ソ連映画を代表する男性キャラ10人

カルチャー
アレクサンドラ・グーゼワ
映画のタイトルを言えば、彼らの映像が蘇る。彼らの名前を言えば、映画のタイトルが思い浮かぶ。

1. ドラマ『春の17の瞬間』より、スティルリッツ

 スティルリッツは、ナチスドイツの権力中枢に潜入したソ連のスパイである。ヴェチャスラフ・チーホノフ演じる主人公は冷静にして忍耐強く、視聴者から抜群の信頼と尊敬を勝ち取ったキャラクターとなった。

 1973年に放送されて以降、スティルリッツが登場する膨大な量のアネクドートが生まれたのは、絶大な人気の証である。

2. 『作戦コード“ウィ”とシューリクのその他の冒険』より、シューリク

 ソ連の模範的な学生である主人公が大衆に受けたのは、誰にも似たような知人がいたせいであろう。誠実で、やや純朴で、少々変人っぽさもある。

 このコメディ・シリーズで主演したアレクサンドル・デミヤネンコにはこうしたキャラクター・イメージが固定してしまい、他には目立つ出演作に恵まれなくなってしまった。以後は終生、街中でも「シューリク」と声をかけられていた。

3. 『酒の密造者』より、トルース、バルベス、ブィヴァールィ

 ゲオルギー・ヴィーツィン、ユーリー・ニクーリン、エヴゲニー・モルグノフが天才的に演じたトルース(臆病者)、バルベス(のらくら者)、ブィヴァールィ(海千山千)の飲んだくれ小悪党トリオは、複数の作品に、必ず3人組で登場する。

 それぞれが、アダ名通りの印象深いキャラクターだ。このコミカルなトリオの記念像は数か所にあり、モスクワには彼ら3人の俳優を扱う博物館まで存在する。

4. 『12の椅子』より、オスタップ・ベンデル

 ソ連文学きっての冒険家にして、際立ったカリスマと含蓄あるセリフの主。本作は2度映画化され、オスタップ・ベンデル役について、ファンは今でも熱烈なアンドレイ・ミローノフ派と、熱狂的なアルチル・ガミアシュヴィリ派に分かれている。さあ、あなたはどっち派かな?

5. 『自動車に注意』より、ユーリー・デトチキン

 ソ連のロビン・フットとも呼ばれるのが、富者から盗み貧者に与えたユーリー・デトチキンだ。良心の泥棒(インノケンティ・スモクトゥノフスキーの名演が光る)は大衆のシンパシーを得たのはもちろん、犯人を捕まえるべき警察官にも好感を抱かせたキャラクターである。

6. 『幸運の紳士たち』より、助教授

 幼稚園の先生である平凡な男は、実はギャングのボスに瓜二つだった。警察は彼に、件のボスに扮して刑務所に潜入し、ギャング団のメンバーに接触して、盗まれたアレキサンダー大王の兜の行方を探るよう、依頼した。

 エヴゲニー・レオーノフ演じるキャラが発した「口を裂いて目を潰してやるぞ」というフレーズは、ミームとなった。

7. 『集合場所は変えられない』より、グレブ・ジェグロフ

 偉大な詩人ヴラジーミル・ヴィソツキー演じるソ連の刑事は、公正と勇気、豪胆さ、そして悪に対する不屈の闘志のお手本ともいうべきキャラクターだ。

 シリーズがTVで初放映された頃、誰もがTVに釘付けになり、国内では犯罪率が落ちたと言われるほどだ。

8. 『ダルタニャンと三銃士』より、ダルタニャン

 アレクサンドル・デュマの冒険小説はロシアで非常に人気が高く、ほとんど自国文化扱いされているほどである。ソ連時代の映像化作品の人気ぶりもまた破格で、もはやミハイル・ボヤルスキー以外の役者で主人公をイメージすることは不可能になってしまっている。ボヤルスキーとダルタニャンのイメージは切っても切れないものとなり、彼は劇中の様々な印象深いフレーズとも連想されるようになった。

9. 『運命の皮肉 あるいはいい湯を』より、ジェーニャ・ルカーシン

 アンドレイ・ミャフコフほど、見事に酔漢を演じられるソ連俳優はいない。この大人気悲喜劇映画のジェーニャ・ルカーシン役が、その真骨頂である。

 40近い独身男は新年を前に痛飲した挙句、間違えて見知らぬ女性の自宅に上がり込んでしまう。当初は彼女にひどく嫌悪されるが、次第に2人の関係に変化が生じてくる。

10. 『シャーロック・ホームズとワトソン博士の冒険』より、シャーロック・ホームズ

 ワシーリー・リヴァーノフが演じたソ連版シャーロック・ホームズは、ソ連国外でも傑作として評価されている。原作者アーサー・コナン・ドイルの故郷イギリスでも、作品が評価され大英帝国勲章を授与された。

 タリンとペテルブルグをロンドンに「見立てた」ロケーションも、意外にもハマっている。