1980年代のソ連映画10選

Georgy Danelia/Mosfilm, 1986
 戦争について最も真実を語った映画、アガサ・クリスティの小説の映画化、初のベッドシーンなどを含むソビエト映画。

 1. 『愛と鳩』1985年

 木材工場で働くワシリー・クジャキンは家族とともに辺境の村に住んでおり、ハトの飼育という珍しい趣味を持っている。彼の妻ナジェジダは気難しい性格の女性で、彼の趣味を受け入れずいつも夫を非難している。

 ある日、仕事で怪我をした彼は療養旅行で海に行きライサ・ザハロヴナに出会い、2人は休日のロマンスに落ちる。帰宅時期が来ると、ワシリーは家族ではなくライサの家に戻っていく。

 夫婦関係の難しさを描いたこの悲喜劇は当時の観客に最も愛された映画の一つになった。この映画は、映画の脚本を書いたウラジーミル・グルキンの故郷、チェレムホヴォという町に住んでいたワシリーとナジェジダ・クジャキン夫妻の実話に基づいている。2011年にそこにこの映画の主人公の記念碑が建てられた。

2. 『炎628』1985年

 大祖国戦争に関する最も真実味のある残酷な映画の一つ。映画の舞台は1943年のベラルーシで、観客は10代のフリョーラ(フロリアンの愛称)の目を通して起こるすべての出来事を見る。彼のフィルターを通して私たちは大規模な戦闘や偉大な勝利ではなく、小さき人々の生き残るための戦いを目にする。

 この映画は数々の国際的な賞を受賞し、20世紀の映画界の大きな出来事となった。映画監督エレム・クリモフによると、外国では『炎628』の上映中に救急車が映画館横に待機し、あまりにショックを受けた観客を病院へ運んだという。

3. 『未来からの来訪者』1985年

 5 話構成のこの映画は、ケフィール(乳酸飲料)を求めて店に行っただけなのに遠い未来に行ってしまった少年コーリャ・ゲラシモフの話である。そこで彼は宇宙規模の冒険に巻き込まれ、海賊から宇宙を救おうとする。彼を助けるのが新しい女友、未来から着た少女アリサ・セレズニョワである。

 この映画はキル・ブリチョフの幻想小説『百年の彼方』をもとに撮影された。批評家の中にはこの作品は未来について語っているが、実際には過去について描いていると指摘する者もいる。つまり、この作品はある種ソ連後期の情勢を反映していると言える。

4. 『不思議惑星キン・ザ・ザ』1986年

 工事現場監督のウラジーミル・マシコフは、妻に頼まれてパンとパスタを買いに店に行く。パン屋の側で彼はバイオリン弾きのゲデヴァンという男と出会い、ゲデヴァンは、自分は宇宙人であると主張する裸足の男がいるとウラジーミルに告げる。

 自分の主張を証明するために、見知らぬ男は彼らに「移動装置」という珍しい装置を見せる。ウラジーミルはその男は気が狂っていると考えるが、誤って装置の電源を入れてしまい、彼とゲデヴァンは別の惑星の酷暑の砂漠に転送されてしまう。

 このコメディはロシア語圏の文化に非常に大きな影響を与え、映画の多くの単語や表現は映画を「飛び出し」日常会話に使われるようになった。

5. 『アッサ』1987年

 主人公は看護師のアニカで、映画で起こる出来事の数年前に彼女の患者であった主要な犯罪組織のボスで金融詐欺師のアンドレイ・クルィモフと付き合い始めた。ある冬の日ヤルタで恋人を待っていたアニカは、バナナンというあだ名の男に一晩部屋を借りると、その後どんどん恋人から心が離れていき、新しい知人と一緒に時間を過ごすようになる。一方、クルィモフは独自のやり方で彼女を奪い返そうとし、それと同時に貴重なグァルネリのバイオリンの窃盗計画を立てる。

 この映画は1980年代後半に起こったペレストロイカとロシアンロックの主要なシンボルの一つとなった。ロックバンド「キノー」のヴィクトル・ツォイから「ポスレドニー・シャンス(ラスト・チャンス)」のセルゲイ・ルィジェンコまで、当時の人気ロックミュージシャンが数多く参加している。

