今すぐAmazon Prime Videoで見られるロシア映画5選

カルチャー
ニコライ・コルナツキー
 Prime Videoはロシア映画も豊富だ。ドキュメンタリーの古典的傑作『カメラを持った男』(ジガ・ヴェルトフ)から、オスカーにノミネートされた戦争映画『祖国のために』(セルゲイ・ボンダルチュク)まで。どれを見るか、選択に迷うのは間違いない。そこで、ファンタジーから恋愛系まで、近年の傑作からおススメの作品を選んでみた。

『スプートニク』(2020年)

 本作は、アンドレイ・タルコフスキーの『ストーカー』や『惑星ソラリス』といった瞑想的作品を連想させる一方、路線は決定的に違う。『スプートニク』は、不気味なファンタジック・スリラーだ。むしろ、ホラーと言うべきか。

 作品コンセプトは、おおよそ、ソ連における『エイリアン』といったところだろう。舞台は1983年。宇宙ミッションの最中に異常事態が発生、帰還時に宇宙飛行士1人が死亡、もう1人は研究のために秘密の研究所に幽閉された。ヒロインの神経生理学者・タチヤナは、ミッションの異常事態を解明する使命を帯びる。映画のタイトルは、ロシアでも国外でも共通の『スプートニク』。1957年に世界初の人工衛星が打ち上げられた後、「随伴者」を意味するこの語は世界共通になった。だが映画の中で、この語は実に不吉な意味合いを持つ。

 本作のアメリカでのリメイク権は、ロバート・パティンソン主演の『バットマン』を監督したマット・リーヴスが買い取った。オリジナル版の監督エゴール・アブラメンコは現在、アメリカでメリッサ・バレラ(『スクリーム6』)主演のホラー『God’s Country』を制作中。 

『ロシアン・スナイパー』(原題は『セヴァストポリをめぐる戦い』)、(2015年)

 リュドミラ・パヴリチェンコは、史上最も戦果を挙げた女子スナイパーである。大祖国戦争中、彼女は309人のナチスを射殺した。本作は、そんな彼女を描いている。敵スナイパーとの対決の他、大規模な戦闘の場面や、エレノア・ルーズベルトとの不思議な友情、そして印象的な恋愛パートもある。

 戦時中、人は特に愛と心の支えを求めるものなのだ。パヴリチェンコ役は、ロシア最高の女優の1人、ユリヤ・ペレシルド。同時に、彼女は最も勇気ある女優でもあるだろう。クリム・シペンコ監督の映画『挑戦』の撮影のために宇宙に飛んだのは、彼女である。

 本作のサウンドトラックも、特筆しておくべきだろう。作中、ヴィクトル・ツォイの『カッコウ(Кукушка)』の編曲バージョンが、ポリーナ・ガガーリナによって歌われている。そして…『ハンガー・ゲーム』でも流れた「スラブの子守歌」も!実は、2つの映画はいずれも作曲家のエフゲニー・ガルペリンが参加しているのだ。ガルペリンは他にもリュック・ベッソンの『マラヴィータ』、アンドレイ・ズビャギンツェフの『ラブレス』、ニコール・キッドマンとヒュー・グラントが出演したドラマシリーズ『フレイザー家の秘密』の音楽も担当している。 

『アンチグラビティ』(原題は『昏睡』)、(2020年)

 『スプートニク』がロシア版の『エイリアン』なら、『アンチグラビティ』はロシア版『マトリックス』と言えるかもしれない。あるいは、ロシア版『インセプション』か。ストーリーは、昏睡状態に至った人々が、彼らの記憶の断片で構成された異世界に目覚めるというもの。そこで彼らは、死のエージェントとでもいうべきリーパーに襲われる。昏睡世界で死ぬと、現実世界でも死ぬ。昏睡者たちは集団を形成して生き延び、現実世界に目覚めようと奮闘する。

 抵抗する集団の長となった選ばれし者、『マトリックス』のネオに相当する主役を演じたリナル・ムハメトフは、ロシアのファンタジー・アクションの大スターだ。もう1つの代表的出演作『アトラクション 侵略』/『アトラクション 制圧』の2部作では、彼はモスクワに墜落した円盤の乗員の異星人を演じている。

Arrhythmia』(2017年)

 作品が映画祭、評論家、観客の全てに高評価という事例はそれほど多くない。だがボリス・フレブニコフ監督の『Arrhythmia(不整脈)』は、どうやら珍しい例外のようだ。カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭やキノタヴル(ロシア最大の映画祭)で受賞した他、専門メディアからも絶賛され、観客からの反応も極めて好意的。

 地方で勤務する救急医オレグが主人公(アレクサンドル・ヤツェンコが演じる)の、観る者を奮い立たせる映画だ。彼は人々の命を救う一方、愛する妻との関係を修復できない。本作と系統的に近い映画は、イギリスのマイク・リー監督(『秘密と嘘』)の、社会的テーマを扱いかつ抒情的な作品であろう。

『ヒトラーと戦った22日間』(原題は『ソビボル』)、(2018年)

 コンスタンチン・ハベンスキーはロシアを代表する俳優の1人であるが(『ナイト・ウォッチ』、『ウォンテッド』、『裏切りのサーカス』など)、モスクワ芸術座の芸術指導員でもあり、そして本作でついに監督デビューを果たした。 

 この戦争スリラーは、アレクサンドル・ペチェルスキ―(ハベンスキー自身が演じている)の実話をベースにしている。ナチスが労働目的ではなく、抹殺目的でユダヤ人を送り込んだ「絶滅収容所」。ペチェルスキーは、その絶滅収容所で発生した蜂起のうち、最も成功した大脱走劇の指導者だ。この事件は『脱走戦線 ソビボーからの脱出』として1987年にも映画化されており、ペチェルスキー役はルトガー・ハウアーが演じて唯一のゴールデン・グローブ賞を受賞した。

 ハベンスキー監督の本作品では、悪役のSS下士官に見覚えがあるかもしれない。それもそのはず。演じるのは、クリストファー・ランバート(『暗黒の戦士 ハイランダー』など)。ヒールを演じる事は極めて稀なランバートだが、本作では例外的に悪役を引き受けた。

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