怠惰をテーマにしたロシアの主要な小説を読むのすら怠惰だという人にオススメの一作。才能溢れるロシアの俳優、オレグ・タバコフ演じるオブローモフは、作品の大部分の間、ただソファに横たわり、退屈している。ある一人の女性が彼の人生を変えるまでは・・・。
ソ連で撮影された映画とは信じがたい作品。外貨を受け取る娼婦、セックスシーン、警察の横暴・・・。当時、映画界に革命をもたらす一作となり、16歳未満の鑑賞を禁止するという年齢制限が設けられた。外国人を見つけて外国に脱出することを夢見る娼婦を主人公は、ついに夢を叶える。しかし新しい土地に馴染めず、誰にも必要とされていないと感じるのだが、もはやソ連に戻ることはできないのだった・・・。
ペレストロイカ時代に制作されたもうひとつの衝撃的な作品。ロシアの映画で初めて大胆なセックスシーンが含まれたことで話題を呼んだ。映画は父と子の関係をテーマにしたもの。若いヴェーラは新しい時代の生き方をしていたが、父親にはそれをどうしても受け入れることができず・・・。
数々の困難を乗り越え、シングルマザーとなった無名の歌手。しかしその後、彼女は歌手として名声と人気を獲得するが、私生活で幸せになることはなかった。これはソ連のポップススター、アーラ・プガチョワの半生を描いた作品で、本人が主役を演じている。
マッドマックスや初期のスターウォーズが好きな方には見逃せないゲオルギー・ダネリヤ監督のスチームパンク。偶然出会った2人の男が別の惑星に飛ばされてしまい、そこで宇宙船を持つ異星人と出会う。しかし地球に帰るためには失くしたある部品が必要なのだった。2人を救ってくれるのはこの惑星で金ほどの価値を持つマッチだけであった・・・。
ソ連の最初のプロパンダ映画の一作。労働者のリーダーで、革命家の女性を善のヒーローとして、またアルコール中毒で、皇帝を救おうとする彼女の父親を悪者として描かれている。マクシム・ゴーリキーの小説「母」をモチーフに製作されたファミリードラマ。
エミール・クストリツァ監督が世界で最も素晴らしい映画の一つに選んだ作品。「ロミオとジュリエット」をウクライナの山岳民族フツル人の中の争いの時代に移したもの。同時代人の回想によれば、パラジャーノフ監督はこの映画に個人的な悲劇を反映させたと言われる。
ヴェルトフは映画界のマレーヴィチである。演劇的な世界から離れ、真実をそのまま映し出そうとする実験を飽くことなく続けた。カメラマンのミハイル・カウフマンとともに、彼はアヴァンギャルドを映画の世界に持ち込み、さまざまな点からのショットを織り交ぜ、視覚的な連想作用を使用した。俳優も演技のシーンもない現実を捉えたサイレント映画。
おとぎ話「オオカミと7匹の子ヤギ」をモチーフに製作された超サイケデリックな音楽映画。ヤギのママが子ヤギを家に残して出かけているうちに、灰色のオオカミが子ヤギを誘拐し、身代金を要求する。ソ連で最初のミュージカル映画の一つで、その歌はかなり長くにわたり、子どもにも大人にも人気があった。
金髪のナジェージダはソ連の基準で言えばかなりアクティヴな女性。物不足の品をどこで見つけられるかをいつでも知っていて、有効なコネを持っていて、そして食料品店で働いている。ソ連の基準で言えば、これは工場長と同じくらいの意味を持っていた。そんな彼女が大きな夢を抱く天体物理学者に恋をし、彼を変えようとするだが、男が考えているのは、地球外にある文明のことばかりであった・・・。ソ連時代の最後のコメディの一つで、当時、莫大な観客動員数を記録した。
ゴーリキーの小説「どん底」を伝説的な映画監督エリダール・リャザーノフの解釈で映画化したもの。街のゴミ処理場に住むホームレスたちは、政府から排除させられようとしているが、そこから出て行こうとしない。そこで政府はこの争いに戦車を投入するが、彼らにはもうどうでもよいことだった。彼らはもう天国に昇ることだけを夢見ていた。
ウディ・アレン風の作品。山師で魅力的なカリオストロ伯爵は追っ手から逃げ、田舎に身を潜めていた。伯爵の詐欺が多大な影響力を持つペテルブルグの候に暴かれたのである。しかしカリオストロはペテンを続け、銅像に恋をした若者に、その銅像に命を吹き込んでやると約束する。そして伯爵はさらに人々を騙すため、愛の公式を解こうとする。
アガタ・クリスティの推理小説の映画化。互いに知らない10人が遠く離れた孤島に、本島と連絡が取れないまま残される。彼らはオーエン夫妻の招待でこの島に来たのだが、しかし夫妻は家にはいなかった。メンバーが1人ずつ死亡していき・・・。心が凍りつくようなこの作品に出演するロシアの名優たちの演技が素晴らしい。
天才的女優、ファイナ・ラネフスカヤの機知に富んだユーモア溢れるフレーズは格言となり、今も人々に記憶されている。チェーホフの短編小説を下敷きにしたこの映画で、ラネフスカヤはロシアのあらゆるアネクドート(小咄)にたびたび登場する「姑」役を演じる。革命前の小市民を描いた抱腹絶倒の作品。
ロシアの巨匠セルゲイ・エイゼンシテインが国民の愛国心を鼓舞することを目的とした政府からの要請を受けて製作した。完成までの日数が限られていたため、騎士団たちが凍った湖面の下に沈んでいくという大規模な氷上の戦闘シーンも夏に撮影しなければならなかった。アスファルトに塩を敷き詰め、白く塗った木の板で氷を作ったという。
