子どもと一緒にロシアの超人気アニメ「マーシャと熊」を見るべき5つの理由

カルチャー
エカテリーナ・シネリシチコワ
 ロシアのアニメシリーズ「マーシャと熊」は製作されて10年以上経つが、この間に世界的な超ヒット作となった。なぜこのアニメを子どもたちに見せるべきなのかについてまとめた。

1. これは世界でもっとも視聴回数が多い映画である 

 2019年、このアニメはソーシャルネットワークでもっともよく観られている映画として、ついにギネスブックに登録され、文書に残されることになった。作品はYouTubeだけでも500億回以上視聴された。これがどれほどの人気かというと、動画ホスティングで「マーシャと熊」を上回るのは、史上、「ワイルド・スピード7」のサウンドトラックと、エド・シーランと彼の「シェイプ・オヴ・ユー」、勢いのある「デスパシート」しかないといえば分かるだろう。

 ロシアの森に住むマーシャという女の子とペットの熊を主人公にしたこのアニメシリーズは世界130カ国で上映されている。ロシアのアニメでこれほどの名声を博したものはこれが初めてである。

 まだ他にも記録はある。このエピソードはYouTubeで10億回以上視聴された唯一のロシア語の動画であるが、その回数は実に43億回に上る。

2. これは「ロシアの社会現象」である 

 Netflixは2015年に「マーシャと熊」をオンラインライブラリーに加えたが、そのときにこの作品についてこのように書いた。世界の多くの国のキッズ向けコンテンツで上位に入っているの理由は、まず第一にその普遍性にある。このアニメを理解するのにロシア人である必要はないのである。普遍的なテーマ、普遍的な状況を扱ったものであることから、「マーシャと熊」はまったく世界的な作品となっているのである。 

 加えて、アニメシリーズは非常にうまく描かれている。面白おかしく、セリフは最低限であることから、ストーリーも世界中の誰でもが分かるようになっている。そしてもっとも重要なのは愛を込めて製作されているということである。

3. ターゲットとなっているオーディエンスに100%ピタリとハマった

 「マーシャと熊」の主な視聴者は2歳から7歳の子どもたち。男女両方がターゲットだ。制作者であるアニメーターのオレグ・クゾフキンは「トムとジェリー」の大ファンだったという。キャラクターの戦い、面白おかしいストーリー、そしておきまりの教訓的なハッピーエンド(あるいはハッピーエンドに近い終わり方)というのが理想的な形だと考えていた。しかし彼は言葉を話す動物以外に必ず子どもを登場させることが必要だと考えた。子どもの視聴者が自分と同一化させるのにこれ以上よいものはないからである。マーシャは視聴者の視線で世界を見つめており、それが功を奏したのである。

 標準的なエピソードの長さは1本7分から10分。映画館では、いくつかのエピソードを編集して、そこにインタラクティヴ要素を加え、1本の映画にしたものが上映されている。

4. 大人のために用意された「イースターエッグ」  

 「マーシャと熊」の制作者たちは子どもの親のことも考えている。彼らにとって、シナリオのレベルで、大人だけが理解できる「イースターエッグ(隠されたメッセージ)」が散りばめられている。たとえば「タイタニック」、「フォレスト・ガンプ」、「マスク・オヴ・ゾロ」のオマージュであったり、熊の家の中のソ連製の日用品(古いテレビや冷蔵庫)などがそうである。ソ連製の物品については、外国人の観客にはノスタルジアを感じさせないかもしれないが、それでも興味深いディーテールの1つとなっている。

5. 子どもへの配慮

 「マーシャと熊」はヨーロッパでもっとも有名な子どものブランド上位5位にランクインしており、制作者にとってはありとあらゆるものでほぼ無制限に利益をあげることができる状況にある。書籍、食品、おもちゃ、文房具などはアニメの収益よりも多い利益をもたらしている。

 幸いなことに、ブランドは、子どもの健康を害して利益を追求しないことをポリシーとしている。たとえば子どもたちがパッケージにマーシャが描かれたチップスを食べすぎたり、熊のイラストが入った炭酸ジュースを飲んだりすることはない。なぜならそのような商品は存在しないからだ。ロシアのブランドはそのようなライセンスは取得していないのである。チップスの代わりに、たとえばイタリアではコーンスティック、甘い炭酸水の代わりに、ミネラルウォーターやジュースが売られている。