孤独と人間関係の崩壊を描いたロシア映画5選(バレンタインデーに贈る悲しいリスト)

カルチャー
エカテリーナ・シネリシチコワ
 現実にはありえないようなバラ色の鼻水が出るロマンティックコメディにはもう飽きたというあなたのために、不幸な結婚、冷酷な別れ(ショートメッセージより酷い)をテーマにした映画リストを作ってみた。バレンタインデーを一人で過ごしているという人には何か気に入る作品があるかも。

1. “Another Year” 2014年、 オクサナ・ブィチコワ監督   

 テーマ: 若い夫婦の未熟な愛の終焉についての現実的なメロドラマ

 彼女はヒップスターエージェンシーのウェブデザイナーで、カラフルなタイツを履き、アートハウスを見て、ナイトクラブで友人たちと集まり、ワイングラスを片手に哲学的な話をするのが大好きだ。一方、彼はタクシー運転手でいつも黒くて安い目立たない服を着て、アートハウスなどつまらないものだと考え、コンピュータゲームをより好み、ウォトカをビールで流し込む。年齢は2人とも25歳くらいなのだが、ちょっとしたきっかけで結婚することになる。

 しかし結婚生活は次第に破綻していく。現実社会でもよくあるように、人は若くして結婚しても、少しずつもっと違うもの、違う人に魅かれていくのである。片方は自分をもっと成長させたいと思い、もう一人はただより愛されたいと望むようになる。

 

2. “不整脈” 2017年、ボリス・フレブニコフ監督  

 テーマ: ルーティーンにはまり込んだ医療従事者同士のカップルの生活と恋愛を描いたドラマ。「どこにも動かない」関係と耐えがたい痛みがテーマとなっている。 

 救急医のオレグは狭いワンルームのアパートに妻のカーチャと暮らしている。カーチャもまた医師だが、診察室で穏やかに仕事をしている。2人は大学時代から付き合っているが、ある日、家族のお祝いの日に、オレグは隣のテーブルに座っているカーチャからショートメッセージを受け取る。そこには「離婚しましょう」と書かれていた。作品ではカップルの複雑な状況と、ロシアの医療システムについての辛辣な社会問題という2つのテーマが描かれている。

 フレブニコフ監督のこの映画は2017年のもっとも優れた作品の一つとされ、ロシアのもっとも有名な映画祭「キノタヴル」で最優秀賞を受賞した。

 

3. “Fidelty” 2019年、ニギナ・サイフラエワ監督 

 テーマ: セックスレス夫婦をテーマにしたメロドラマ。感情の飢え、自己知識と愛人を求める気持ちなどを描いている。

 レーナは産婦人科医、夫のセルゲイは地方の劇場で俳優として働いている。2人の結婚生活に、暖かく信頼に満ちた愛はあるが、セックスのない生活だ。レーナは他に愛人がいるのではないかと猜疑心を持つようになり、嫉妬に苦しめられた彼女は自らも不倫相手を探し始める。作品は「女性の自我の孤独な旅」と名付けられ、ロシアの官能映画の革命と呼ばれた。しかし作品は何よりその率直さと、心の浮気と体の浮気のどちらの方が恐ろしいかという問いかけに対する答えの模索である。

 

4.“Betrayal” 2012年、キリル・セレブレニコフ監督

 テーマ: 監督によれば、愛、そして心を傷つける裏切りの物語。

 医者である彼女は、ある男性患者に心電図の電極をつけながら、静かにこう告げる。「わたしの夫はあなたの奥さんと不倫しています」。そして映画の中では、パートナーの裏切りの根本の原因となる人間の感情のあらゆる局面が映し出される。

 セレブレニコフ監督は演劇界の優れた演出家として知られ、彼の映画は装飾や演技から演出にいたるまで、「芝居」が息づいている。というわけで、リアリズムはあまり感じられないが、芸術的表現という見地からみれば、非常に素晴らしい作品である。

 一人でバレンタインデーを祝うのに理想的な1作。

 

5. “持参金のない娘” 1984年、エリダール・リャザノフ監督 

 テーマ: 19世紀末に心から愛しながら、冷酷に裏切られる美少女を主人公にした伝説的なメロドラマ。アレクサンドル・オストロフスキーの戯曲「持参金のない娘」を映画化したもの。

 没落貴族の未亡人は日々パーティを開き、自分の娘を持参金なしで結婚させる相手を探している。末娘のラリサに将来性のある2人の男が近づき、彼女は自分で1人を選ぶが、その選択は誤りであった。この映画はロシアでかつても今も人気があるが、いくつかの部に分かれていて、いろんなことがめまぐるしく起き、熱い愛が描かれていることから、「サンタ・バーバラ」を思わせる。しかしこの映画にはハッピーエンドはない。

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