音信不通だった陰鬱な父親が家に戻ってくる。2人の息子はその間父親がどこにいたのかも知らず、父親の帰還に当惑する。父親は何ごともなかったように、息子たちを連れて旅に出る・・・。アンドレイ・ズヴャギンツェフ監督の最初の作品で、ベネツィア映画祭で金獅子賞を受賞したが、ズヴャギンツエフは現代のもっとも優れた監督のひとりとされている。この作品で監督は、セリフが少なく、一コマ一コマを味わい深いものにする独自のスタイルを確立した。
プログラミストのムィシキンは外国から帰る途中であった。その道中で知り合ったロゴジンは裕福な男で、自分が熱を上げていたナスタシア・フィリッポヴナという女性の話をする。ムィシキンは見たこともないその女性のイメージに恋をする。ドストエフスキーの小説「白痴」の舞台を1990年代に移し、大胆に脚色した不条理映画。
法に反して外国のおしゃれなものを手に入れ、禁止されていた西側の音楽を聴き、ブギウギを踊り、そして恋をするソ連のロッカーたちを描いた物語。彼らが開く非合法のパーティは共産主義青年同盟に追い散らされ、彼らは党の集会で叱責される。トドロフスキー監督のノスタルジックな作品は公開された年、大きな興行収入を記録した。
有名なソ連のホッケー選手、ワレリー・ハルラーモフの活躍を描いたこの作品で、地方都市ウラルのホッケークラブからモスクワの名門ツェスカに入るまでのハルラーモフの道のりとロシア代表チームのカナダ戦での歴史的勝利に焦点を当てている。主役を演じるのは、ロシアのセックスシンボルで、現在もっとも人気のある若手俳優、ダニーラ・コズロフスキー。
モスクワのレーニン・コムソモール劇場で、グリゴリー・ゴーリンの脚本に基づいて上演された芝居から生まれた映画。ミュンヒハウゼン男爵は例によって、次々と荒唐無稽な話をするのだが、婚約者は彼にホラを吹くのを止めるよう頼む。男爵は次第に陰鬱な人間になっていき、やはりまた月世界旅行をすると言う。そして見物人たちは人間大砲が打ち出されるのを目にする。
「ハチコー」に胸打たれた人にとっては、涙なしには観られない作品。ロシアでも世代を超えて、多くの人々が涙を流している。片耳が黒いゴードンセッターのビムは狩猟愛好者のイワン・イワノヴィチの家にもらわれる。ご主人様が入院することになったとき、ビムは彼を探しに出かける。
16世紀の冷酷な皇帝を描いたこの作品は、愛国心を高め、国民にとっての神、ヨシフ・スターリンの粛清を正当化しようとするものであった。映画は大祖国戦争の最中、多くの俳優たちが飢えに苦しんでいたときに、国からの要請により制作された。3部構成で制作される予定であったが、エイゼンシテインは第2部を完成させた後、亡くなった。
2つのコルホーズが競って市の準備をする様子を描いた音楽コメディ。戦後の貧しい時代を舞台にしているが、実際より食料も豊富に、実際より明るい雰囲気に描かれている。プィリエフ監督はモスフィルム映画撮影スタジオの代表であり、その後10年以上にわたり、ソ連映画同盟の議長を務めた人物で、彼自身がこの時代の映画の検閲機関であったため、ソ連のイデオロギーの模範的作品を製作した。
ロシアの風習や伝統を研究するためロシアにやってきたライヴォは、興味深いさまざまなものを目にするが、とりわけ箱を使ったオオカミ狩りに目を奪われる。壮大な物語の中に自分たちの姿を再確認し、ロシア人が涙が流して笑うコメディ。
宇宙ステーション「ソラリス」にやってきた心理学者はそこで不可解なことが起きていることを知る。ソラリスで活動する研究者たちは皆、精神疾患に苦しんでいた。そしてやがてそこに死んだはずの妻が現れるようになる。ポーランドの作家、スタニスラフ・レムの小説を基にしたタルコフスキーのこのSF映画は今でも多くの監督や芸術家にインスピレーションを与えている。
働く若者たちが通う夜間学校を舞台にした4シリーズから成る心温まる作品。教育大学を卒業したばかりで、古代ロシアの年代記を綴った人物と同じ名前を持つネストルが、自分よりも年上で、人生経験も豊かな生徒が集う非常にやりにくい、しかし非常にレベルの高いクラスの歴史教師として奮闘する姿を描く。
ソ連時代、イギリスの古典小説の映画化が流行したが、劇作家ブランドン・トーマスの人気の戯曲「Charley’s Aunt」のこの映画バージョンは今でも比類なきヒット作である。女性が男性役を演じるコメディで、主人公は警察から逃れるために、ブラジルからやってきた金持ちの未亡人、ドンナ・ローザになりすますが、古典的な展開で、彼女は男性の間でモテモテになる・・・。
オペレッタ劇場の女優が、新しい映画の研究者の役を得る。しかし劇場のリハーサルの時間と映画の撮影が重なってしまい、どちらかを選ばなければならなくなる。そのとき、本物の研究者たちの中に、彼女とそっくりな人物がいることを知り、彼女は真面目な研究者に、撮影現場で彼女の代わりをしてくれないかと懇願する。
大祖国戦争時代、兵士のためのコンサートのために前線を訪れていた国民的女優、リュボーフィ・オルロワが1人2役を好演している。
ピノキオのロシア版であるブラチーノはソ連の子どもたちの間でもっとも愛されたおとぎ話であった。この映画のオリジナルサウンドトラックはロシア映画音楽の「ゴールデンアーカイブ」に含められている。
