WHOの忠告通り、2㍍の距離をとって写真を撮るロシアの写真家(写真特集)

カルチャー
ヴィクトリヤ・リャビコワ
 サンクトペテルブルクのあるカメラマンは、外出禁止の状態でずっと家にいるのに飽きたことから、外に出て、WHOのあらゆる忠告に従い、モデルに2㍍以上近づくことなく写真を撮ることにした。そして誕生したのがソーシャル・ディスタンシングをテーマにした写真プロジェクトである。

 サンクトペテルブルクの写真家、アレクサンドル・チェルノフは家族とともに自己隔離をしてもう3週間目になる。チェルノフは公共の場には一切行かず、親戚を訪ねていくのも、誰かを家に招待するのもやめている。

 「それがあるとき、壁の中にいるのが息苦しくなったのです。そして、まだ完全な外出禁止になる前に、何かクリエイティヴなことをして、誰かと直接交流したくなったのです。それで友人や知り合いを撮影するプロジェクトを思いついたのです」。

 またチェルノフによれば、撮影の後、人々は自分からコロナウイルスがいかに彼らの生活を変えたか、何をもっとも恐れているか、普通の生活に戻れたときにまず何をするかなどについて話してくれたという。

 「このプロジェクトには強力な心理療法的な側面を持っているのではないかと思っています。被写体になった人々は心の中で思っていることを吐き出し、自分の心配ごとを短い文章にするチャンスを得たのです。また読者には、皆同じような問題を抱えていて、誰もがつらい思いをしているのを実感できるチャンスを与えるものとなっています。そして希望を持って世界を見続け、この新たな条件の下でプラスの面を見つけようとしている人がいるということを知ることもできます。一方、わたし自身にとっては、このプロジェクトは、創造的なものを形にすることであり、もっと深刻な隔離を前に友人に会うチャンスでもあったのです」とチェルノフは語る。

オリガ

 わたしは展示会場マネージで働いています。展示室は1週間以上前に閉鎖されました。それ以降、いつ再開するのかについてはなんの情報がありません。今は誰にも分からないことだと思います。ここのところは1日おきにオフィスに座っています。

 普段は家にはほとんどいません。仕事をして、友人たちと会って、展覧会に行って、他にも色々楽しいことをしていました。しかし今は、植物や花に囲まれて、キャンドルを灯したり、アロマを焚いたり、カラフルなランプをつけて、家にいるのも好きだということに気がつきました。ウィーン・オペラの中継を観たり、インドについての本を読んだり、「X–ファイル」を見返したりしています。どれくらい楽しみが続くか分かりませんが、いまのところはこれで十分楽しめています。

 怖いのは、いろんなことがはっきりしないことです。誰かがすべてはっきり説明してくれたら安心できるのにと。将来、変化が起きてほしくありません。自分にとって近い関係の人々のことを心配しています。そしていつかこれが終息したら、ブダペストに旅行に行き、インドにも行き、イスタンブールにもまた行きたいです。今回のプロジェクトのためにラメのメークをできて、嬉しかったです。今は、そんなことをするようなこともないですから。

アントン、写真家  

 わたしはインテリアのカメラマンです。1月、2月は撮影がないシーズンなので、3月、4月に稼げばいいと思っていました。しかし今やすべての仕事がなくなってしまったので、生活に色をつけるために自転車の配達員をしようと思っています。

 わたしが何より怖いのは、もし今の状況が荒廃した現代社会における戦争状態となり、わたしの闘い組が「黙示録のピンクのポニー」と言われるかもしれませんが、まぁそれも良いでしょう。

 半年後、好きなことをやり続けることができるのかまったく分かりません。正直言って、このことを考えるのに力を使いたくありません。

 5月にカリーニングラード州に自転車旅行する予定でした。日程をずらさなければならなくなると思いますが、でもまだその希望はまだ捨てていません。

ステパン、バーテンダー 

 現在、毎日、明日どうなるか分からない、明日仕事があるかどうか分からないという状況です。もし自己隔離することになるとしたら、その期間はどのくらいで、 それが終わったあとはどうなるのか。もしバーが閉鎖されたとしたら、また再開されることはあるのか。いつもの生活、いつもの娯楽はどうなるのか。

 日々、節約しています。手を洗い、何にも触れないようにし、職場では長い時間をかけて、すべてを拭き取っています。握手の挨拶はせず、抱擁もせず、そんな態度を笑う人がいるときにイライラしないようにしています。自分の身を守り、偶然、誰かに感染させないようにということを常に気にするのは難しいことです。状況に対する考えが1日に何回も変わるということにも疲れます。

 今の状況がずっと終わらないのではないかというのが怖いです。そして少ない可能性の中、通常より2倍強く、生き延びるために闘わなければならないということが恐ろしいです。家にいて、感染し、病気になるリスクを抱えているからです。そしてこれにより、科学、慈善事業、政治、ビジネス、あらゆる難しいプロセスなど、よいことがすべて存在しなくなってしまうことが怖いです。

 未来が見えません。より良い未来になるよう願っています。

 国境が再開すれば、フィンランドに行きたいです。そして、暖かい海にも。

カテリーナ、監督兼モデル 

 コロナウイルスが発生するまで、わたしは監督としてプロジェクトに関わり、動画を撮影していました。わたしは子どもたちを幼稚園に行かせ、友人と散歩をし、劇場や映画館、カフェに行っていました。子どもたちはもう1ヶ月以上、幼稚園に行っていません。最初は病気で休んでいたのですが、それ後、パンデミックのせいで行かなくなりました。

 わたしの多くのプロジェクトも、キャンセルされたり、延期、中止されたりしています。またモデルエージェンシーとの契約で外国で働く可能性は無期限に凍結されました。ちなみに今日、わたしはボルドーでデートすることになっていたのです。しかしすべては計画通りに行かなくなりました。そしてわたしはこれは何かのためだと思うのです。恐ろしいけれど、同時に面白い、非常に貴重な時期です。まるで映画のようです。 

 もっとも難しいのは、子どもたちとずーっと一緒にいながら、仕事をし、休息を取るということです。毎日が時間もわからないくらいゆっくり過ぎ、すべての境界線がなくなり、メリハリがありません。不要不急の外出はできなくなり、シッターさんを呼ぶのも控えています。厳しい時代です。

 はっきりとしないこと、期限がないことが怖いです。いつ収束するのか、そしてハッピーエンドになるのかどうか、分かりません。

 わたしはフランスが好きで、スペインにも行きたいと思っています。ですから、行けるようになれば、パリに旅行し、息子にエッフェル塔を見せ、エトルタでノルマンディーのシードルを手にイギリス海峡のそばに立って、ずっと行きたかったバルセロナに行きたいです。それからボルドーも、ボルドーワインを飲みに行きたいです。

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