6. 『テン・リトル・インディアンズ』1987年

 アガサ・クリスティの推理小説の映画化。見知らぬ人物の招待で、絶海の孤島に集まったお互いを知らない人たち。しかし、彼らが到着すると巨大な邸宅の所有者はそこにはおらず、彼は自分の声を録音したテープで客人たちをそれぞれ殺人の容疑で告発する。誰も自白はしないが、客たちは次々と死に始め、もう後戻りはできない。

 これは、小説の原題をそのままタイトルにした最初の映画である。多くの批評家は、アガサ・クリスティの推理小説のソ連式解釈は、この小説の数少ない忠実な翻案の一つでだと指摘している。さらに、これはソ連初のスリラー作品だと言える。

7. 『針』1988年

 麻薬使用の影響を描いた数少ないソ連映画の一つ。モロという名前の主人公は故郷アルマ・アタに戻り、そこでかつて愛した少女ディナのことを思い出す。しかし、彼女に会うと彼女が麻薬中毒者であることが分かり、彼女が薬物中毒から抜け出すのを助けることにする。何度かの試みが失敗に終わった後、主人公は問題の根源を取り除かなければならないと理解し、麻薬のディーラーを探し始める。

 この映画の主人公はロックバンド「キノー」の伝説的なミュージシャン、ヴィクトル・ツォイとロックバンド「ズヴーキ・ムー」のピョートル・マモノフが演じた。これは彼らの映画デビュー作だった。この映画のサウンドトラックのほぼすべてが「キノー」によって書かれ、「太陽と呼ばれた星」という曲はソ連でカルト的楽曲となり今日までヒットし続けている。

8. 『小さなヴェーラ』1988年

 物語の中心は、高校を卒業するかしないかだが、すでに喫煙し、酒を飲み、ディスコに通っている少女ヴェーラである。ヴェーラの両親は彼女のそのような生活を理解できず、ヴェーラが20ドル持っているのを見つけたとき(これはソ連時代犯罪であった)、主人公が非常に恐れている兄を使って彼女を脅迫し始める。

 あるディスコでヴェーラはセルゲイに出会い、この予期せぬ出会いが嵐のようなロマンスに発展する。しかし、彼らの関係は両親にとって認められるものではなく、家族を崩壊へと導く。

 この映画は特にその大胆さにおいて注目に値する。なぜなら『小さなヴェーラ』はソ連で初めて性行為がオープンに描かれた映画になったからだ。そのせいで、この映画はペレストロイカと解放の一種の象徴となっている。売春、犯罪、家庭内暴力など、それまでタブーだったテーマがこの映画の公開後、ソ連の映画館のスクリーンに登場し始めた。

9. 『犬の心臓』1988年

 ミハイル・ブルガーコフの同名小説の映画化。シャリクという名の野良犬がプレオブラジェンスキー教授の家に迷い込み、そこでいつの間にか人間の脳下垂体を犬に移植する実験に使われることになる。少しずつシャリクは人間らしくなっていくが、これは誰にとってもあまり気持ちがよいとは言えない多くの結果をもたらす。

 この映画はボリシェヴィズムに対する鋭い風刺である。この話は、人類を根本的に変えようとする共産主義支持者による試みは失敗であったという寓話として解釈されることが多い。長い間この中編小説はソ連で発禁となっており、最初の公式版が出版されたのは映画初演のちょうど1年前の1987年であった。

10. 『令嬢ターニャ』 1989年

 映画の出来事は、仕事がない時に売春をしている看護師のターニャを中心に展開する。この行為は刑事罰の対象となるため苦労するが、彼女は持ち前の魅力によってどのようにトラブルを回避すればよいかを知っている。

 しかし外国人の客の一人が彼女と結婚し、スウェーデンに連れて行った後、ターニャの人生は劇的に変わる。しかし、そこでもターニャはすべての差し迫った問題の解決策を見つけられないだけでなく、以前の職業の束縛から逃れるのがそれほど簡単ではないことも理解している。

 この映画は、ペレストロイカ時代の出来事となったウラジーミル・クーニンの同名の中編小説の映画化である。さらに『令嬢ターニャ』はソ連で初めて国の資金でなく民間の資金で撮影された映画である。

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