アフガン戦争はロシア国内であまりにも重いテーマであったため、この戦争を描いた映画はほとんど存在しない。しかしフョードル・ボンダルチューク監督は、あえてこのテーマに挑み、ベトナム映画を題材にしたアメリカ映画を思わせる感動的なブロックバスター映画を完成させた。
日本の黒澤明監督がロシア語で制作したこの作品はアカデミー最優秀外国語映画賞に輝いた。日ソ合作のこの映画は極東の探検家、ウラジーミル・アルセーニエフの自伝的小説を基に製作されたもの。この探検にガイドとして同行したウスリー地方出身の漁師のデルス・ウザーラは、この土地について詳しく、たとえばトラが近くに現れたときにはどうすればよいかなど教えながら、アルセーニエフを助ける。
宝くじの当たり券を探しに出かけるダフ屋のカップルを描いたコメディ。5,500万人が観賞し、1982年、もっとも人気の作品となった。ソ連時代の黄金のコメディコンビ、コクシェノフとプゴフキンは30年以上にわたって人々を笑わせ続けている。
大学に進学することができなかったイワンは雑誌社で教授のメッセンジャーボーイとしての職に就き、その教授の娘と恋に落ちる。彼は、教授が自分をあまり好意的に思っていないことを知り、娘が妊娠したと言って、教授に恥をかかせようとする。新たな時代を感じさせるペレストロイカ時代の一作で、ソ連初のブレイクダンスも登場する。
帝政ロシアの若き士官学生の運命を描いた作品。士官学生のアンドレイはアメリカ人女性ジェーンに恋をし、彼女と自分の名声を守るため、なんでもしようとする。主演はオレグ・メンシコフとハリウッドスターのジュリア・オーモンド。この映画の撮影のために、当時のボリス・エリツィン大統領がクレムリンの星の灯りを消すことを許可したというエピソードは非常に有名。
夏のペテルブルクを舞台にしたロマンティックなストーリーは、きわめて単純なストーリーでありながら、2006年を象徴する一作となった。携帯電話を失くしたマーシャ。そして電話を見つけたマクシムが彼女に電話を届けようとするのだが、2人はわずか1秒の差ですれ違い、なかなか会うことができない。長い時間、電話で話すうちに2人は恋に落ちる。
非日常的なストーリーのアレクサンドル・ハント監督のデビュー作。本物の国民的ヒーローを映し出し、ロシア映画界を活気づけた。このロードムーヴィでは、怠け者のヴィーチカは、犯罪者の父親がまだ生きていて、今は障がい者となっていることを知る。そこで父親をナーシングホームに入れて、両親の家を手に入れようとするが・・・。
アヴァンギャルド監督、ヴェルトフが製作した若きソ連の共和国のある1日を追ったドキュメンタリー映画。自動車やバスが行き交い、労働者たちは工場で汗を流し、通行人は道を急ぐ。結婚式あり、出産や葬儀の場面ありの作品。伝説的監督が当時の画期的な最先端の特殊撮影技法を用いて製作した。
フルシチョフ政権下のいわゆる「雪解け時代」のシンボルとも言える作品。製鉄コンビナートで働く共産主義的勤労者は夜間学校に通っているが、そこで教育大学から派遣されてきた若い女教師に恋をする。2人とも、信念を持った誇り高きソ連市民で、2人の関係はそう簡単にはうまくいかず・・・。
アカデミー賞受賞作品の「シェイプ・オヴ・ウォーター」もこのアレクサンドル・べリャエフの小説「両棲人間」の映画化作品には敵わない。この作品では、緑色をした怪物ではなく、美しすぎる俳優ウラジーミル・コレネフが主役のイフチアンドル役を演じている。イフチアンドルは水中に住み、イルカと楽しく暮らしていた。偶然、海に沈みかけた美しい少女を救うまでは。そして人間になりたいと願うが、水がなければ長くは生きられないのであった。
古代ロシアの修道士で聖像画家だったアンドレイ・ルブリョフの人生を描いた作品。貴族は残忍で激しい内乱にあけくれ、民衆は飢えと疫病に苦しんでいたロシアの中世時代を生きたルブリョフの人生を、スコモローフ(放浪芸人)や異教徒、佯狂者、モンゴル・タタールの侵攻などを織り交ぜて描く。タルコフスキーのこの作品は外国でも高い評価を受け、史上最高の映画トップ100に何度もランキングされている。
現代の若者が自発的にこの映画を観ることはないかもしれないが、映画史の教科書のすべてがこの作品の中にある。伝説的な映画監督のセルゲイ・エイゼンシテインが、1905年に起こった第1次ロシア革命をテーマに製作した作品で、映画では傷んだ肉を食べさせられるのを拒んだ水平たちが反乱を起こした事件が描かれている。もっとも印象的なシーンであるオデッサの階段での虐殺シーンは、おそらく世界の映画史上もっとも歴史的なものと言えるだろう。
1812年のナポレオン戦争を背景にいくつかの家庭の物語を描いたこの映画はアメリカのアカデミー賞を受賞した。映画評論家たちはレフ・トルストイの壮大な叙事詩を映画化した作品の中でも最高のものだと評した。アンドレイ・ボルコンスキーとアナトーリー・クラーギン役は、ソ連のセックスシンボルであったヴャチェスラフ・チーホノフとワシーリー・ラノヴォイが演じた。週末を使ってこの大作を鑑賞して、その後、最近BBCで放映されたドラマシリーズと見比べてみては?
