世界的な賞を獲得したロシアの傑作映画7選

カルチャー
エカテリーナ・シネリシチコワ
 大きな話題となり、世界の映画史に刻まれたソ連とロシアの大ヒット映画。

1.『僕の村は戦場だった』(Иваново детство、1962年)、アンドレイ・タルコフスキー監督

 タルコフスキーが映画スタジオ「モスフィリム」の委員会にシナリオを見せた際、皆この映画が、戦争で親族を全員なくし、いわゆる「連隊の息子」となった幼い偵察兵イワンの物語になるだろうと考えた。しかし撮影が終わると、それが間違いだと分かった。

 神経をじらすリズムと精神が歪んだ少年の語りを伴う『僕の村は戦場だった』は、愛国主義的な戦争ドラマなどではない。ソ連の批評家が「戦争で焼かれた子供時代」を論じ続けた一方で、映画が呼び起こす奇妙な感情を的確に記述できたのがジャン=ポール・サルトルだ。「戦争では兵士は皆正気ではない。この怪物のような少年は彼らの狂気の客観的な証人だ。彼自身が最も正気ではないからだ」。

 タルコフスキーの最初の長編映画は興行的に最も成功した作品となった。ソ連では1670万枚のチケットが売れた。国外ではヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞、サンフランシスコ国際映画祭の最高賞、さらにさまざまな国で15以上の賞を獲得した。

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2.『戦争と貞操』(Летят журавли、1957年)、ミハイル・カラトーゾフ監督

 これは戦争によって幸せを壊された愛し合う2人の物語だ。1958年、『戦争と貞操』はカンヌ国際映画祭で最高賞を獲得し、撮影技師のセルゲイ・ウルセフスキーと女優のタチアナ・サモイロワはそれから間もなくハリウッドに招かれた。この映画には、うわべだけのソビエトの様子や恐ろしい戦争を前にした「力強い人民」のイメージ、強調された英雄的行為、この手の映画にありがちな教訓主義はない。その代わり、銃後の戦争の苦しみ、具体的な人物の運命と彼らの個人的な苦悩が描かれている。人間味に溢れ、生々しく、心を揺さぶる、逆説的なハッピーエンドを持つこの映画は、フルシチョフの雪解けの時代を象徴する作品でもある。

3.『戦争と平和』(Война и мир、1966年)、セルゲイ・ボンダルチューク監督

 レフ・トルストイの同名小説に基づく、対ナポレオン戦争時代のロシア社会を描いた壮大な歴史映画は、アカデミー賞を含め、十ほどの国際的な賞を獲得した。ソ連映画がアカデミー賞を獲得したのはこれが最初で、世界史上最も費用のかかった映画の一つだ。ボンダルチュークは改作に際してトルストイの考えに忠実に従ったため、映画は連作となり、撮影期間は6年にわたった。ちなみにこの異常な間延びと進行の緩慢さのために『戦争と平和』は批判を受けた。しかし同時に、エキストラに数千人が参加し、軍の部隊が丸々動員された撮影の規模は、現代の尺度で見ても圧巻だ。

4.『ウルガ』(Урга – территория любви、1991年)、ニキータ・ミハルコフ監督

 ソ連とフランスが合同で制作した映画は、中国のモンゴル系遊牧民についてのドキュメンタリー映画を作るという構想から生まれ、アネクドートのような端緒を持つ映画作品に発展した。草原のモンゴル人がコンドームを求めて街に行く。なぜなら法律で3人以上の子供を持ってはいけないからだ。故郷の草原に彼が持ち帰ったのはコンドームではなく、テレビと野球帽、自転車だった。彼はすぐに愛の営みに向かう。

 主要な役を演じたのはアマチュア俳優で、プロの俳優は映画全体を通して一人だけだ。おそらくこれが、この映画がこれほど心のこもった作品になった理由かもしれない。モンゴル系遊牧民の大都市への冒険は、遊牧民とその伝統の運命についての心を打つ内省に変わる。ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞や、ロシア国内のニカ賞、ヨーロッパ映画アカデミーの監督賞を受賞したほか、アカデミー賞にもノミネートされた。

5.『太陽に灼かれて』(Утомлённые солнцем、1994年)、ニキータ・ミハルコフ監督

 『太陽に灼かれて』の出来事はスターリンの大粛清の前夜に展開する。1936年の晴れた夏の日。国中がスターリン時代の飛行船建造1周年を祝っている。スターリンお気に入りの「真の共産主義者」の家族はこの日をダーチャで牧歌的に過ごしている。予期せぬ客が現れるまでは。

 これは大粛清を描いた映画として、アカデミー賞(外国語映画賞)とカンヌ国際映画祭のグランプリを獲得した唯一のロシア語映画だ。制作者が言うように、この映画は歴史の闇を暴くものではなく、ソビエトの人々が置かれていた劇的状況に満ちたものだ。歴史、愛、悲劇、情熱、郷愁、階級憎悪――『太陽に灼かれて』には実に多くのドラマが詰まっている。

6.『父、帰る』(Возвращение、2003年)、アンドレイ・ズヴャキンツェフ監督

 アンドレイ・ズヴャキンツェフ監督のデビュー作は西側で歓喜をもって受け入れられ、監督はタルコフスキーの後継者と呼ばれた。ヴェネツィア国際映画祭では最高賞の金獅子賞を含め5つの賞を受賞した。FIPRESCI(国際映画批評家連盟)の2つの賞も(一つはパームスプリングスで、もう一つはテッサロニキで)獲得している。

 2人の兄弟と、長らく会っていなかったため初対面と言っても良い父の思いがけない帰郷とを描いた控えめなドラマは、ばらばらになった家族の幸せな再会の物語ではない。彼らは精神的にほとんど耐えがたいドライブをするが、どこへ何のために行くのか、少年たちには最後まで分からない。批評家はこの映画を長年待ち望まれたロシア映画の高い様式への回帰と評価した。以後この監督の作品を世界中の主要な映画祭がマークするようになった。

7.『ファウスト』(Фауст、2011年)、アレクサンドル・ソクーロフ監督

 この映画は20世紀の巨人を描くソクーロフの壮大な4部作『モレク神』『牡牛座 レーニンの肖像』『太陽』を締め括る作品で、前3作への鍵となっている。主人公はいずれもファウストになぞらえられ、自身の中で悪魔と契約を結んでいる。しかし『ファウスト』はゲーテが作った古典的なイメージから驚くほど逸脱している。

 物語はファウストとマルガリータの恋愛に沿って進んでいくが、陳腐な展開は削られ、ファウストのテーマに新たなバリエーションやモチーフが詰め込まれている。この映画は何よりも精神の退廃と人間性の境界とを描いている。ドイツ語で撮られたこの映画はヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞、カトリックメディア協議会のSIGNIS賞、フューチャー・フィルム・フェスティバルのデジタル賞、ロシア国内のニカ賞を獲得した。

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