ドヌ、ソチ、エカテリンブルクの11都市の12スタジアムで行われる。予算の多くが12面の既存のスタジアムの改築と新たなスタジアムの新 築、さらに113ヶ所の参加国チームの練習施設の創設に費やされる。
現在、ソチ、カザン、サランスク、サンクトペテルブルク、そしてモスクワの「スパルタク」スタジアムの5面のスタジアムの建設が行われている。カザンで は2013年ユニバーシアード(国際学生競技大会)が、またソチでは2014年冬季五輪があるため、両都市の施設は優先的な完工を目指している。
これらの スタジアムの建設費用は、150億ルーブル(約450億円)に制限されている。例えばカザン・スタジアムは、145億ルーブル(約435億円)かかった。 ヴィタリー・ムトコ・スポーツ相によると、サマーラとサランスクのスタジアムがそれぞれ120億ルーブル(約360億円)、ヴォルゴグラードが151億 ルーブル(約453億円)、エカテリンブルクが125億ルーブル(約375億円)になるという。
新築か改築か
サンクトペテルブルク市のクレストフスキー島(十字架島)で2007年に建設が始まった、サッカー・クラブ「ゼニト」のスタジアムは、ムトコ・スポーツ 相やW杯主催者をもっとも悩ませている案件だ。予算は何度も上方修正され(現在すでに340億ルーブル≒1020億円、元請は「インシュトランスストロ イ」)、完工日も何度も延期されている。現在業者側は、期日の2016年半ばには完成させることを約束している。メディアの報道によると、現在の進捗は約 35%だという。この新しいスタジアムの収容人数は試合観戦用で6万8000人、最大収容可能人数は8万4000人だ。
モスクワ市の既存の「ルジニキ」スタジアムをどうするのかについて、ムトコ・スポーツ相は、市政府がまだ決めていないことを明らかにした。スターリン時 代に建設されたスタジアムには、新築、全体改築、部分改築の3つの道がある。
FIFAは既存のスタジアムを取り壊し、同じ場所に新たなスタジアムを建設する案を支持しているが、モスクワ市政府はこの歴史的建築物を保存(一部でも)したいと考えている。公開株式会社「ルジニキ」のアレクサンドル・プロニン社 長が、「ガゼータ・ル」紙に伝えたところによると、プロジェクトの見積額は10億ドル(約1000億円)で、改築の元請業者は今年末までに選定されるという。
安全性が一番大事
スポーツ施設以外にも、イーゴリ・シュワロフ第1副首相は、W杯の参加者や観戦者の安全確保に300億ルーブル(約900億円)を投じる意向を明らかにしている。
また、モスクワとカザンの間の高速鉄道建設計画が、W杯プロジェクトの中心になる可能性もある。ロシア鉄道のウラジーミル・ヤクーニン社長によると、このプロジェクトには9280億ルーブル(約2兆7840億円)の投資が必要で、うち6500億ルーブル(約1兆9500億円)を国家が負担することになると いう。しかしながら、W杯の予算にこの額は含まれていないし、この鉄道建設の実施期日もまだ決定していない。
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