心優しい孤独な配管工のアフォーニャは仕事は適当にこなし、酒を飲む機会を見逃さない。職場の会議で彼は叱責され、解雇を促されても真面目に働くことができない。しかしカーチャだけはそんな彼も変わると信じている。どこにでもいるごく普通のロシア人男性を主人公にした面白いコメディは、その典型的な登場人物たちとウィットに富んだ会話で、観客を魅了した。
エヴゲーニー・シュワルツの戯曲を基にした映画。魔法にかけられて青年に姿を変えたクマの物語。王女さまの口づけで、魔法が解け、元の姿に戻れるはずなのだが、クマは元の姿に戻りたくなくなってしまう・・・。大人にも愛されるソ連のおとぎ話の一つであるこの映画は、人々が新しい人生、そしてありふれた奇跡を願う1月1日に初公開された。それゆえ、現在でも人気の一作であり続けている。
宗教に没頭し、指導者の言葉や書物を疑うことなく純粋に受け止めている上級学生。やがて周囲の人にも、自らの教義を押し付けるようになるが、それによってよいことは起こらなかった。舞台監督で映画監督でもあるキリル・セレブレニコフの映画は、自身の演出により、モスクワの劇場ゴーゴリセンターで芝居としても上演された。映画はカンヌ映画祭を含むいくつかの国際映画祭で賞を受賞した。
ズヴャギンツェフ監督の作品の中でもっとも高い評価を得た一作。撮影が行われたムールマンスク州の小さな村テリベルカは現在、アートハウス系の新人監督が訪れる聖地となっている。国家機関の権力を前にした人間の無力さを描いたヒューマンドラマで、ゴールデングローブ賞で最優秀外国語映画賞を受賞したほか、アカデミー賞にもノミネートされた。
何世紀にもわたり連綿と続いてきた闇の勢力と光の勢力の均衡を破る青年アントンを主人公にした物語で、最初のロシアのブロックバスター映画の一つ。すでにハリウッドでも多くの作品を制作してきたチムール・ベクマンベトフ監督が、セルゲイ・ルキヤネンコの同名の小説を映画化したもの。(続編にデイ・ウォッチがある)。
ティーンエイジャーたちが大人になっていく過程を描いたワレリヤ・ガイ・ゲルマニカのドラマ映画は、カンヌ映画祭の新人部門で話題を集めた。この作品は当時24歳のワレリヤをスターにしたが、今のところ、彼女の唯一の代表作となっている。
ミハイル・ショーロホフの同名の小説を映画化したもので、アカデミー賞の外国語映画部門にソ連代表として出品された。第二次世界大戦の勝利から30年を記念して制作されたこの作品は、独ソ戦でのソ連軍の功績について描いた作品で、戦争映画において一種の古典作品と位置付けられている。
新たに赴任してきた若い女教師と初老の男性教師との間の恋愛を背景に、ソ連の中学校の3日間を描いた作品。モスクワ映画祭でグランプリを受賞し、ソ連国家賞を授与された。
ユーリー・デトチキンはソ連のロビン・フッド。大金を手にした者から車を盗み、それを売った金を孤児院に寄付している。捜査官はこの犯罪を暴くが、デトチキンの高貴な目的を知り、彼を逮捕することはできなかった。
ソ連でもっとも人気のあった映画の一つで、ソ連市民の理想である誠実さと社会的平等が何よりも大切だというメッセージが込められている。
内戦末期を題材にしたいわゆる“ボルシチ・ウェスタン”映画。元赤軍メンバーである非常委員らは、ブルジョアから没収した金品をモスクワに運ぶという任務を任されるが、その金品は白軍に奪われ、その後、強盗にも遭い・・・。
ニキータ・ミハルコフ監督のデビュー作だが、すでに古典映画と位置付けられている。いくつかの国際映画祭にも出品された。
カリスマ的ロック歌手ヴィクトル・ツォイとソ連のアングラ文化を描いた作品。カンヌ映画祭では最優秀音楽賞を受賞した。この映画は、監督のキリル・セレブレニコフが公金横領の容疑で自宅軟禁されている状態でこの作品を完成させたことでも話題を呼んだ。
ペテルブルクには獅子の像が非常にたくさんある。獅子の像の下に隠された財宝を見つけるため、イタリアの冒険家たちはそのすべての像を次々に掘り起こして行く。ロシアから亡命した年老いた女性が、革命のときに獅子の下に宝を隠したと聞いたからであった。
映画では当時のハリウッドに負けるとも劣らない多くの特殊効果が使われた。ガソリンスタンドの爆発シーン、自動車の追い抜きシーンなどがそうである。俳優らはスタントマンを使わずに、ペテルブルクの跳ね橋を飛び移ったり、結び合わせたシーズを伝って高層ビルの窓から階下に飛び降りたりした。
ロシア内戦を描いた最高の作品の一つで、歴史教師も推奨するほどの秀作。白軍の舞台がクリミアで赤軍に包囲されている。司令官は2人の赤軍兵士に、白軍の配置を空撮するよう指示するが、その俯瞰図を落としたために捕虜となり・・・。
ソ連のホラー映画は5本とない。しかしこの「ヴィー」を観れば、あなたの髪も、この映画の最後のようにすっかり白くなってしまうかもしれない。ストーリーはニコライ・ゴーゴリの中編小説に基づいている。神学校の生徒が亡くなった美しい少女のために祈りを捧げに行くと、実はその少女は魔女で、最初の夜に棺から抜け出してくる。
モスクワの街を夜が更けるまで歩く恋人たち。しかし2人は、翌朝、第二次世界大戦が勃発したことを知る。青年のボリスは前線に赴き、恋人のヴェロニカはモスクワに残り、別の男と結婚する。きわめて悲劇的な物語で、感受性が強すぎる人にはお勧めできない作品。1958年、カンヌ国際映画祭の審査員らは涙を抑えきれず、この作品に「パルム・ドール」を与えた。
20世紀の「戦争と平和」とも言われる、ロシアの内戦をテーマにしたミハイル・ショーロホフの4巻ものの長編小説をまだ読んでいないという方にオススメの作品。革命はこれまでの世界を一変させた。赤軍と白軍の両方に加わって戦場を駆け巡り、妻と愛人の間で迷っているコサックのメレホフの生き方を描く。愛、裏切り、そして死。目が離せない作品。
地元の航空会社のパイロットとして働くミミノというニックネームのグルジア人は、世界中を飛行機で旅し、ついでに大きな航空会社の美人キャビンアテンダントと恋をするのを夢見ている。そしてついに夢を手に入れるミミノだが、次第に故郷が恋しくなり・・・。
ソ連を構成していたグルジアの美しい風景と主人公たちがソ連中を魅了した。また挿入歌「チト・グヴリト、チト・マルガリト」は今でも口ずさまれている。
ズヴャギンツェフ監督の最新作で、カンヌ国際映画祭で審査員賞、ヨーロッパ映画賞では撮影賞と作曲賞を受賞、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にノミネートされた。お互いを尊敬することができず、別れることしか考えていない身勝手な両親の元からある日息子が失踪し・・・。
艦隊の水平たちによる冬宮占領のシーンは記録的映像としてもよく使われている。エイゼンシテインは、事実をやや美化しつつ、帝政ロシアの打倒とボリシェヴィキ政権の樹立を描き出した。これは十月革命についての真の賛歌であり、作品に対する関心は昨年、社会主義革命100周年を機に再び、高まった。
自分の代わりに試験を受けに行ってくれる双子がいたらと夢見たことがある人はいるだろう。ある日、セリョージャ・スィロヨーシキンの元に、そんな双子のような存在となるロボットのエレクトロニクが現れる。エレクトロニクはなんでも知っているのだが、人間の世界にやってきた彼は自分が人間にはなれないことを知り、落胆する。もっとも人気の児童映画の一つで、数々の挿入歌も人気となった。とくにその中の1曲、「翼の生えたブランコ」はカルトソングとなった。
リータは、悪党からお金を借りたまま姿を消したボーイフレンドの身代わりにされてしまう。そんなリータを助けてくれるのがナイトクラブでダンサーとして働く、耳の聞こえないヤヤ。彼女は遠く離れたところにあるすべてが公正な「ろう者の国」に行くことを夢見ている。
ロシアでは珍しい障がいをテーマにした最初の映画であるが、ジーナ・コルズンとチュルパン・ハマートワの素晴らしい演技で、観客に愛される一作となっている。
エンジニアのナージャは30歳を超えて未だ未婚。学校時代からの友人のスサンナはそんなナージャを助けようと、闇業者から流行の洋服を調達し、誘惑の方法を教えるが、一番大事なのは、毎日、「自分は一番美しくて、一番魅力的だ」と信じ込む自律訓練法だと諭す。さて、その結果やいかに・・・。ペレストロイカ時代、もっとも流行ったコメディ映画の一つ。
こちらも第二次世界大戦をテーマにした胸を打つ一作。ボリス・ワシーリエヴィチ原作。さまざまな運命をたどる5人の少女が戦争によって結びつけられる。司令官の指示により、彼女たちは命を賭けて、森や沼でナチス・ドイツ軍を追跡する。
内戦が終わったばかりのロシア南部のカスピ海。赤軍兵士のスーホフは砂漠を抜け、愛する妻の待つ故郷へと向かう。しかし道中、悪党たちによって首まで土に埋められた男を発見し、彼を救うことを決意、そして別の犯罪者のハーレムに囚われている女性たちをも助けようとする。初のソ連版西部劇は、俳優陣の素晴らしい演技と、絶妙に練られた珠玉の対話によって名声を博した。多くのセリフが今でも生活の中に生きている。
ある幼稚園の先生が危険な犯人にそっくりだという理由で、アレクサンドル・マケドンスキーの黄金の兜盗難事件の調査への協力を依頼される。善良な先生が犯罪組織のリーダーになりすまし、刑務所からの逃走まで企てる。天才的な演技とドキドキハラハラスリル満点のストーリーで、大人気映画の一つとなり、観客動員数で上位を占めた。
同名の挿入歌は映画以上の大ヒットとなり、今でももっとも演奏される曲の一つである。映画は、脚本家が思い描いたあるシーンから生まれた。それは雨の降る美しいモスクワの街を1人の女の子が歩いていて、その横を自転車に乗った青年が通り過ぎるというものだった。雪解けの時代、大々的なモスクワの建設作業、そして大いなる希望。この映画は、のちにアカデミー賞を受賞する映画監督ニキータ・ミハルコフの俳優としてのデビュー作でもある。
ガレージの所有者らの集会では切実な問題が話し合われている。ガレージがある場所に街道が作られることから、誰かがガレージを手放さなければならないというのである。激しい論争の最中、集会のメンバーたちがその建物の中に閉じ込められていることが判明し、メンバーたちは夜中じゅう、一つ屋根の下で過ごさなければならなくなる。思いもかけず身動きが取れなくなってしまった人々がそれぞれの告白をするこの感動的なコメディは、古典作品となっている。作品はわずか24日で撮影された。
ジューロフ警部はある少女を強姦し、手錠をかけベッドに繋ぐ。そして気の狂った自分の母親を少女の見張り役としてその場に残す。この頃、アフガニスタンから戦死した兵士の遺体を詰めた鉛の棺が届くが、遺体を埋葬をする人の手がない。ヴェネツィア映画祭に出品されたこの作品は暴力と死に溢れているが、ストーリーは実際の出来事が基になっている。多くの俳優たちが出演を拒否、複数の映画館が上映を取りやめた。
このドラマを撮影したカメラマンは、当時を回想し、この番組がテレビで放映されていた時間、犯罪件数が低下したと語っている。警察のグレプ・ジェグロフ(ウラジーミル・ヴィソツキー)とウラジーミル・シャラポフが若きソ連という国で犯罪者たちを追う姿にソ連中が釘付けであった。2人はいわばこの時代のホームズとワトソンのようなものであった。
有名な女優、リュドミーラ・グルチェンコが鉄道駅構内の食堂で働くちょっと生意気なウェイトレス役を演じる。彼女を慕う唯一の恋人は往来する列車の車掌で、2人は列車の車両の中でデートしている。しかしそんな彼女の人生に偶然、彼女が勤める駅で足留めを食らった新しい男性が現れる・・・。映画は数多くのヨーロッパの映画祭に出品され、カンヌ国際映画祭でも好意的に評価された。
戦闘機の乗員たちは、爆撃をしていない時間をどのように過ごしているのだろうか。彼らもまた普通の生活を送っているのである。恋をし、家族からの便りを心待ちにし、アマチュアのオーケストラを作ったりもする。今もなお人気のある軍歌「スムグリャンカ」(褐色の娘)はこの映画で初めて歌われた。
あるエンジニアがタイムマシンを作り、偶然にもイワン雷帝をソ連に連れてきてしまう。そしてそれと入れ替わりに、皇帝にそっくりなある人物とアパートの隣の家に入ったコソ泥を中世に送り込む。このコメディ映画はミハイル・ブルガーコフのあまり知られていない戯曲「イワン・ワシーリエヴィチ」をモチーフに制作されたもので、伝説的なガイダイ監督の他のコメディ同様、観客動員数で第1位となった。
異なる世代の男たちがさまざまな戦争に出征することになる家族の物語で、野心と義務と愛について描いた映画。「祖国を守るという職業がある」と言うフレーズは金言となった。ソ連ではどの家庭でも少なくともに1人は軍に従事していたため、この言葉は多くの人にとって深い意味を持つものとなった。
ピオネールキャンプにいた経験がある人もない人も、この映画を見れば、一度は行ったことがあるような気がしてくる、そんな作品である。リーダーの目を盗んでのカード遊び、真の友情、機知に富んだ子どもたちのいたずら・・・。そして一番の見どころは参観日のための演し物の練習。今でも大いに笑えるファミリーコメディである。
通信兵のアリョーシャは戦場での勲功により、母親に会うための休暇を与えられる。故郷への道のりは長く、その間にさまざまな人とすれ違い、そして初恋の相手にも出会う。アリョーシャが母親を抱きしめ、母親が、再び会う日が来るかもわからない息子を前線に送り出すシーンは涙なしで見ることはできない。第二次世界大戦を題材にした印象深い作品。
料理人のトーシカはソ連の建設現場で働く女好きに恋をする。しかしどちらもプライドが高く、互いに好意を抱きながらも自分から一歩踏み出すことができない。労働階級を賞賛し、明るい未来への夢に溢れたロマンティック・コメディは時代を超えた古典映画となった。ジャガイモを使っていかにさまざまな料理が作れるか知ることができる一作でもある。
学生のシューリクは常に厄介な状況に巻き込まれている。バイト先の建設現場ではいたずら好きの仲間たちの仕業をいつもなんとか撃退している。試験期間中、教科書の読みすぎで頭がクラクラしたシューリクが周囲を見渡しているとき、3人の泥棒たちの作戦を目撃してしまう・・・。シューリクはソ連の国民的ヒーローであり、模範的学生、模範的コムソモール員の普遍的イメージであった。ガイダイ監督のユーモアは今も古びることなく、おそらくロシア人の2人に1人は登場人物たちのセリフを覚えているはずである。
国民的ヒーロー、シューリクの冒険の続編。シューリクは地元の風俗や習慣を調査するためカフカスに赴く。村の人々はシューリクが彼らと一緒に酒を酌み交わさない限り、話はできないと言うのだが、シューリクはそれに応じなかった。しかしある日、地元の人々が、非常に興味深い風習である花嫁の誘拐を見てみないかとシューリクを誘う。これが実は正真正銘、本物の誘拐であった。人気の高いソ連のコメディ映画で、ソ連の模範的少女について、「学生で、コムソモール(共産党の青年組織)のメンバーで、そしてとにかく可愛くあるべき」というミームを生んだ。
ロシアの村に憧れたことがあるという方にぴったりなのが、多くのロシア人に愛されているこのコメディ。夢見がちな家庭を持つ男性が自分の生まれた村を出て、サナトリウムに行き、そこで知的な女性と出会い、その純粋さゆえに女性に惹かれていく。しかしリゾート地を離れた彼女は、その男性を村から引き離すことはできても、その人の中から村を引き離すことはできないということを理解する・・・。
カルト監督、タルコフスキーの自伝的映像詩で、監督のもっとも重要な作品の一つとなっている。作品は、村の家、母親、思春期、戦争など、自身の幼年時代のさまざまなシーンを断片的に映し出していく。映画の中では、父親であるソ連の詩人、アルセーニー・タルコフスキーの詩が朗読されている。
文化会館で働く若い職員らが新年のパーティに向けたリハーサルをしているが、職員らはこのカーニヴァルを役人たちのつまらないイベントにしようとする館長をあの手この手でいじめる。1956年に最大の観客動員数を記録した作品であり、リャザーノフ監督と女優のリュドミーラ・グルチェンコが、輝かしい映画デビューを果たした一作。グルチェンコは、新年を題材にした曲「5分」を歌い、大ヒットさせた。映画はこのリストの1位に入った作品が登場するまで、毎年、新年には必ず放映された。
ソヴィエトの諜報部員シティルリツはナチスの親衛隊連隊指揮官として敵陣のドイツ第3帝国に潜入していた。ソ連時代、誰もがこの主人公の運命の行方をハラハラしながら見守った。シティルリツが長年離れていた妻と会うのだが、身元が明かされるのを恐れ、彼女の顔を見ることもできないというシーンではソ連中が涙を流した。国民的英雄となったシティルリツの名は普通名詞となって、多くのジョークを生んだ。
明るい青年コースチクは進学のためモスクワにやってきて、叔母の共同住宅で生活することになるのだが、彼はのんきに人生を謳歌する態度で、住宅に住むインテリたちの生活に入り込んでいく。活き活きとした主人公たちのセリフはさまざまに引用されており、作品は一種のモスクワ賛歌とされている。
とある統計局の局長であるリュドミーラ・プロコフィエヴナはいつも厳しく、地味なスーツばかり着ていて、まるで自分が若くて魅力的でありながら、孤独であることをすっかり忘れてしまったようであった。ある日、1人の部下が出世を目論み彼女に言い寄るのだが、次第に女性上司を本気で好きになってしまう。ソ連の“仕事の虫”を主人公にしたロマンティック・コメディは公開の年、観客動員数で1位となり、今でもテレビでたびたび放映されている。
ソ連の子どもたちがデュマの小説と、俳優ミハイル・ボヤルスキーを永遠のダルタニャンにしたこの映画のどちらの方がより好きだったのか分からない。3部作のこの映画には素晴らしい俳優陣が出演し、挿入歌は広く国民に愛された。ちなみにソ連の映画スタジオは、フランスを舞台にしたこの作品をウクライナのリヴィウ、オデッサで撮影し、うまく雰囲気を出すのに成功している。
スターリンの粛清時代のソ連。ロシア内戦の後、行方不明になっていたミーチャが、元恋人マルーシャの家に現れる。マルーシャはソ連の大佐の妻となっていたが、元恋人が夫を殺しにやってきたとは気づいていなかった・・・。
こちらもアカデミー賞を受賞したロシア映画。多層的に作られた心理ドラマで、物語は、心をざわつかせるタンゴのメロディがひびくなかで展開されていく。
若くて魅力的な大詐欺師オスタップ・ベンデルは偶然知り合った男の義母が死際に古い椅子の中に隠したダイアモンドを探す。しかしセットになっていた椅子はオークションで1脚ずつ落札され、国じゅうに散らばっていた・・・。
このコメディ映画はイリヤ・イリフとエヴゲーニー・ペトロフの合作長編を映画化したもので、ベンデル役のアルチル・ゴミアシュヴィリの才能に支えられ、カルト映画となった。登場人物の多くの有名なセリフが今でも人々に記憶されている。
密輸業者が過って宝石を別の男のギプスに隠してしまい、それを取り戻そうと、何の疑いも持たずに平和に暮らす家庭ある善良な男を捕まえようとする。初公開の後、若き俳優のアンドレイ・ミローノフは瞬く間に全ソ連で知られる存在となった。観客動員数は7,670万人で、当時の新記録を樹立した。
人間の脳下垂体を犬に移植したらどうなるのだろう。ソ連のプレオブラジェンスキー教授はそれを試みる決心をする。この実験で得られたシャリコフは人間に非常によく似ているが、その行動は犬のようであった。映画は、原作であるミハイル・ブルガーコフの有名な小説に劣らぬ人気作品となった。
第二次世界大戦の前線にいた兵士たちがモスクワの白ロシア駅に戻り、それぞれ自分の家路につく。そしてその戦友たちは25年後、仲間の葬儀で再び顔を合わせる。
戦争をテーマにしたもっとも感傷的な作品の一つ。この中で初めて流れたブラート・オクジャワの「求めるは勝利のみ」は大人気となり、現在に至るまで歌われている。
コナン・ドイル原作の「シャーロック・ホームズ」のソ連版で、イギリスの評論家にも認められた、世界でも優れた映画化作品の一つ。ホームズ役を演じた俳優のワシーリー・リヴァノフはイギリス王室の勲章を授与された。モスクワのイギリス大使館のそばにはソ連の俳優が演じるホームズとワトソンの銅像が設置されている。
ストーカーと呼ばれる主人公は、厳重な警備の目をかいくぐって、命がけで、隕石が落ちて出来た立ち入り禁止ゾーンへ人を案内している。あるとき、教授と作家と名乗る2人の男性が願いの叶う「部屋」に入りたいと頼んでくる。ストーカーは承諾するが、一見、普通に見えるこの2人がどのような計画をしているのか知りもしなかった。寓話的な作品はストルガツキー兄弟のS F小説「路傍のピクニック」を下敷きにしたもので、ストルガツキー兄弟も脚本で参加している。伝説的監督のもっとも人気ある作品の一つ。
霧の中で迷子になり、川に落ちるも、流れに乗って目的地に到着するハリネズミの物語は、子どもにとっても大人にとっても哲学的な意味を持つもので、いまも多くの人々を魅了しつづけている。2003年には東京のAll time animation best 150 in Japan and Worldwide(全時代を通した日本と世界のアニメ映画)で1位に輝いた。
モスクワにやってきた田舎の娘カテリーナは、教授の娘だと偽ってパーティを開き、そこで知り合ったモスクワのインテリ家庭出身の男と親しくなり、子どもを身籠もる。しかし後に女工であることが露見し、その男に捨てられてしまったことから、1人で子どもを育てながら、仕事もしつつ、勉学も続け・・・、その20年後、ついに彼女は大企業の社長となる。夢を叶える道のりを描いたこの作品はアカデミー賞の最優秀外国語映画賞を受賞した。
4人の幼なじみが簡単に金儲けをしようとして、犯罪に巻き込まれていく。主役を演じるセルゲイ・ベズルーコフはこのドラマへの出演後、マフィア、サーシャ・ベールィのイメージを払拭するため、多くの役を演じることとなった。「ブリガーダ」はロシア版「ゴッドファーザー」とも言える作品で、犯罪が横行していた1990年代のロシアの現実と雰囲気をもっともよく伝える一作と言えるだろう。
地下組織のマフィアの恋人と偶然知り合った若く貧しいミュージシャンとの恋を描いた映画は、ゴルバチョフが提唱したペレストロイカ(建て直し)の真のシンボルとなった。ソ連のアングラロックバンドが録音したサウンドトラックによるところが大きい。その中には伝説的なバンド「キノー」のヒット曲「僕たちは変化を待っている」も含まれている。
田舎出身の若者ダニーラ・バグロフは、マフィアとのいざこざに巻き込まれて無法の世界に入り込んでいたプロの殺し屋である兄を助ける。1990年代のロシアの犯罪社会をそのまま描き出した作品。その10年前に公開された「アッサ」と同様、サウンドトラックには、当時の人気ロックバンドの演奏する曲が集められた。
「毎年、12月31日には友人とバーニャに行くことにしていて・・・」。この映画の中で主人公のジェーニャはこのセリフを何度もつぶやく。ロシア人にとってこのフレーズは、すべてが面白おかしく筋違いに展開されていくこと、そしてもちろん新年を連想させるものである。封切り以来、毎年12月31日に必ずテレビで放映され、新年のご馳走の準備をする主婦たちを楽しませている。もう飽きてしまったという声はどうやら聞こえてこないようだ。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。